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71-7 おっさんブートキャンプ2

 なんだかんだ言っても、ついに奴らはやり遂げた。

 二日で六百キロメートルを走破か。

 まるでインターハイを目指している自転車部か何かのようだ。

 まあアスファルトの上でもない荒地をマウンテンバイクで走らせてやったのだが。

 うわははは。


 二人は既に昼くらいから、頼むからもう殺してくれモードであったのだが、リジェネという魔法は凄い。

 あの軟弱者コンビを、ここまで走り切らせてしまったのだからなあ。


 騎士団の奴らには御馴染みの【訓練用魔法】だったらしく、彼らも生暖かい目で見守っていたようだ。

 国王陛下も奴らをしっかりと観察していたので、御褒めの言葉をいただいた。


「おお、よく頑張ったではないか。

 よし、二人とも勲章をやろう」


 とか言って、王国騎士団の見習い徽章を騎士団長のケインズ自らに付けさせた。

 もしかして、これは今回の続きという事で王国騎士団の訓練をやれという意味だろうか?

 それの意味を知っているベル君の顔色がちょっと青い。


「すげえ。

 王様からなんか勲章を貰っちゃったよ!」


 とか言って、燥いでいた馬鹿が約一名いたが。

 知らないって本当に幸せな事だよな。


 そうか、そういう手もあったなあ。

 陛下の方が俺よりもずっと上手じゃないか。

 さすがは一国を預かる王だな。


 野営地は、前もってゴーレム隊に作らせておいたもので周辺の魔物も掃討済みだ。

 しっかりとキャンプファイヤーの準備も整っている。

 もう避難訓練でもなんでもない。

 王族の息抜き、林間学校、ブートキャンプなどを含んだグランバースト公爵家主催の、只のレクリエーション企画であった。


 そして今日は明るい内に着いたので、夕食はまたカレーになった。

 この世界はまだカレーが入ってから日が浅いし、まだまだ贅沢品なのであるが、子供に人気なメニューだけあって連続メニューでも文句などは出ない。

 はっきり言ってしまって、こんなものは只のキャンプなのだし、うちは子供優先のルールなのだ。

 なんたって、このキャンプは『異世界児童養護施設のイベント』なんだからな。


 もはや米食文化が定着しつつある王国騎士団では、カレーはすでに軍用食として無くてはならないものになっており、一般国軍の兵士達にとっても憧れの的である軍用糧食であった。


 本日は絶品地鶏のカレーだ。

 アントニオのオルストン領では大変養鶏業が盛んな土地で、それがオルストンエッグを生んだ背景でもある。

 レオンが毎日調子に乗ってオルストンエッグを作りまくるので、それに合わせ鶏も増やされて卵も大増産されている。


 それが各国の王室や貴族向けに商業ギルドに納品されており、各地で御用達の金看板をいただいている。

 新オルストン伯爵家嫡子の名は栄光と共に広まりつつある。

 あの子は、まだ一歳にもならんのだが。


 もはや『武門に誉れ高き一族』の名は廃れ始めている気がする。

 今こそ、その武勇が望まれるような国家の危機的状態ではあるのにも関わらず。


 いつの日か、その名が復活するとしたら、それはレオンがドラゴンでも退治してきた時だろうか。

 やろうと思えば、今でも俺かパパさんが付き添いについていれば、一人で楽々退治できそうな気はする。


 どちらかというとレオンは、ドラゴンを退治するよりもペット魔物として欲しがりそうなんだよな。

 うちでドラゴンを飼っているし。

 ゴン太達を見上げるあの子の視線は熱い。

 あそこの家風だと、ドラゴンの場合はペットなのか養殖なのかという難しい問題はあるのだが。


 何しろドラゴンスレイヤーである父親の持つ、あの特製鎧を生まれながらに受け継いでいる奴なのだから。

 その御蔭で俺は、とんでもなく酷い目に遭ったのだ。


 オルストン・チキンは噛めば噛むほど味が染み出るような美味さがあるスーパー地鶏だ。

 うちには優先的に回ってくるので、あれは子供達の大好物だ。

 これの唐揚げときた日にはビールが進んでしょうがない。

 今日は、それで作ったチキンカレーなのだ。


 陛下達も、楽しそうにカレーを作っている。

 ハミル王女やエミリオも上手に野菜の皮を剥いたり煮込んだりしていた。

 野外料理は王妃様がお手の物だ。


 何しろ「いざ鎌倉」の風習が王太子の儀の名称として千年も続いている国なのだからな。

 王族と言えども、いつこういう避難を本当にしないといけなくなるかもしれないのだ。

 野外で食事の支度の一つも出来なくてどうする! という家訓らしい。


 それを残したのは、もちろん初代国王その人だったのだが。


「うん、御兄ちゃんってキャンプは大好きだったのよ」


 日本の真理さんに訊ねてみたら、そういう返事が返ってきた。

 あいつは、単に家族でキャンプしたかっただけなんじゃないのか?

