↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

440/1334

72-7 ずっと一緒に

 さっきの名刺授与式で駄目押しのつもりだったが、ここからさらにもう一手加えてある。


「レイン」


 神聖エリオン(親)も呼んでおいたのだ。

 どうやら出待ちしていたらしくて、すぐにゲートの前へ顔を出してくれた。


「大神官ジェシカ、日頃は大変御疲れ様です。

 よかったわね。

 どうぞ、御幸せにね」


「ありがとうございます。

 あ、あの、レイン様」


 小首を傾げながら次の言葉を待つレインに、おずおずとジェシカは訊いた。


「あの子達とは、大神殿の契約精霊達とは、これで御別れになってしまうんでしょうか?」


「それは、多分あの子達が決める事でしょうから。

 ねえ、アルさん?」


「ああ、その辺は心配しなくていいんじゃないかな。

 レイン、アルバ大神殿へ交代する精霊を寄越してもらう事は出来るよね」


「ええ、そもそもアルさんの契約精霊を呼ぶ事も出来るのですけど」


 俺は少し考えたが、首を振った。


「後々の事もあるんだ。

 引き続き、精霊の森との約定という事にしておいてくれ。

 交代要員に仕事を覚えさせたいから、早めに寄越してくれないかな」


「わかったわ。

 ではジョリー、そのようにしてあげなさい。

 今いる子は、みんなジェシカについていくのかしら?」


 それを聞いて、大神殿の精霊達が大燥ぎで顕現した。

 俺は大司祭権限でゲートキーの使用を許可し、ここまでのゲートも繋いでおいたのだ。

 彼らにしては珍しく出番がくるまで大人しくしていた。

 全ては彼らが愛するジェシカのために。


「もちろんですよ、レイン様~」


「やったぜ、ジェシカ。

 まだ一緒にいられるんだね」


「ああ、ジェシカには幸せになってほしいんだけど、御別れは寂しかったのよ」


「やったぜ、僕のジェシカ」

「もう何を言っているの、私のジェシカよ~」


「はいはい、みんなありがとう。

 結婚して大神官を辞めても、まだみんなと一緒にいられるのね。

 本当に嬉しいわ」


 思慕の情を力いっぱいに寄せてくれる精霊達に囲まれて、ジェシカも涙に濡れた。

 精霊達も、そのジェシカの御相手がロスの祝福を受けた高潔な聖騎士であるのが嬉しいのであろう。

 ジェシカ付きの精霊達が全て、うちの館中を乱舞している。


 それから、そっとキメラのメルが中へ入ってくると、神官どもがだらしなく悲鳴をあげた。

 さすがに他の面子は誰も騒がない。

 俺がゲートを繋いで呼んでみたのだ。


「グルゥ」


 メルは可愛く一声鳴いて、咥えた一輪の可憐な花をジェシカに差し出した。

 離宮に常駐するドライアド達謹製の精霊花だ。


「大神官様、結婚おめでとう。

 だって」


 すかさずファルが通訳した。

 うちの魔物を代表して、女の子のメルが御祝いに来たらしい。

 さすがにドラゴン・ガール達では図体がな。


「ありがとう、メル」


 そしてメルが歌った。

 それは魔物の唸り声みたいな奴だったが、明らかに歌といえるものだった。

 御祝いの歌だ。

 いつのまにかゲートを通り、フェンリルのフェルドやプリティドッグ達も来て一緒に歌っている。


 遠くからドラゴン達が歌っているのが聞こえてきた。

 そして精霊達も、それに合わせて一緒に歌いだした。


 涙に濡れるジェシカをグスタフが、そっと包むように抱き締めた。

 こいつは本当に男前なので、こういう仕草がよく似合うぜ。


 そこで親方から爆弾発言があった。


「そのな、アル。

 前々から思っていたのだがな。

 まあ今回はいい機会だから思い切って言おう。

 トーヤとエディをうちの子に貰えないか?

 本人達にはもう伝えてある」


 俺は驚いてトーヤの方を見たが、ちょっと照れたような顔をしていた。

 ミミがちょっと忙しない動きをしている。


 こ、こいつはマジもんでサプライズだぜ。

 それで二人とも正装をしていたのか。

 さっきは、もうエルドアの子みたいなものだなどと思ってしまっていたのだが、本当に今日そういう展開になってしまうとは!


「ふうむ、こいつはまた唐突だねえ。

 まあ、いつかはこんな日が来ると思っていたのだが。

 二人共、それでいいのかい?」


 黙って二対のミミが縦に揺れた。


「そうか……。

 そうか!

 でも小学校にはまだ通いなさい。

 まだまだ勉強する事がいっぱいだからね」


「「うん!」」


 ケモミミ園を作るきっかけとなったトーヤが、うちを出る事になった。

 いつかは来る日だと思っていたのだが、こんな唐突な形で、こんなにも早くその日が訪れるとは。

 俺の気持ちを察してか、シルがぴったりと俺に寄り添ってくれていた。

 真理も優しげな表情で彼らを見守っている。


 こうしてジェシカは愛しいグスタフと結ばれ、エディとトーヤが養子に出る話の切っ掛けともなった。


 エディとジェシカは大好きな女将さんに抱き締められていた。

 トーヤは今までも実の兄のように慕ってきたアニキに抱き上げられている。


 さっそく親方がハイオネル伯爵と話をしている。

「娘の嫁入り先」と色々なお話があるのだろう。


 それから女将さんも「母親同士」の話を始めていた。

 うちの娘を宜しくみたいな流れになっている。

 女将さんは以前から実の娘のようにジェシカの事を可愛がっているからな。

 親方がアレな性格なんで、何かあれば母親同士で話が進展するだろう。

 まあグスタフやジェシカに言っておけば、俺経由でそんな些事はなんとでもなるのだが。


 今回の件は放っておいても、いずれ親方の方から申し入れがあったろう。

 全てはなるようになったのだ。

 魔界の鎧騒動は酷い騒ぎだったが、満更そう悪い話ばかりでもなかったようだ。


 グスタフの実家も、うちや親方達との商売で莫大な恩恵を蒙る事になるだろう。

 グスタフ自身も実家との隔絶もなくなり、Sランクとなり新伯爵位も受けた。


 まだ魔界の鎧も残っているのだ。

 彼には、もう一踏ん張りしてもらうとしよう。

 この愛すべきアスベータの世界と、そこに住む愛すべき住人達のために。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。