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77-1 秋の大運動会

 秋も深まった。

 宿敵たる魔界の鎧も片付いた事だし、俺の心は今、秋晴れのように澄み渡っている。

 帰還の試練である裏ダンジョン探索も、なんとか続きが出来そうな按排だしな。


 まだゲルスの一件が残ってはいるが、俺の心を表すかのように、秋のイベントとしてアドロス大運動会が晴れやかに開催される事になった。


 これは日本でいえば、市町村単位で行なう秋の運動会に当たるものだ。

 特に出たくはないんだけど、「お前は若いんだから出ろ」と町内の年寄り連中に言われて三十代のおっさん達が無理矢理出させられるような代物だ。


 今回の参加選手も一般市民は言うに及ばず、王宮から王族・貴族・文官なども出席し、ベル君も部署代表で出場させられている。


 ハイド国王・サイラス国王は来賓として参加を表明した。

 ドワーフは国王以下、来賓どころか全員がレギュラー出演だろう。

 たとえ呼ばれていなくたって、いつの間にか参加しているのに決まっている。


 それは平常運転なので、誰も連中に対して文句を言う者はいない。

 奴らがいるというだけで、自然にセキュリティーのレベルも上がるし。

 どこかの馬鹿どもが連中の御楽しみの邪魔をしたなんていった日にはな。


 ケモミミ園のチビ達に離宮メンバーは当然というか、元々この範囲でやる予定の「第二回ケモミミ幼稚園秋の運動会」だったはずなのだが。


 実を言うと、離宮の方からもこんな意見が出たのだ。


「御館様。

 公爵家を構えられたのでありますから、ここは王族などのゲストも迎えて大がかりにやるべきですわ」


 シェルミナさんにそう言われてしまえば、やらないなんて言える訳がない。

 まあ執事も充実したので、色々と対応にも困らないだろう。

 彼らは伊達に学園で優秀だったわけではないのだ。


 ついでに教え子である王都学園の学生達も参加させることにした。

 学園長に相談したら、一気にボルテージが上がったようだ。


「おひょう。

 それは楽しそうな企画ですねー!

 早速、生徒には御触れを出しておきましょう。

 そうだ!

 丁度いい。

 初代国王直伝の、あの競技も復活させるといたしましょうか~!!」


 なんだろう、その不穏な響きは。

 地球の運動会のメニューで、そんなにヤバそうなものが何かあったっけかな?

 それとも、武の奴が考えたオリジナル競技なのか。

 ケモミミ園に戻ると、新撰組の奴らも浮かれている。


「ねえねえ。

 運動会、楽しみですねー」


「腕が鳴りますー」


 斉藤ちゃんと沖田ちゃんの二人が腕を組んでクルクルと回って楽しそうに踊りながら、そんな事をほざいていた。

 そういや去年は、まだ今ほど高性能なボディじゃなかったしなあ。


「ああ、お前らは一般の部には出せないからな?

 人間相手にお前らが勝ったらズルイだろうが」


「ええーっ、そんなあ」


 そして床に転がって、全身で激しく抗議を表す二人。


 駄々を捏ねるな、駄々を。

 幼稚園児か、お前らは。

 というか、ほぼ幼稚園付きのゴーレムだよな。


「お前らは、助っ人というかサポートな。

 体力を使うばかりの競技ばっかりじゃないんだから。

 スプーンレースとか色々あるんだし。

 あちこちの運営もやってもらうぞ。

 どうしても自分達で競技に参加したかったらゴーレムの部を作ってやるから」


「約束ですよー」

「練習しなくっちゃあ」


 大急ぎで競技のチェックに余念のない二人。

 やれやれ。

 これが俺の言いつけた仕事なんかだと結構ダラダラしているんだが。


 メルとフェルドは着飾らせて大会マスコットにしておいた。

 裁縫グループの子達が楽しそうに飾り付けをしている。

 二頭とも目を細めて、なすがままだ。


 何故か猫のショーまで頭に飾る帽子を作ってもらっている。

 奴も日頃は斜に構えているくせに、本当はこういう事が大好きなのだ。


 トーヤとエディも大はしゃぎだ。


「園長先生~。

 親方達は、全員参加だってー!」


「うん、それは聞かなくてもわかる。

 後は来賓の面子か」


 一応は親方、つまりエルドア王国ハンニバル国王だって来賓の一人には違いないのだが。

 来賓というか、今ではもう立派に御狐コンビの父兄なのだ。


 ハイドのシド国王、そしてサイラス国王が来賓だ。

 帝国のドランはそこまで暇じゃないので、グスタフが皇帝代理で参加を表明している。

 一介の新人伯爵が皇帝代理というのもなんだが、まああいつは聖騎士なんだから特別だ。

 それを言うなら、似たような存在のリヒター伯爵だって最早宰相も同然だしな。


 まあ、あれは他の貴族連中もやりたがらないので仕方が無い。

 ドランは二人とも、そのうちに身分を侯爵へ上げたがっている。


 グスタフは、この前の鎧騒ぎで度重なる功績を挙げたので、無事SSランクに認定された。

 俺とファルが証言した、というか大陸中の王が見ていたのだから何の問題もない。

 何しろ、何度も世界を救ってくれたのだ。

 それについては国内からも国外からも一切の反発は出ていない。


 というか、帝国皇帝があれだけしゃかりきになって騎士として再獲得した人材なのだから、さすがに国内勢は文句をつけられない。 

 今回の大災害の時も、他の貴族達は手をこまねいて見ていただけなのだから。

 あの惨状じゃ無理もないけどな。

 皇帝を始めとした国家の重鎮達が手も足も出なくて傍観せざるを得なかったほどなのだから。


 でも織原の時のように手も足も出ない状況じゃなくて本当によかった。

 出遅れが響いたのできつかったがな。

 まあ、前の時は『織原の性質が悪かった』って事だよな。


 SSランクは侯爵相当の身分だからな。

 いずれは臣民公爵へと昇格させるつもりなのだろう。

 今は伯爵に取り立てたばかりなので、国内貴族の反発を恐れてドランもグスタフを侯爵位に昇進させるのは控えているようだが。

 俺の公爵就任時の猛反発騒ぎを見ていたからな。


 まあ俺と違ってグスタフが貴族連中からそう嫌われているわけではないので、その辺は大丈夫だろう。

 貴族社会の色合いが強いあの帝国では、ああいう高潔なタイプの人物を揶揄するのは憚られるのかもしれない。

 グスタフの家は前の毒皇帝からは相当疎まれていたようだったが。

 その分は今、息子が利息付きで埋め合わせをしてくれているからいいさ。


 アルバ大神殿からはジェシカとフィアを呼んでおいた。

 あと帝国からマリーナも呼ぶ事にした。

 大会に美少女は添えておいても悪くない。

 皆から崇め奉られる大神官達(見習い含む)だしな。


 子供姿の精霊達もちょろちょろしてきそうだが、あれはまあ適当。

 うん、賑やかしという事で。


 今年はおチビ猫も大張り切りだ。

 夏に三歳になったので、もういっぱしの幼稚園児だ。

 そろそろ三歳児の部で一般競技にも出られるだろう。

 三歳児は一人っきりだけど。


 三歳児以下が拾われてきたのは、真理が拾ってきた熊っ子サーニャ以来一人もいない。

 やっぱりレミみたいな一歳児は特別なケースのようだ。

 ああ、狐っ子の女の子が一人いたか。


 後はやはり、あいつだな。

 織原も何かスペシャル競技に出してやろう。

 最近は騎士団の訓練に放り込んであるので、前よりは多少はマシになっているはずだ。


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