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第151章 異世界の七五三……ぽいもの   151-1 異世界の五・十・十五

 空中庭園の試運転は途中だったが、例の醍醐青年一家を沖田ちゃん達に引率させて日本へ里帰りさせておいた。

 一応、首相官邸には一人特殊失踪者を帰す旨を連絡しておいたので、帰国の手続き的に問題はなかろう。


 一旦そこで空中庭園試運転の儀は中断して、彼を乗せてアルバトロス王国へと帰還した。

 フリードリッヒ家に子供達を送りがてら帰国の挨拶をさせてから。

 どうせすぐ帰ってくるのだが、まあ一応な。

 

 彼も日本へ帰ったら、只の大学中退者に過ぎない。

 こっちでは事業を成功させているみたいだし、彼もこちらへの移住組決定だな。


 好奇な雰囲気を纏った稀人子孫たる王太子殿下に丁寧な言葉で苦労を労われ、彼も大変恐縮していたのだが、殿下に見送られて無事に日本へと帰国していった。


 彼は大学在学中に学校内からいきなり消えたので、あれこれと何もかもが放りっぱなしだろう。

 さぞかし消失現場は派手だったろうなあ。

 そこは大学構内だったそうだから、葵ちゃんよりも大きな騒ぎになっていたのではないだろうか。

 さしずめ、校舎丸齧りって感じかな。


 俺達よりも一足先に異世界へ旅立った武の奴も、確か会社の設備を巻き込んでド派手にやったはずなのだが、俺はテレビとかを見ない人間だったので、まったく気付かなかったな。