 こっちの真理の話によると、だいぶ子煩悩な男だったらしい。

 レインの事も滅茶苦茶に可愛がっていたみたいだしなあ。



 その後にはキャンプファイヤーを行なって、子供達が大燥ぎだった。

 もうちょっと和やかにやろうと思っていたのだが、ケモミミの子達百人以上が踊り狂っていたので、まあいいかという事で。

 ケモミミハイム夏祭りの続きみたいになってしまった。


 ミミを動かし、尻尾が踊り、可愛い御手手を振り回してシャウトしているおチビ猫を見ながら、俺はビールを飲みつつのんびりしていた。

 横には同じくそれを見て楽しそうにしているシルがいるし。




 翌日、あの二人組は言うまでもなく寝込んでいた。

 昨日は終日リジェネをかけっぱなしのハードモードだったので立ち上がれないらしい。

 傍にはシビン片手に扇いでやっている斉藤ちゃんと沖田ちゃんがいた。


 ミハエルとその従兄弟であるサイラス国王は、近隣の荒野へアドベンチャーワールドしにいった。

 いきなり、そういう場所で運転を教えるのもどうかと思うのだが。

 あの車を作ったメーカーの地元では、そういう名前の荒地走行ランドを子会社が経営している。


 まあオリハルコンボディに換装された車なのだ。

 少々の事ではビクともしないし。


 元々魔法使いであるミハエルに俺の腕輪を持たせてあるのだ。

 それに、もう車の運転など手慣れている王国騎士団が随行して、一緒に楽しんでいるのに決まっているし。


 エミリオは、シルと王妃様とハミル王女に捕まってしまった。

 半泣きでこっちを見ていたのだが、救出作戦は困難を極める。

 すまん、弟よ。

 敵が強大過ぎるわ。


 そして、あっというまに着せ替え人形と化したエミリオがいた。

 今日は村娘っぽい感じか。

 あの子は可愛いから何を着ても似合うな。


 海賊王は既に自転車を乗りこなし、素晴らしいアクション自転車術みたいになっていた。

 そして愛妃を連れてサイクリングだ。

 御伴に護衛代わりの白銀狼フェルドを引き連れて。


 あのハイドの王妃様も見かけによらず、中々健脚だな。

 もしかしたら得意の魔法も併用しているのかもしれない。

 強化魔法に回復魔法、自転車へのライトウエイトや自分へのファストとか。

 さすがは船橋武の子孫といったところか。


 一緒に駆けていく護衛のワンコの方も楽しそうだ。

 大きな猫の方はといえば横にだらんと寝っころがって、子供達にもふられていた。


 一日遊んで、帰りは二人組がダウンしていたので、全員転移魔法で帰る事になった。

 もとよりその予定だったのだが、あの二人は何日かがかりでも走らせようと思っていたのだ。

 だが、御優しい国王陛下はおっしゃった。


「何、続きはまた帰ってから騎士団の方でやればよいではないか。今日は休ませてやりなさい」と。


 二人は感激のあまり? へなへなと崩れ落ちた。



 かくして、避難訓練は無事に終了した。

 ちなみに訓練用に切り開いた街道は開拓を目指す人達が使うようになり、俺達が使った最終宿泊地は、その後無事に開拓村となった。

 面白い展開になったのでゴーレムや支援物資も送って、あれこれと支援してやったのだ。


 街道は魔王街道と呼ばれたそうだ。

 うーん、せめてアルフォンス街道にしてくれよ。


 俺は領主として村人から逆指名されたので、村の名はブートキャンプ(適当)と名付けられ、貴族達のバカンス用の保養地となった。


 六百キロメートルもある道中には、俺が宿泊地をたくさん整備したのだが、それらがまた宿場村へと変わっていった。


 村ごとに特徴を出していき、それがまた大いに好評を博した。

 村起こしレシピ開発大会なども、ブートキャンプ村にて山本さん他の料理人を派遣して定期的に開催したのだ。


 街道もきちんと整備して、馬車道とは別に区画分けされた、この世界初のロングコース・サイクリングロードが設けられた。


 そして全ての村にアルフォンス商会が経営する自転車店が開業している。

 メンテナンスや突発修理にも完全対応だ。

 全モデルの全てのパーツも完備しており、部品切れなど絶対にありえない。


 地球でも、全長六百キロメートルのサイクリングコースって、そうそう無いような気がする。

 自転車専用高速道路か!


 貴族家が子弟の鍛練コースとして使いそうだな。

 他所の国からも不幸な奴らが送り込まれてきそうだ。


 一応は各地に教会も建てられて、リフレッシュヒールやリジェネなどの疲労回復魔法の無料サービスが受けられるよう、俺の大司祭権限で決定した。

 真理は時々、そっちのリジェネ係として、いそいそと出かけるつもりいるようだ。


 またブートキャンプ村ではアクロバットサイクリングの世界大会が開かれることになった。

 その名もズバリ、海賊王シド杯だ。


 そして、その後この世界全体に捲き起こった「林間学校ブーム」の火付け役ともなったのである。


ツギクル様サイトにて、2巻刊行予定の告知ページができました

http://books.tugikuru.jp/


活動報告

http://syosetu.com/userblogmanage/view/blogkey/1827864/

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「アクロバットサイクリング」たぶん間違った地球文化の伝わりかた!?(;^ω^)
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