↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

412/1334

69-3 街を練り歩け

 とりあえず夏祭り開催中は、イベント送迎バスを運行させることにした。

 キャンペーンも打って宣伝する事にしよう。

 王都でイベントショップを作ったり、昭和風のチンドン屋を練り歩かせたり。


「おーい、みんな。

 宣伝に行くよ~」


「行きましょう~」

「ハーイ」


「ウオン」

「グルウ」


 ゲートを潜り、揃って王都へと繰り出していく。

 王都の一般区域各所へと赴いて、あの独特の音楽をかき鳴らす昭和の香りの濃いチンドン屋御一行様が練り歩く。

 主に人通りの大きい、門近くの主要道をあちこち回った。


 チンドン屋の主力は新撰組の連中だ。

 そして満面の笑顔を浮かべたエリーンもいる。

 何故か真理も参加していて、御馴染みの伸びる笛を吹いている。

 そして近藤が、またもや無意味に中心で異彩を放っていた。


 俺もアコーディオンを弾きながら歩くのだ。

 これはバンドネオンを作るついでに作っておいたものだ。


 こいつは、こういう時のために随分と練習したんだぜ。

 ネットで検索して見つけたチンドン屋の音楽しか演れないけど。

 衣装もバッチリとチンドン屋スタイルだ。

 もうこんな人達も日本では前世紀中に絶滅したのではないだろうか。


 そして、その後ろでは大怪獣キメラに跨った神聖エリオン様がおチビ猫と一緒に手を振っている。

 なんというか、異世界では一見の価値はある集団だ。

 一応ネットでも中継させておいた。


 街の子供達が走ってついてきた。

 見た事も無い珍しい団体が、楽しそうに音楽を鳴らしながら飴とかの御菓子を配っているので。


 みんな物珍しそうにぞろぞろと後をついてくる。

 うん、この華やかな異世界の王都にて一気に昭和の香りが満ちたな。

 ここの初代国王は平成生まれなので昭和とは一切関係ない人物だったはずなのだが。


 既にこの隊列は小学生の鼓笛隊くらいの長さがある。

 今度はケモミミなブラスバンドを連れて練り歩くか。

 俺の新スキルでピアニカなんかの楽器も再現済みなのだ。


 ついでに精霊が顕現した姿の子供達が飴を強請(ねだ)っている。


「はあーい、皆さん。

 夏祭りには無料バスが運行しますよー。

 アドロスまで遊びに来てねー」


「バスってなんだ?」

「さあ?」


 バスと聞いて、みんな首を捻る。

 そうだよなあ、この世界には普通無い物だからな。

 そう思って、夏祭りの企画宣伝用画像を車体にペイントしたバスの実物を持ってきたのだが。

 バスじゃなくて乗り合い錬金馬車って言っておけばよかったな。


 フェルドの上からビラを撒いている沖田ちゃんと斉藤ちゃん。

 その後を、ゴーレムが運転する御披露目のバスが徐行運転でついてきている。


 物見高い精霊達が集まってきているので、空の方も賑やかだ。

 さすがにドラゴンは連れてこなかった。

 あいつらを連れていると、図体が大きすぎて通れる場所が限定されてしまうからな。

 この世界は電線や歩道橋に立体交差の道路や高架鉄道などもないので、あいつらが幅さえあれば普通に道を通れるだけまだマシなのだ。


 フェルドに跨った山本さんもスキルで出した餅や御菓子を撒いている。

 ファルが撒き散らす祝福成分が混入していそうな飴も、全て空中で精霊にキャッチされている。

 地上にいる子供や精霊には、チンドン屋スタイルのゴーレム達が御菓子を配りまくっていた。


 最後尾にはゴミ拾い係のゴーレム達が続いているので子供が捨てた包み紙も綺麗に清掃されている。

 立つチンドン屋、跡を濁さず。


 王都の広場には、アドロスのアンテナショップのような御店を作っておいた。

 ここでは色々な物を売っているのだ。

 元王女様であるシルを描いた、グランバースト公爵夫人の絵姿や、神聖エリオンの肖像画などもある。

 実は肖像画といっても、画像ソフトを使って、この世界の絵画風に仕立てただけの写真なのだ。

 これまた状態保存の魔法がこれでもかというほどにかけてある。


 あとはドラゴンジャーキーだ。

 王都の酒飲みには好評なのだが、こいつはアドロスでしか出していない特産品なのだ。

 地産地消という訳だ。

 もっとも、これらは全部コピー品なのだが。


