60-2 テストコース
まずジェットコースターの実物で試験をしてみることにした。
どうやら事故った原因は車輪関係に問題があったようだ。
また天空へ羽ばたかれたりするとヤバイので、遊園地ではない別の場所で仮組み立てをしてみた。
事故原因を分析し、ネットでの事故例などを参考にして、足回りの部品が外れないようにした。
この程度の用途でオリハルコン製の車軸が折れたりする事は絶対に有り得ないので、部品が外れないようにという点にのみ細心の注意を払った。
とにかく試験では思いっきりぶん回しておいた。
これが地球のジェットコースターならば、間違いなく部品が千切れ飛び、本体も大空に飛び立つか地面にめり込むかというレベルで。
これで人間が乗っていたら堪ったもんじゃないが。
人間と同じ強度の実験人形を作って載せておいたのだが、何故か歓声が聞こえてきた。
そんな馬鹿なと思ってよく見たら、先頭に沖田ちゃんと斉藤ちゃんが乗っている。
やれやれ。
まあ、あいつらなら絶対に死なないからな。
弾け飛んだら、二人でそのまま楽しく空を舞うだろう。
「いやあ、ジェットコースター楽しいですね。
もっとスピード出ませんか」
「計測してみましたが、20Gくらいかかっていましたね。
なかなかの迫力ですよ」
うーん、木星人でも潰れちゃいそうだな。
普通は5Gくらいだぞ。
アポロ計画の飛行士訓練だって7Gくらいで訓練していただけからな。
英国の特殊な任務につく接着剤系の名前をした某有名スパイも、それくらいが限界だったようだし。
これだと終いには白色矮星人しか乗ってくれなくなるじゃないか。
これはテストだからな、テスト。
本番は5Gに設定しておくか。
オリハルコン製のボディは、この程度の試験ではビクともしなかった。
このコースターの売りは、0-百キロメートルの加速が僅か一秒足らずなところだ。
まあまあの加速じゃねえ?
どんなスポーツカーの発進加速にも負けないレベルの加速だ。
日本のロケットコースターだと、一・八秒で時速百七十二キロとか二・五秒で百三十キロとかだ。
こいつはエリーンやアルスあたりだと病みつきになるんじゃないか。
王妃様なんかもファンとして獲得出来そうだな。
チビども用にちびっこコースターを作らないとな。
安全装置はしっかり作らないといけない。
子供用コースターはシートベルト式だと落ちる可能性がある。
実際に子供でそんな事故が起きた事があるのだ。
子供用で高さ三メートル程度だったので、体の柔らかい子供が落ちても怪我は骨折くらいで死ななかったらしいけど。
でも頭を打ったりしたら大変だからな。
大型コースターは安全装置の性能に命を懸けた。
というか、正確には乗客が命を懸けなくて済むようにだ。
点検は充分にやられるが、念のため制御系に「精霊装填」系統もいれた。
万が一の場合は精霊が安全バーなどを管理してくれる。
車輪などが吹き飛んだ場合でも、残りの車輪で安定性を確保できるようにもしてくれる。
日本でも、たまに安全バーが下りなくなったり、途中で浮いてしまったりする事故がある。
車軸が折れてしまったり車輪が外れたり、またはボルト脱落で下にいる人が怪我をする例も多い。
頻繁に点検整備や部品交換が出来れば問題は少ないのだろうが、やはり商業施設なのでそうはいかないのだろう。
あれは巨大な施設で部品点数が半端じゃないからな。
金食い虫以外の何物でもない。
かといって目玉施設となるジェットコースターを置かないとライバル遊園地に負けるから置かない訳にもいかないだろうし。
金属部品の塊が年柄年中雨ざらしになっている錆びやすい設備の上、かなりの力が限界一杯までかかる施設なのだ。
古くなってきたり経営が厳しくなってきたりで十分な整備が出来なくなってくると事故も増えるのだろう。
一発事故ると経営に物凄く響くだろうし、そのあたりは本当に頭の痛いところだ。
案外と、そういう簡単なボルト脱落の事故が多いのかもしれない。
その辺もチェックできる点検魔法を開発した。
魔法でスキャンしたデータを新品状態の時の物と比べて差異をみるのだ。
最悪は俺の再生のスキルで定期的に新品化しておこう。
一応はゴーレム隊も待機して、何かあれば乗客をマンツーマンで救助に行ける厳重な体制だ。
テロにも備えて新撰組にも訓練をさせておこう。
あの十三か国の連中が持っていた違法な魔法のスクロール爆弾の事が頭を離れない。
魔法で客の持ち物をチェックするX線魔法みたいな物を開発しておくか。
収納の中の危険物もチェック出来るといいが、そいつも難しい。
第一、そんな物は俺が一番引っかかりまくりだわ。
魔法をかけられた物体や魔導製品にも反応して調べられる物が良いな。
またゲルスの動向には充分注意を払っておこう。
次に俺はチビっ子用のコースターにも取りかかった。
それと回転遊具とジェットコースターを合わせたような乗り物も作ってみた。