 きっと、その時の惨状を見た衝撃で、俺達の時には日本政府も迅速に動いたのだろう。

 突如、未知の大災害が日本に多数発生したのだからな。

 政治家や官僚が集まるような会議で、喧々諤々の末に次元災害とでも名付けられたかもしれない。

 そして、それに関しての情報は、異世界から書き込まれた俺のネット情報頼みだったというわけだ。


 醍醐君には異世界転移の腕輪を渡しておいたので、後は彼の好きにしてもらおう。

 かなりの魔法音痴でスクロール使いだそうだが、魔力はたくさんあるようなので腕輪の魔法は使いこなせるだろう。


 一応、特種失踪者扱いなので、彼の扱いは首相官邸に丸投げしておいた。

 これで日本へ帰還出来た稀人は五人目か。

 高校生の織原以外は、皆こっちの住人だな。

 全員異世界で結婚した所帯持ちだし。


 死んだと思っていた息子が、いきなりネコミミの奥さんと子供達を連れて帰ってきたので、親が目を白黒しているんじゃないか。

 もう大学は卒業して就職しているだろう友人諸兄にも大爆笑されているのに違いない。

 一応、うちの商品で土産に良さそうなものを、あれこれと持たせておいたのだ。


 結構ネタ土産は混ぜておいたぜ。

 さすがにドラゴンのウンコの化石とかは無しにしておいたが。

 あれはトーヤが大好きなんだよな。

 もう六個も集めているし。


 あの青年も「日本は空気が悪いから子供達の健康に良くないのですぐ帰る」とか言っていたが、確かにそれは言えるかもしれない。

 俺が子供とかを連れていく時は、超強力な空気清浄の魔法を広範囲にかけてしまうのだがね。

 排気ガスの煤も窒素酸化物もPM2・5も目じゃあないぜ。


 とりあえず、ここエアリアルガーデンは非常に空気が清浄だ。

 元々汚れの少ない上空を飛んでいるものだし、シールドを張って気圧調整もしている上に、空気清浄の魔法も使用しているので空気もよく浄化されている。


 せっかくこういう物を作ったので、レミの誕生祝いをやるのならここだな。

 今年は、うちの子が五歳になったので正式な御披露目会をやるのだ。

 あの子の実の母親も帰って来た事だし、その名を冠したこの空中庭園Ⅱでやるというのも趣がある。


「御祝いの食事はどうしようかなあ。

 行事の性格から考えて、子供の参加者が多いはずなんで、その方面を充実させたいんだが。

 久しぶりにエリに頼んで、全面的に取り仕切ってもらうか」


 キッチンエリでは、最近特に子供向けメニューを充実させている。

 主もまだ中学生相当になったばかりだからな。


「それでいいんじゃないのかな。

 あの子に任せれば、デザートが充実するのもいいわね」


 なにかと行事のホステスを務める立場であるシルも同意を表した。


 エリには御子様プレート的な物も多く開発してもらっているので、うちの小さい子の御誕生会なんかでもそういうメニューにしてもらっている。


「ところで、この空中庭園Ⅱのプレオープンも終了したわけですが、ビジネスの方はどういたしましょう。

 英国を経由した地球とのビジネス、あるいはこの世界における観光ビジネスの方面ですが」


「ああ、ロドス。

 地球方面のビジネスの話は、この空中庭園で一度地球へ行ってからにしよう。

 その時は宣伝と御披露目も兼ねてだな。

 まだその方面は準備中だ。

 英国や米国とのビジネスとはいえ、あれこれ認可の手続きなどもそれなりに面倒でね。


 日本もこういう革新的なビジネスをポンっとやれるようなら、あれほど没落はしていないのだが、もうどうしようもない。

 金は真面に出さないわ、やれる人材もいないわ、上からの認可がなかなか下りないわで、日本相手じゃとてもビジネスにならんよ」


 インドあたりの発展途上国からもソッポを向かれている。

 日本が相手だと何年かかっても商売が始められないから。

 国レベル・企業レベルで、そういう理由で海外とも真面にビッグビジネスが出来なくなっている国だからな。


 国内にいい人材はいても活躍の場がないというか、日本の会社が仕事に見合う報酬をちゃんと払ってくれないので諦めて海外へ行ってしまうしな。

 研究者なんかは昔からそうだった。

 それこそインターネットの時代になる遥か以前から。

 家族を養えないので研究者の仕事を諦めて大型トラックの運転手になっていた人もいたなあ。


 国際的なハブ空港やハブ港湾もないので、日本は国家丸ごと国際物流の大動脈からも完全に外れてしまっている。

 それらのアジアのハブ施設関連は全部中韓に持っていかれてしまった。


 役人が固い事を言い過ぎだったんじゃないのか。

 空港とかも地元住民からの反対運動が多くて二十四時間稼働が出来なかったし。

 そのあたりの話では民主国家が強権国家に敵う筈がない。

 韓国だって初期の発展期は、まだ軍事政権だった。


 日本はブラックな労働環境だけではなく、太平洋戦争の敗戦に続き、バブル崩壊で経済の敗戦を経験して経営者も心が折れた。

 技術や素材関係はまだまだ凄いし日本でないと作れないような特別な物も少なくはないが、もうビジネススタイルに自信がないから革新的な事には大金も出せない。

 何かあった時のために社内留保で溜め込むだけだ。


 外国企業はそういう物に莫大な金をかけて、失敗を恐れずにチャレンジするから巨大な企業が育つ。

 特に人材には金を払うし。

 いい人材は世界中で取り合いだからな。


 彼ら世界の企業は成長に対して投資は惜しまない。

 社内に金を貯め込んでおいて利益を生ませるための投資をまったくしないなんて、彼らには絶対に理解出来ない無謀な考えなのだろう。

 そんな事に何の意味もないしな。


 欧米だけでなく、新興のアジア方面の企業でもそうだ。

 だから急速に発展著しい。

 逆に日本は絶対に人材へ金を出さずに仕事だけを強引に押し込む。

 労働力の流動性が極端に低い社会なので、人間を強制労働させる裏トップダウンなんていう呆れた代物が平気でまかり通る。


 宣伝のための金のかけ方も思いっきり下手なのだ。

 最初から日本が外国勢に勝てる道理など何一つない。

 もう何一つ外国との競争に勝てるアドバンテージはないし、今後も一切期待出来ない。

 もう国内成長は見込めないので海外進出しかないと長らく言われながら、それすらもまったく上手くいっていない。


 少なくともグランバースト家がこの手の新しいビジネスを始めるのなら、日本をパートナーには絶対に選ばない。

 日本とは今後も資源取引がメインだな。


「そうですか。

 それはまた寂しいものですな」


「まあね。

 その辺はもう割り切っているよ。

 日本は政治家と役人、そして経営者がまったく駄目な国だから、仕事では非常に付き合いにくい。

 彼らもそれなりに優秀ではあるのだが、なんというのかな。

 方向性が違うというのか、上手く噛み合っていないのだろう。

 業績が振るわずに外国企業に買われてしまった日本企業が、たったそれだけの事で立派に再生したりする事由もよくあるのさ」


 もう日本の国が世界の表舞台に立つ日は二度とくるまい。

 一人の日本人としては非常に残念な事であるが、これが本来の日本の姿なのだ。

 田舎者である田吾作日本人に世界の檜舞台は似合わない。

 豪華客船に乗ってパーティに出席しても、他の国の人間は真ん中へ出て目立ちたがるが、日本人だけは隅っこで蹲っている。


 少年時代に高度成長期を過ごし、青年期に庶民にはまったく関係の無いバブル期を経験し、バブル崩壊や失われた三十年を経験し、終いには使い潰された世捨て人としての人生を経験したから余計にそう思う。


 日本には俺と同じように使い潰されてしまった人達が何百万人もいる。

 彼らが報われる日など、未来永劫、永遠にやってこないだろう。


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