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69-6 祭の華

 屋台の方は猛烈な勢いで作りまくって売れまくったので、昼過ぎには見事に看板となった。

 そしてマリーが御昼寝の時間になったので、ポールが抱いて帰っていった。


 彼にはもう転移の腕輪を渡してある。

 園の行き帰りに何かあってはいかんし、いちいち仕事中のエリに迎えに来させるのもなんだ。


 この子はトーヤ以上に大人びた感じがする。

 この一年半あまりで驚くほどに成長した感じだ。

 そして更に美少年度が増したようだ。

 ポールの屋台は、商品の種類も相まって圧倒的に女性客が多かった。


 他の子供達も、みんなケモミミ園で御昼寝中だ。

 ケモミミ園の大広間が子供でいっぱいになっている。

 布団を敷いた上にタオルケットをかけて、すやすやと寝ている。


 中はエアコン魔法でほどよい温度にしてある。

 真夏にこれだけの子供がいると、かなり室温が上がるので。

 今は寝ているので体温が下がり発熱は控えめだが。


 というわけで、大人は今から「えるふの夏祭り」を見にいくのだ。

 おチビは御昼寝中なので、後でケモミミハイムへ行く時に連れていこう。

 あそこは己のルーツたる土地だというのに、子供達は皆あまり関心を持っていないようなので他の連中も一緒に連れていくつもりだ。


「じゃあ、シル。

 エルフ新町まで一緒に行こうか」


「うん、楽しみだね」


 一緒についてくるのはファルだ。


 山本さん達は、のんびりとアドロスで楽しむらしい。

 奥さんが身重だからな。


 そしてエルフ新町へゲートを繋いでみて驚いた。

 なんだか喧騒が物凄い。


「なんだ、この騒ぎは」


 見れば、身なりのいい男どもが街に溢れ返っているようだ。

 店という店が昼間から営業しており、街には屋台の小料理なども多い。

 他所から営業しにきた御祭屋台などもあり、街中が華やかな喧囂(けんごう)の渦中にあった。


「こりゃあ、また豪(えら)い騒ぎだな」


「あら園長先生、いらっしゃい」


 いつもこの街へ来る時のポータルに指定してあるヘレンの店の前だったので、気配を察したヘレンが戸を開けて暖簾を潜って顔を見せた。


「さあさ、宜しかったらどうぞ」


 手招きされて中に入ると、捻じり鉢巻姿の板前の格好をしたアルスが包丁を振るっていた。


「あ、園長先生。

 丁度よかった。

 今、活きのいい【はまち】を捌いているところだよ」


 もちろん、それはうちのゴーレムが獲ってきた物だったが、何に対しても卒のないアルスが見事な刺身を作っている。

 さすがはSランクの剣捌き? だった。


 俺の独断と偏見によると、御祭では何故か「はまちの刺し身」という印象があって、ゴーレムどもに獲ってくるように命じておいたものだ。

 もちろん魔法でチェックをして、寄生虫のいないものだけを厳選だ。

 斉藤ちゃんと沖田ちゃんが海女さん姿で、手掴みで獲ってきていたらしいが。


 あいつら何か勘違いしているようだ。

 言っておくが、海女さんは魚を手掴みにして獲ってくる人達じゃないからな。

 しかも下は褌一丁の格好だし。


 もしかしたら、手掴みの方が網よりも傷まないのかもしれないが、鰯みたいに人の体温でダメージを受けちゃうような魚もいる。

 ゴーレムは体温調節も自由自在だから大丈夫なのだが。

 あいつらも子供と触れ合ったりするので、普段は人肌温度をキープしている


 まあ御祭り的には、その格好がそう間違っているとは思わないが。

 そのままの姿で、魚とかを色々と届けにきたらしい。

 おっぱい丸出しではなく、ちゃんと上も衣服を着ていて海女さん風の格好で来たようなのでよしとしよう。


 アルスが見事なぷりぷりの刺身を作ってくれたので、さっそく頂くとする。

 新スキルで作り上げた日本酒の数々がこの店にも並んでいる。

 今日の銘柄は、東北だったか北海道だかへ行った時に飲んだ大吟醸だ。


 シルがおちょこに注いでくれたので、俺はゆっくりと香りを楽しむ。

 店の中は一杯だったが、四つほどカウンター席を開けておいてくれてあったのだ。

 昼過ぎに行くと言ってあったので。


 一応は領主の予約席だ。

 もちろん年間を通していつでも使えるように、年間パスポートとしての席料は抜かりなく払い済みなのだ。

 基本的に俺達が行く時は予約していくので、もちろん使わない時は他の御客さんも座われる。


「しかし、流行っているなあ。

 今日は凄い人だ」


「王都から貴族の若様が沢山いらしているからね。

 今日は街中で催しもやっているから、みんな楽しみにしていたみたいで」


 アルスも実に楽しそうにしている。

 そうか。

 アルスは残り短いだろうここでの貴重な時間を、祭見物しにいくよりも、この時間を選んだのか。


 それもよし。

 その家族の時間の御裾分けを頂く感じで俺達も楽しんだ。


「アルスちゃん!

