05__孤独じゃなくなった魔王様 1
タイトルが決まらず、結局 こんな感じに…。
『子育て日記』じゃないし、そんなの書けないし…。
その内 タイトルだけ変えるかもです。
勿論、変える価値のあるタイトルを考え付かないかも、でもあります。
___視点:東の魔王 - ロキ___
漸く落ち着いた俺は、ソファの裏側から竚ち上がった。
驚いたにしても、狼狽えすぎた。
何だか、膝と 爪先が痛い。
きっと、惶てすぎて 何処かに打付けたんだな。
憶えてないけど。
「えっと…… 」
ソファの前側に移動しながら、考える。
《 この後、どうしたら いいんだろう?》
シシィが大きくなっちゃったのは予想外だったとしても、これって 俺にとっては侑かっただけの事だ。
困る事なんて ない……たぶん。
赤ん坊の世話なんて 出来そうにないしね。
あの時 リクを下がらせたのは、俺の傍に長くいると リクが参っちゃうからだ。
だから、暫くしたら また来てもらおうか って惟ってた。
たぶん、リクも 判ってて、離れた処で 呼ばれるの待ってるだろうし。
だけど、シシィが 俺と同じくらいに成長してくれたなら このまま此処にいてもらっても、いいよね?
シシィの着替えとか、必要なモノだけ持って来てもらえれば、後は 何とかなりそうだし。
それに、このまま一緒に居られるんだったら、長い昼の時間も、それより もっと長い夜の時間も、独りで潰す必要がなくなるんだ。
もう 取れちゃったボタンを如何に上手に付けられるか、なんて事に 情熱を傾けなくても済むんだ。
《 これからは、シシィと沢山 お喋りしたり……。》
其処まで考えて、気が付いた。
俺は、ソファの上に竚ったままのシシィを じっと見詰める。
シシィは、一歩も動いてない。
シシィは、一言も喋ってない。
幾らか首は動かしてたけど、手だって 動かしてない。
ただ ソファの上に竚って、俺を見てるだけだ。
「 ––––––––––––シシィ?」
恐る怖る 声を掛けてみる。
「自分で、動ける?」
良ぉ〜く考えれば 間抜けな質問だけど、この時の俺は 本当に心配してたんだ。
ひょっとしたら、こんな急成長のせいで 筋力とかに影響あったんじゃないか、って。
俺が影響 及ぼしちゃったんだし、何か 身体的な不自由を強いてたりしたら、って。
恐々としてた俺に、思念が返された。
「 そ、か…………良かった」
脱力しそうだった。
また 座り込んじゃいそうだった、何とか竚ってられたけど。
でも 良かった、本当に 良かった。
勿論、どうにかなっちゃってても 一生 面倒看たけど、何ともないのが 一番だもん。
動いてなかったのは、偶々なのかな。
俺は、気を取り直して シシィを見た。
彼女は、乱雑にTシャツを被せられた状態のまま 愨しく竚っている。
「えっと…… 」
まずは、ちゃんと着せてあげよう。
呪布より マシって云っても、このままじゃ 動けないよね。
俺は、何とか 袖に細い腕を通させようとした。
サイズは ぶかぶかだから、身頃部分に両腕が入ってても 充分 袖を通せる。
…………筈だった。
「っ、わ⁉︎ –––––––わわっ」
惶てて、俺は シシィを支えた。
彼女が倒れそうになったからだ。
「っ ………吃驚した」
場所はソファだから、後ろか横に転がる分には 怪我なんかしないだろうけど、今のは 危なかった。
やっぱり、頭が重いから 倒れる時は頭から、だし。
こんな事になったのは、俺のせいだ。
今さっき、Tシャツに袖を通させようと、口と身振りで 着方を説明した。
シシィは、俺が言った通りに 腕を動かした。
ほんの少し 左腕を上げただけだ。
それだけの動きで、彼女は 体勢を垉した。
まず、ぐらり と右へ傾がり、俺を吃驚させた。
自分の軀が傾いたのを感じ 踏ん張ろうとしたのか 反射的だったのか。
シシィは、右足を 僅かに動かした事で 更に体勢を垉して、俺を惶てさせた。
両腕を伸ばして(伸ばすって云っても 長さに制限-有り捲りだけど)シシィを支える。
軀は 子供だけど、俺は 魔族だ。
力は、見た目よりある。
小さな(軀のサイズは同じくらいだけど)シシィを支えるくらい、何て事ない。
腰を擁える様にして、倒れかけたシシィを支えたんだ。
ほっとしながら、俺は 1っ重大な事を忘れてた自分に気付いた。
《 バランス感覚って、どうやって身に付いたんだっけ?》
シシィは 産まれたばっかりなんだ って事、忘れてた。
大っきくなったけど、彼女は ついさっきまで首が据わったばかりの赤ん坊だった って、忘れてた。
もしかしたら、こうやって竚ってるのだって 必死だったのかもしれない。
本格的に 手足を動かし始める前に、軀だけ急成長したんだ。
バランス能力なんて、備わってる筈なかった。
《 つまり、大っきな赤ん坊って事?》
シシィの事だから あっと云う間に動ける様になりそうだけど、今は 自分じゃ何も出来ない。
「え〜と…………取り敢えず、座ろっか?」
竚たせてると、また 転びそうだし。
支えながら ソファに座らせようとしても、シシィは 倒れかけた。
彼女としては、どうして俺みたいに動けないのか 不思議だったみたいだ。
