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77-6 伝説の借り物競争

 今回の借り物競争は「魔物」がテーマだった。

 いかにも迷宮都市アドロスらしい御題だ。


『御題プリティドッグ』は各飼い主がゲットし、その他の子犬二匹は人化して強引に参加している両親が抱いており、あぶれた南の公爵を涙させた。

 ミニョンはうちの子なんでシルが抱いている。


 トーヤとエディは、メルとフェルドを楽しそうに乗り回していた。


 フィアは全長五十メートルのゴン太を借り出して場内を爆走しているので、俺はゴン太に飛び乗ってフィアを思いっきりハリセンではたいておいた。


「いったあい」

「やたらとドラゴンを場内で走らせるんじゃない! 危ねえだろうが!」


 残り二頭のドラゴンを借り出していったのは、アルスとグスタフだ。

 あいつらは節度を弁えているから何の問題もない。

 なんというか、二頭をまるで淑女のように侍らせていた。

 まるでサーの称号を持つ高貴な騎手が、荒くれ競走馬を静やかに従わせているかのような有様だ。


 レミは可愛らしく、ブラウンゴブリンさんと御手手を繋いでいた。


 織原勇人の馬鹿者は、最近離宮で軽く養殖しているスッポン魔物に尻へ食いつかれて悲鳴を上げている。

 この愚か者が。

 異世界産のスッポンは凶悪なので有名だ。

 その美味さもとびきりなのだが。


 あれを離宮に持ち込んだのはエリーンの仕業だ。

 子供達にもあれには絶対に触らないよう申し付けてある。


 ベル君は何を勘違いしたのか、猫のショーを抱えてきて失格となった。

 そういや、うちにいる普通の動物ってこの子だけだな。

 厳密に言うと、あの子も稀猫なので普通とは言い難いのだが、少なくとも魔物ではない。

 可愛くお座りしているショーは「バカメ」と言いたそうな顔で、しょげたベル君を見上げている。


 エリーンは裏の渓谷で、でかい魚の魔物を仕留めてきたが借りてきていないので失格となった。

 というか死んでいるし。

 単にこれを食べたかっただけだろう。

 あれは、あそこで一番美味い魔物だ。


 ロイスは、最近渓谷に住み着いた馬型の魔物を捕まえて、見事に乗りこなしている。

 伊達に生まれながらにして馬関係のエキスパートなのではない。

 実家が馬関係の家系だからな。


 そういや、今年は馬術競技を出すのは止めたのだ。

 まあ、ありきたりだしな。

 もし馬術競技をやったら、草原の国出身の王太子妃殿下が優勝しそうだ。

 あの人が乗ると馬がやたらと張り切るからなあ。


 デニスは公爵家離宮の裏で捕まえた小鳥型の魔物を口寄せしている。

 なかなか地味なスキルだな。

 だが見事な腕前だ。

 シーフの中には、こういう小魔物をティムして偵察に使ったりする者もいるのだという。

 いつか俺も試してみたいな。


 この二人はエドと一緒に警備担当なので、出場していないから借りてきていなくてもOKなのだ。

 まあ、御遊びの御祭り競技だからな。


 うちに魔物はいっぱいいるのだが、それらは何気に魔物の方から勝手に寄ってくるので、俺はティムした経験が一度も無い気がする。


 ファルは大型鳥魔物をスカウトしてきたので、それを見たデニスが飛び上がった。


「凄い!

 こ、これは伝説の魔物スカイバードだ~」


 なんか日頃は見ないほど大興奮している。

 彼はイベントなんかでは結構はしゃいだりもするが、歳の割には落ち着いている感じの男なのだが。


「なんだい、そりゃあ」


「知らないんですか?

 俺達シーフにとって憧れの的なんです。

 見かける事さえ難しい、言ってみればプリティドッグや空魔に匹敵するほどの幻の魔物です!」


「へえ、そんな魔物がいたのか」


「ああ、どうしよう。

 絶対に仲良くなりたいんですが。

 ね、ねえ園長先生、御願いです」


 そんな真剣な目をされちゃあ、しょうがない。


「ファル、デニス御兄ちゃんが、その子と御友達になりたいんだってさ」


 言っている言葉の意味がわかるのか、その鳥は賢そうな鳶色の瞳をデニスに向けた。


「ねえ、どうするー?

 あの御兄ちゃんが君と御友達になってほしいってー」


 ファルがデニスに口説かれて、御友達契約の仲立ちをしてくれた。


「クー」


 しばしの間スカイバードは、円らな瞳でデニスを見つめていたが、やがてデニスの傍に寄ってきて大きな顔を擦りつけ始めた。


 おお!

 ティム成功というか、無事に御友達になれたみたいだな。


「やったあ、嬉しいな。

 スカイバードと仲良くなれるなんて夢のようだ~。

 ありがとう、ファルちゃん」


 この鳥は人間を乗せて飛べる奴で、シーフにとって憧れの相棒らしい。

 なかなか格好いいな。

 俺も今度乗せてもらおう。


 大きさは六メートルほどで、スタイルは猛禽類タイプか。

 だが性格は(すこぶ)る大人しいようだ。

 とても穏やかな目をしている。

 強力な魔力放射を放つ俺にも警戒心を特に見せない。


 俺は見ていたら堪らなくなって、ちょっともふらせてもらった。

 かなりもふもふだったぜ。


 手触りは鳥も馬鹿にならないのだ。

 なんたって天然の羽毛布団みたいなもんだからな。

 生きている鳥なら凄く暖かいし。


 この子の体は空色をしており、その色合いも自在に変えられるらしいし、雲をバックにすると体が白く変化する。

 そのせいで地上から見えにくいので殆ど目撃例がないそうだ。

 その上、探知無効系スキルの持ち主なので完全に幻の魔物なのだ。

 おまけに温厚で人間を襲う事もないため、余計に目撃例も少ない。


 鳥魔物はデニスの空色の瞳を気に入ってくれたようだ。

 彼も新しく相棒になってくれた子に夢中だ。


「ねえ園長先生、どんな名前がいいかな」


 嬉しそうに少年のような瞳を新しい相棒に向けるデニス。


「じゃあ、ソラでどうだい?

 日本語なんだけど。

 まさに空色をしている魔物だ。

 それにしても綺麗な魔物だな。

 スカイバードかあ。

 今度レッグさんにでも詳しい話を訊いてみよう」


「いい名前だね、ありがとう。

 じゃあソラ、宜しくな」


「クーっ」


 そいつ自身も俺が付けた名前を気に入ってくれたようで何よりだ。


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