 御刺身盛り合わせ御願い。

 御飯も大盛りで」


「あいよっ」


 ファルは自分で、さっと注文を出していく。

 齢一歳ながら、すでにワサビもマスターしている強者であった。

 もう、御子様の時代は終わってしまったのだろうか。


 この前はファルス形態がボブキャットサイズに成長していたから、そのうちに抱っこしきれなくなって、ファルス形態ではこっちが乗せてもらう羽目になるだろう。


 ファルがしこたま御飯を掻き込んで俺が酒を徳利一本空ける頃、外が急に騒がしくなった。


「ん? 何の騒ぎだい」


「ああ、ミス夏祭りコンテストですよ。

 見ていらしたらいかがです?」


「へえ? どうせ普通じゃない奴だよね」


 ヘレンは黙って悪戯そうな笑顔を見せる。


「じゃ、ちょっと行ってこようかな。

 御勘定を御願い」


 もちろん、ファルは既に全部食べ終わっている。


「はい。

 銀貨一枚になります」


 これが日本であれば、諭吉様大一枚相当なり。

 俺達は小腹が空いた分しか食べないので、ほぼファルの御腹に収まった勘定だ。


 一歳児の昼飯代が約八千円見当とは。

 日本の一般家庭なら悲鳴を上げちゃうな。

 これでもファルにとっては、せいぜいおやつレベルだもんね。



 そして外のステージには、サラシと褌姿のエルフさん達がズラリと並んでいた。

 お前らも、その格好か。

 さすがは元エロフだけの事はあるな。


「さて、お待ちかね!

『えるふの夏祭り・奉納勝ち抜き相撲トーナメント』の開催です~」


 ノリノリなアナウンサーが、人差し指を立てた右腕を振り上げて絶叫していた。


「な! ミスコンじゃなかったのかよ。

 まあ神社なんかでは奉納の相撲とかをやったりするわけだが。

 誰だ、こんな入れ知恵をした奴は。

 さてはまた……」


 観客は、もちろん貴族の若様が勢揃いだ。

 皆、手を振り上げながら声援している。


「これ、稀人の国の催しなんですか。

 な、なんだか凄いですね。

 ちょっと目のやり場に困るのですけれど」


 ちょっと顔を赤らめながらシルが言った。

 うん、R15指定くらいかな。

 上を隠しているからR12くらいでもいけそうか。

 いやしかし、特にエロイ事をしているわけではないのだが、なんかもう裸よりもエロイ雰囲気だぞ。

 さすがに全年齢解禁は厳しい。

 こういうのって、よくある企画物アダルトビデオとかの内容だよな。


「いや? それは断じて違うぞ。

 うちの国の相撲は女人禁制で、もっとなんかこう、肉が余って垂れ下がっているというか、でぶで暑苦しいというか」


「それもなんだかちょっと、と思うのですが」


 うーん、一応は日本の国技なんだが。

 もし日本に帰れたら名古屋場所とかを見にいくか?

 桟敷席で、ファルが弁当を二十個くらい積み上げそうだ。

 とりあえずはネットの映像で。


 まもなくトーナメントが始まったのだが、これはもう予想通りに、くんずほぐれつの完全なキャットファイト状態だった。

 褌が取れたりしないだけはマシか。

 周りから大歓声が上がっている。

 ま、まあ、御祭だからこれくらい弾けていてもいいかな。


 貴族の若いのにも息抜きは必要なんだろう。

 この国中の貴族の若い奴らが、全員集まっているんじゃないのかと思うほどの盛況ぶりだ。

 あるいは、他の国からも噂を聞いて遊びに来ている貴族の若衆がいるのかもしれない。


 やっているエルフ本人達は、実に楽しそうだからいいか。

 きっと汚染源は葵ちゃんなのだろう。


 あと、その辺の屋台とかを冷やかして、ファルや精霊達のおやつを仕込んでからケモミミ園へ撤収した。


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