無表情だった顔の中で、眉だけが僅かに寄ってる。
小さめな頭が、緲かに 傾がってる。
《 何か 可愛い。》
そう惟いながら、袖から手を入れて シシィの腕を引っ張り出す。
勿論、肩 抜いちゃわない様に、力加減してね。
両腕を 袖に通してやってから、どうしたらいいか考える。
俺、弟も妹も いないから、こう云う時 どうしたらいいか、正直 判らない。
「 ––––––––––––まずは………ご飯かな」
乳児から幼児になったとは云え、シシィは 固形物とか喰べた事ないだろうから、柔かいモノで。
そう惟いながら、手許にある食材を思い出す。
《 消化が良くて、栄養あるの……。》
何が作れるかを考えながら、ソファの傍を離れる。
数歩 進んで、すぐに シシィの事を思い出した。
一瞬 放置しちゃったのは、俺の不注意だ。
食事の事を悩んだ途端、すこん と抜けちゃったんだ。
尤も、シシィは 大して動いてなかった。
腕を上げてみた反動で 体勢を垉し、後ろへ転がって 背凭れへ頭を打付ける。
更に 引っくり返った姿勢を起こそうとして 失敗し、横に転がってる。
尚も 起き上がろうとして、手足を 動かしてる。
本人は 必死なのかも知れないけど、見てるほうは『可愛い』の一言に尽きる。
だって、無表情ながら 顔が『何で 出来ないんだ?』って云ってるみたいになってるし。
ゆったり動いてる手足だって、あれで全力なんだろうし。
《 此処なら、いいか。》
ソファは柔かいし、転がっても怪我はしない。
ご飯 作ってる間、此処で運動しててもらおうかな。
「シシィ、此処にいてね」
そう言い残して、俺は キッチンのほうへ歩き出した。
▽ ▽ ▽ ▽ ▽
___視点:東の魔王 - ロキ___
「ゆっくりで いいよ」
軟飯を作って 鳥ササミ肉を刻んで入れてみたり、白身魚と ほうれん草のスープを作ってみたりした。
勿論、冷まして 小さなデザート用のスプーンで喰べさせてる。
シシィは、差し出されたスプーンを拒む事なく、一所懸命 喰べてる。
歯は生えてるんだけど、噛むって事が上手くない。
当然だよね、噛んだ事ないんだから。
俺は、シシィの小さな口に 苦労しながら、少しずつ 喰べさせる。
俺のほうも 慣れてないしね、こう云うの。
妹も 弟もいないし、同年代-攸か 幹部の魔族にだって近付けないんだから。
こんな経験、した事ない。
でも、凄く愉しい。
やっぱり 独りじゃないからかな?
それとも、こんなに喰べてくれてるからかな?
《 …………そっか。俺の作った ご飯、初めて喰べてくれたんだ。》
俺が 自分以外の為に作ったのも初めてなら、シシィが 固形物を喰べるのだって、これが初めてなんだ。
こんな 何でもない事が、嬉しい。
凄く嬉しい。
どうしよう、顔が笑っちゃう。
「 …………ふ、うぷふふ」
変な笑い声 出ちゃった。
シシィは、一心不乱に喰べてて 反応しなかったけど。
《 可愛いなぁ。》
むぐむぐ動く 小さな口も、柔かそうな頬っぺたも。
軟飯も スープも、好き嫌いなく喰べてる。
頬っぺた突付きたくなる衝動を怺えて、スープを飲ませてあげる。
もう少しで 終わりそうな勢いだ。
嬉しいけど、ちょっと不安になった。
《 これって、普通なの?》
俺、ご飯 作りすぎたと惟ったのに。
…………何か、急に不安になってきた。
まさか と惟うけど、今まで碌な ご飯を貰えてなかった、なんて ないよね?
呪布に葆まれてたシシィが どんな扱いを受けてたか、俺には 判らない。
けど、此処へ来るまで 名前がなかったのは確かだ。
まさか と惟いたいけど、本当に ご飯を貰えてなかったり……。
《 いや、急に成長したせいで お腹空いてるだけかも。》
こっちの理由に 違いない、こっちであってほしい。
そうじゃなかったら、俺………。
《 殱す。》
俺は、どんな顔をしてたんだろう。
自分じゃ判らないけど、きっと 悚い顔してたと思う。
だけど、シシィは 泣きもしなかった。
次の一口を強請っただけだ。
「ぁ、ごめんね」
デザート用のスプーンに、鳥軟飯を掬って シシィの口許へ搬ぶ。
喰べさせられるのに慣れてきたのか、シシィが 自分からスプーンを口にした。
《 いけない、今は こっちが優先。》
シシィの過去について考えるのは 後回しでいい。
それより、今の状態を考えなくちゃ。
《 吐いちゃったり しないかな。急に こんなに喰べて。》
不安に惟いながらも、シシィに強請られると 喰べさせちゃうんだけど。
結果として、シシィは、茶碗-1杯の鳥軟飯と、同量の白身魚と ほうれん草のスープを、全部 喰べた。
そして、お腹が一杯になった シシィは、俺の心配を余所に ソファで眠り始めた。
倖せそうな その寝顔を見て、俺は 漸く安心したんだ。
子育て小説にする気は サラサラございません。
だって、判んないですもん!
知らないモノや 自分の中にない感情は書けないです。
そんな訳で、早く成長してほしい。シシィにも、ロキにも。
テレビも ゲームも ネットもない世界で引き篭もっても、たぶん 面白くないだろうしね。
でも、ちっちゃいのも可愛いしなぁ。
取り敢えず、次も ちっさいです。




