151-2 ゴージュジュゴー
七五三のための歌っていうのは、あまり聞いた事が無い。
季節行事みたいなものじゃないせいだろう。
毎年決まった時節、決まった日にやる雛祭りや正月などの行事は大概盛り上げるために歌がある。
七五三は各人それぞれが、その年齢に達した時にやる行事だからな。
「ラララ、ゴージュジュゴーは御飯の日、美味しい美味しい御飯の日、ララララー」
なんか俺のリビングで踊りながら歌っている奴がいる!
言わずもがな、それはエリーンの奴である。
手足を伸ばしてバレリーナっぽい感じに踊っており、真似して一緒になってレミも踊っていた。
どっちかというと旅芸人っぽい雰囲気の踊りで、そういうものは公爵令嬢が踊るにはどうなのだろう。
まあ可愛いのでいいか。
割と学芸会向きの踊りだ。
ちなみに、この踊りを踊っても魔物の防御力は下がったりしない。
エリーンも魔物を狩る時は、さすがに踊ったり歌ったりしてはいない。
あの子守歌で眠らせないと捕えられないダーチョのような特殊な魔物が相手の時は別なのだが。
ゴージュジュゴーは、もちろん五・十・十五の事で、武がそう呼んでいたので訛って呼び名がそうなったらしい。
この前のモッテングラーチャが外れのイベントであったので、エリーンの奴も今回は大いに期待しているのだろう。
一応、御飯は子供向けを中心に力を入れてあるのだが。
もちろん、貴族を大勢呼ぶ集まりなのだから、大人向けの御馳走もたくさん出る。
さすがにシルベスター離宮でやった内覧会のような、とんでもない代物は出さないが。
どの道、エリーンの奴は御相伴に与るのだから同じ事だ。
招待客の方はロドスが滞りなく招待状を届けてくれているし、頗る順調だったりする。
もし招待された先方が何か困るとしたら贈り物だろう。
うちに送る代物をアルフォンス商会から手配させるのも芸がない。
下級貴族などではそこまで拘らないので、アルフォンス商会で品物選びを楽しみ、「うちのセレクトはどうよ」と見せつけるスタンスらしい。
その辺は俺も楽しみにしているのだ。
結構関係の近い家に送るためのネタ商品も混ぜてあるしな。
案外と、そのあたりの商品に集中しそうで怖い場合もある。
王宮関係や総合庁舎の方では、近しい関係の下級貴族も多いので遠慮がない。
贈る方にも楽しみというものは必要なのだ。
そういう方面においては、もう貴族殺しの称号など忘れ去られている感が否めない。
ここは空中庭園Ⅱにある俺のリビングだ。
現場に来て、あれこれとイベント準備の監督をしている。
まあ準備自体は他の人間がやってくれているのだが。
レミも支度のためにいて、エリーンはその御守りのために来ている。
嫁さん達も準備があるので忙しいからな。
真理も他の子達の準備がある。
王宮からミハエルもやってきて、準備の進行具合を尋ねられた。
「ゴージュジュゴーの行事の進み具合はどうだ。
ケモミミハイムから申し出があってな。
向こうの王太子も是非出席したいとの事だ。
あとだな、エレーミアの帰還もレミの御披露目と一緒に正式に祝いたい趣向もあるらしい。
その辺りは是非とも配慮してほしいとの事だ」
「あいよ、あそこは元より嫁さんの実家なんだからな。
それに、このエレーミア離宮の正式な御披露目と言ってもいい行事となる。
あれこれと準備は進めているさ」
そう、ここはテーマパークなのだから。
俺が期せずして発生させてしまった地下帝国裏庭ダンジョンなどとは異なり、こいつは完全なる人工のテーマパークなのだ。
これを街と呼ぶのは些か憚られるが、俺が管理する領地と呼んでも不思議ではないほどの規模を誇る。
アドロスなんかよりも、よっぽど広いのだ。
王都アルバと同じ面積が多重層構造になっているんだからな。
アドロス・エルフ新町・ロスコー・地下帝国に続く、俺が領主を務める第五の街と言い切ってしまったって過言ではない。
魔法素材で作られ、地球のデザイン力や管理システムをふんだんに用いた、一種の両世界の技術の完全なハイブリッド作品であるとも言える。
異世界魔法によって地球で創造された作品が運行されているしな。
たとえば各種の超未来的なデザインの自動車。
こいつは自動運転技術に、更に魔法を付け加えて安全にした物だ。
あるいは移動にライドアトラクションなんかも導入している。
さらに、ここのアトラクションには4Dライドのシステムまで導入している。
とりあえずはアトランティスをテーマにしたもので、海底への旅をする潜水艇に乗り込み、3D眼鏡をかけて映像を見、さらに匂いを感じられたり水などがかかったりとかミストが出たりとかもある最新版だ。
匂いを発生させるシステムは、ハンボルトで開発された最新の色々とリアルな匂いが再現されるもので、匂いに敏感な獣人にとっては驚きを持って迎えられるシステムだろう。
ケモミミハイムの人々にも楽しんでもらえるはずだ。
映像には、地球の既成アトランティス・スタイルの他に、この世界ならではの冒険なども盛り込まれており、中々迫力のあるプログラムとなった。
あとは大型シアターなども用意され、地球の壮大な風景などを映し出すプログラムもあり、アルバトロスなどでは貴族を中心として多くの関心を呼ぶだろう。
そういったプログラムも随時更新されるので、リピート客の訪問も大いに期待されている。
ここでは地球製の調理ロボットが導入され、スタンドなどでは彼らが軽食やおやつを作ってくれる。
この辺はエリの監修だ。
地球側からは、もちろん生身では参加出来ないのだが、地球の企業とコラボしてコンビニや通販でエリ監修のおやつを地球にいながらにして買えたりするのだ。
それをおうちのリビングで食べながら、このアトランティスをヴァーチャルに歩き回ったりライドしたりして遊べる。
また仮想店舗や仮想不動産などを持つ事も可能なシステムなのだった。
普通の仮想空間と異なるのは、『そこに実店舗がちゃんとある』っていうところかな。
つまり実店舗を経営しながら通販もやるという、Eコマースを利用する商売のような感じか。
要するに実際に日本で店を経営している人が、通販での取引をやっているという感じなのだ。
バーチャルでそこへ行く事も可能なシステムなのが普通の通販と一味違うところだ。
地球から店舗の賃貸契約をした人は、この空中庭園Ⅱへ契約時に招かれる。
きちんとイメージを持って商売してもらいたいのでな。
まだそのあたりは実装されていないが、このヴァーチャル世界は非常に広い物である。
多くの人が楽しめる広大な世界となるだろう。
実際の空間にも拡張空間の効果により、とりあえずは各階層が王都アルバ一つ分、パリ二つ分の面積はあるのだ。




