67-4 御誕生日おめでとう
当日の朝、俺には御馴染みのポンポンっという花火の音で目が覚める。
昨日作ったばかりの川原で、ゴーレム達が打ち上げ花火を打ち上げているのだ。
やっぱり、花火大会の朝はこうでないとなあ。
俺は張り切って恒例の門掃除を済ますと、朝御飯に臨んだ。
今日の朝食は、特製の「御誕生日プレート」だ。
これは前もって開発しておいた奴で、朝から唐揚げやプリンがつく豪華仕様だ。
今月生まれの奴が十三人もいるので、あちこちで「おめでとう」の嵐だ。
生まれた日は定かじゃない奴が殆どなので、一か月単位で鑑定したものだ。
心なしか、辺りには浮き浮きとした空気が流れていた。
他にピラフとツバメの巣のスープ。
子供達が大好きなサイラス産のココナツミルクで甘めに仕上げた、エバンス爺さんの特製スープだ。
そしてエリーンが集めてきた貴重なエルミア特産鳥魔物の高級卵で作ったスペシャル・オムレツ。
こいつは並みの卵とは甘味が違うぜ。
誕生月の子には、ケチャップでデコレーションが描かれている。
おチビ猫のプレートには、可愛いカップケーキがちょこんと載っていた。
改めて数えてみたら、いつのまにか子供が記念すべき百人になっていた!
その元凶である御姉さんは、新入りの子供達の御世話をするのにもう夢中だ。
今回の新入りの子は、全員三~五歳程度の「御狐様」達だった。
狐獣人かあ。
これまた要注意な連中だ。
そのうち、また何かが起きるような予感がする!
朝から遊園地を稼動したので、全員で御出掛けする。
まあ、割とすぐそこなんだけど。
新入りの御狐様で三歳の女の子も頑張ってえっちらおっちらと歩いていくが、いつのまにかトーヤが一緒についていて手を繋いでいる。
四歳の子二人はエディが手を繋いでいる。
彼らも同族が増えて嬉しいらしい。
先頭を行くのは旗を持ったエリーンだ。
彼女はセキュリティを意味するグリーンの腕章をつけている。
引率の先生方や護衛の冒険者に、ダンダラ模様の着物を翻した新撰組の連中も帯同している。
エリーン達は、あとでエルミアの子供達を迎えに行く予定だ。
プリティドッグ達も当然のように、人の群の中に潜りこんでいる。
これをやられたら絶対に見つかりっこない。
ミニョンママ達は、また観覧車に入りびたりの予定か?
子供にも番を譲ってあげてね。
今日は子供の御誕生日会なんだから。
「ぽっぽー」
おチビはゴーレム汽車が御気に入りのようで、汽笛というか、連中が口で叫ぶそれを真似している。
そして待ち切れなさそうに、俺の手にぶら下がって身悶えしている。
「いらっしゃいませ~」
いつのまにか先回りしている斉藤ちゃんの、今日のロールプレイは入場ゲートの御姉さんらしい。
そういう制服姿もなかなか可愛いな。
これが日本なら外国人観光客から一緒に撮影を頼まれそうな雰囲気だ。
可愛い猫絵柄の【御誕生日記念キップ】を貰って、嬉しそうなおチビ猫を連れて汽車へ向かった。
本日は正規オープンなので、アドロスの住人もぞろぞろとやってきている。
街でやる大きなイベントは花見以来かもしれない。
おチビを汽車に乗せて、手を振ってやる。
新人の御狐様の子も乗せておいた。
「うおおう」
「ぴゃああー」
うちの子達が何か叫んでいる。
付き添いの面々は、コースの外から手を振る役だ。
「もっと、のりたいの~」
あまりにも楽しくて、もっと乗りたいらしかったが、他に並んでいる子もたくさんいたので、おチビ猫を抱き上げて頬ずりして宥めた。
「また後で来ような~。
今度は、あっちの水鉄砲コースターに乗ろうか」
エミリオが、シェリー姫を連れて楽しそうにしている。
御付きの両王国騎士団達も楽しそうな様子だ。
他の御姫様や、一緒に連れてこられたサイラスの子供達もあれこれと目移りしながら、きょろきょろしている。
プリー君は、あれから俺が派手に増殖させた上下に動く乗り物系設備に、目を白黒させながら乗りまくって梯子していた。
今日もウオッカ姫は甲斐甲斐しい御世話係だ。
テキーラ姫は一切迷いなく、キラキラと輝いて人目を引くメリーゴーランドに向かって突撃していった。
相変わらず行動に遅滞というものがまるでないな。
ゴメン、三歳児は保護者同伴で御願いね。
御世話係の少年バンダナ騎士が、さりげなく同乗していた。
遊園地は大盛況だった。
スタンドなどもこれまた大盛況だ。
今日はエリも遊ぶ側に回っていて、ポールやマリーも一緒だ。
みんな綺麗な服を着て御洒落をしてきている。
俺がプレゼントした物や、御母さんの手作りの品だ。
ポールやマリーは二人共、母親のリサさんと手を繋いで嬉しそうにしている。
地球と変わらない風景がそこにあった。
遊園地っていうものは、やはりこうでなくっちゃな。
うちの子達を連れて水鉄砲コースターへ行く。
こいつはオープン型の車両の右側に水鉄砲がついていて、的を並べた円筒の周りを回る乗り物だ。
的はこの世界に合わせて、ドラゴン・キメラ・盗賊などだ。
新入りの御狐様達が、もう夢中だ。
やはり狩りの本能を刺激されるのだろうか?
付き添いは真理を始めとして、あとは古参の御狐コンビにゴーレムや職員さんだ。
夏に合わせて、ゴーレムの御化け屋敷を追加しておいた。
新撰組のメンバーも、もっぱら脅す役で参加している。
近藤なんかは、元々素で子供が泣き出しそうな威圧巻があるのだ。
もっとも、それはうちの子達には通用しないのだがな。
いつも笑顔で犬の頭なんかを撫でまくりの奴だし。
ミラーハウスもがっちりと投入済みだ。
こいつは他の客達にも好評だ。
「なんなの、この鏡の群は」
「うわあ、凄い。
一体幾らするんだ」
「やっぱり、世界で一番美しいのは私ね」
この世界では、こんなに大きくて美しい鏡をここまで贅沢に使うなどという事は考えられないようだ。
技術的というか、コスト的に見合わないのではないか。
凄い魔道具なんかは、いっぱいあるくせにな。
ミラーハウス本来の楽しさよりも、そちらの驚きの方が上回ったようだった。
まあ、直に慣れるさ。
メリーゴーランドや観覧車は、かなり列が出来ている。
うーん、王都で宣伝すると遊園地のキャパを超えてしまいそうだな。
営利的に始めた事業じゃないので、王都での恣意的な宣伝はやめにしよう。
どうせ噂を聞いて遊びにくる物好きは大勢いるのだろうし、そもそも王都の塀の上から丸見えになっている施設なんだから。
外国人の間でも口コミで話題に上るだろう。