 ゴン太達が迷宮から出てきちゃったので、もうあそこにドラゴンは湧かないのではないか。

 あれ以来、まったくドラゴンは湧いていないようだ。

 いつかまたアドロス・ダンジョンにドラゴンが湧く日がやってくるのかもしれないが。


 裏ダンジョンには大物が一頭いたが、あの敵意のない番人を狩るのはちょっとな。

 どの道、あの階層は通り過ぎてしまったので、裏ダンジョン攻略は前回の続きから始まるようなので自力では戻れない。

 そもそも、あの管理者の許可がないと狩れない仕様になっているのではないだろうか。

 もし狩っていい事になったとしても、うちのゴーレム達が手なづけて芸まで仕込んでいるので狩り辛いな。


 俺が新スキルで作り上げた、日本のビールや酒なども試飲コーナーを設けている。

 あと、こちらへ持ってきたのとは種類の違う、様々な御菓子などもこさえてあるのだ。

 いずれも、基本的に俺が飲み食いした物しか再現出来ていないのだが。

 俺の最新スキルがそういう物なので。


 こんな事なら、もっと美味い酒を飲んでおくのだった。

 旅行に行った先で飲んだ高価なコップ酒などはいい具合だ。

 また、俺の超御気に入りだった一杯千五百円の、桝に入れたコップに並々と溢れさせた地元酒蔵の大吟醸なんかも再現出来た。


 桜祭りの座敷付き屋台で飲んだ、店の大将御勧めだった一杯千五百円の少しぼったくりな焼酎も再現出来ており、それもやっぱり大変に美味かったのだ。

 まあ、このあたりが限度だろう。


 さすがにコップで二千円以上の酒には、そう簡単には出会えなかった。

 そこまで高いと敬遠されて商売になりにくいからな。

 俺はそこまで高級な店にはそう縁がなくてね。

 

 あと、葵ちゃんが執筆したコミックもあった。

 これは大人気だ。

 俺が読んでいた漫画なども再現出来たが、そっちは結構古い物が多くて。

 そういう物はネットを使って有料で読めるしな。


 新作の絵細工もある。

 コミックと合わせたメディアミックスも展開中だ。

 薄い本は今のところは無さそうだ。

 今のところは。


 ノベライゼーションも手がけており、やがてこの世界にも、そういったブームがやってくるのだろうか。

 御芝居の小説化なんかがあってもいいのかもしれない。


 二次元しか愛せない人とか出るかもしれないな。

 生憎な事に、この世界ではオタクは許されても引き篭もりは許されないが。

 そのような甘い世界ではないのだ。

 もっとも、裕福である大商会や貴族家などでは、今後はそれも有り得るのかもしれないが。


 あと稀人ファッションなども御披露目しており、簡易ファッションショーなども御披露している。

 なんか夏祭りというよりは、町興し企画みたいになってしまっているが。


 まあ、王国の首都から僅か二十キロメートルほどの距離にあり、今回は無料の交通機関があるのだから、必ずしも田舎企画とは言えない。


 バスも十台くらい展示されていて、乗り降りの仕方などを確かめてもらっている。

 全く情報がないと当日に混乱するからな。

 じっくりと情報を流して慣れてもらおうか。


 周辺の警戒については、騎士団に「自動車」を与えてある。

 車種は当然、不整地走行が得意な俺の愛車だ。

 やつらも常に重装鎧を身に付けているわけではないので、乗り降りするのには困らない。


 野を駆ける鮮やかな原色イエローのボディは、世の悪党共に恐怖をもたらした。

 排気量四千㏄の咆哮がもたらす加速から逃げ切れる盗賊など、この世界には存在しない。

 不整地な荒野で、全力疾走する馬を余裕で千切り捨てていく鋼鉄の怪物!


 この追っ手の速力は無敵だ。

 その持続力の前には、追われた馬の足が上がる。

 馬が全力で走れる時間はあまりにも短いのだから。


 魔法で補助したって限度があるだろう。

 そもそも、盗賊どもに優秀な魔法使いなんかいない。


 何しろ、そいつを乗り回しているのが、この魔王か精鋭王国騎士団しかいないからな。

 どちらと出くわしても、連中のような悪党にとっては致命傷だ。


 どっちが慈悲深いかなー。

 答えは「どっちも無慈悲」で正解だ。

 悪党にかける情けはこの世界にはない。

 世の中が厳しいのは、世界を越えても変わらない事実なのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。