安全性が高く、御楽しみも倍増なのだが、その分コストも跳ね上がる。
うちは俺の手間暇程度で済んでしまうがな。
これなら、おチビ猫でも安心だ。
レオンには少々刺激が物足りないだろうけど。
そして目玉中の目玉である「大観覧車」。
こいつも、このテスト場で一度組み上げてみた。
まず観覧車組み立て用の巨大ゴーレムのチームを製作する。
彼らは高さ二百メートルに達する大巨人だ。
とりあえず今回は念願の世界一を目指し、キリよく高さ二百メートルに設定する。
今までの五十メートルサイズと、王都から見て重ならないように北側に設置した。
見事な親子観覧車の出来上がりだ。
地球でも、こんな贅沢をしている遊園地はまずないだろう。
巨大建造物である観覧車の建設には物凄い費用がかかるのだ。
そして、その後の整備費も莫大だ。
その前のスペースに作られるのがジェットコースターゾーンだ。
これで、だいぶ遊園地としての体裁が整ってきた感じだ。
大型観覧車は一周三十分を予定している。
厳重に品質は管理され、様々なテストが繰り返された。
そして非常時に備えてゴーレム救助隊が昼夜を問わずに訓練を行なった。
地球でこれを作ったら、おそらく予算十億ドル近く、そして厖大な歳月が建設にかけられるだろう。
実際に大型の観覧車などでは、その間に景気が悪化するなどで資金がショートして作りかけのまま解体の費用すら出ずに雨ざらしになってしまうような悲惨なケースもあった。
そのうちに軸周りの部品が腐ってきて、大重量を支えきれなくなって倒壊しそうだ。
あれがタイヤのように転がったらSF映画の一場面のようになってしまう。
日本の大きな橋でも、支えとなる巨大なボルトが何十年もの間に腐ってボロボロになっている事がある。
うちの近所の橋もそうなっていた。
あれは写真で見てぞっとしたわ。
しょっちゅう自転車道を目指して自転車で通っていた場所だったんでなあ。
腐って引っ掛かりが無くなっていたので横に抜け落ちそうになっていたんだよな。
よくあの橋が落ちなかったな。
検査して異常があっても、そこから予算を取って補強や修理をするのにまた数年を要する。
なんというか、腐食して錆びた部分が盛り上がっていて、それにボルトが引っ掛かってかろうじて抜けない状態だったらしい。
そういう状態の「奇跡の橋」が日本中に沢山あるはず。
もし大地震が来て衝撃で腐食部分が弾けてしまっていたら、揺れでボルトが抜け落ちて、それが連鎖して重量を支えきれなくなり見事に大橋が落ちていた事だろう。
いやあ、魔法万歳だ。
うちの施設はそのような羽目になる事は絶対にない。
俺にコピー能力があり、ゴーレムがいてこその、このケモミミ遊園なのだ。
真面な方法で作るとしたら、おそらく安全性が十分に確保出来ないので、さすがの俺も建設しないだろう。
俺がいなくなったら即廃業の憂き目に遭うだろうし。
これにも安全確保のために精霊が装填されている。
更に、子供向けのアトラクションを増やすべく奮闘した。
走路を回って水鉄砲で的を撃つ奴を作ってみた。
それが的に当たると派手に水飛沫が上がる。
それと広いコースを、あまり激しくない乗り物で回れるようにした奴も作ってみた。
この辺りのアトラクションは日本でも親の付き添い同伴で二歳児からOKの奴だ。
俺がおチビ猫と一緒に乗りたいから作った物なのだ。
後はスタンドの売店、そしてレストランも増やすか。
最近は料理学校の卒業生も増えてきた。
半年コースだから、そのうち第三期生も卒業してくる。
更なる精進を求めて、料理大学校も創設しておいた。
料理学校の卒業生は試験免除で入学出来る。
こっちは山本さんに総長を御願いしてある。
この人も段々と肩書きが増えてきたな。
既に幻の稀人料理人の呼び名「仙師」が称号になっているし。
料理大学は第一期にして既に、遠くハイドからも留学生がやってくるほどの人気だ。
ちなみにエリも大師が称号化している。
そいつも鑑定されると丸見えだ。
知らぬは本人ばかりなり。
遊園地の拡張を終えて、テストの済んだ物から、どんどん移築していく。
更に移築先でもテストを繰り広げた。
特に観覧車は街中からもろ見えになっているので、アドロスでも大いに話題を攫った。
もちろん王都からも見えるだろう。
むろん、サーカス広場の設置も忘れない。
俺がやっていた時とは違い、サーカスは割と普通にやる予定だ。
ここでは、それでも十分に楽しめるだろう。
例の化石魔物の他に、サーカスでよく見かける地球の動物を、ゴーレムで再現してやる予定なのだ。
象の玉乗りや熊の三輪車は絶対に外せないぜ。
夜は、王都からも良く見えるようにイルミネーションをド派手に点けてやった。
西の公爵邸に物見櫓を作ってみたら、そこからでもよく映えた。
一応景観を保つためと、王宮入り口に在る王の観覧席よりも高い建物は禁止という事になっているので、物見櫓は梯子車のように収納式になっている。




