04__49歳の幼児と 0歳の幼児
タイトル、これで良かったんだろうか…。
今なら まだ間に合う、と云う思いがあるも 具体的に何にすれば良いかと云う案はなく……結局 これで押し切ってみようかと。
でも、酷いな、何か……。
___視点:東の魔王 - ロキ___
ソファの裏側に凭れながら、ロキは 床にへたり込んだ。
ソファの上に竚っている幼女の睛からも、ロキの小さな軀が 完全に ソファの陰に隠れる。
その状態で、ロキは、はぁ と大きく息を吐いた。
《 驚いたぁ。》
再び息を咐いているが、動悸は治まっていない。
今も、ロキの耳の奥には 自身の心臓の音が聴こえていた。
彼は 何に驚いていたのか、自分で 判っていた。
勿論、幼児の裸に ではない。
急激に大きくなった事にも驚いていたが、此処までの動悸は それが原因ではない。
もっと 信じられない、有り得ない事が起きたのだ。
《 迂闊だった……。》
後悔に似た感情が、胸の奥に じわりと拡がった。
それに伴って、ロキの表情も 苦いモノに変わる。
この様子を、無表情な黒髪の幼児が じっと瞰していた。
▽ ▽ ▽ ▽ ▽
___視点:東の魔王 - ロキ___
《 莫迦だ、俺は。》
心底、そう惟ったのは 事実だ。
だって、やっちゃったんだ、ドジを。
眼の前にいるのが 誰なのか、その子が どんな存在なのか、判ってた筈なのに 理解が足りなかった。
そうだ、理解し切れてなかったんだ。
《 この子は〔愛し子〕なんだ。》
確かに 人間の子供だけど、この子は 普通の子供じゃないんだ。
俺は、背と首を伸ばす様に ソファの上に竚つ 小さな女の子を見上げた。
赤ん坊の時から そうだけど、相変わらず 感情の見えない顔だ。
作りは 可愛いのに、何か勿体無いな。
紅藤色の睛も 綺麗なのに、これじゃ 置物の人形みたいだ。
勿体無いなぁ、笑ったら 可愛いんだろうに。
そう惟いながら、へたり込んだまま 彼女を見詰める。
紅藤色の円らな瞳とは、ずっと 睛が合ったままだ。
無表情も珍しいけど、黒々とした髪が 何より珍しい。
この子がいた国でだって、こんな色の髪は 珍しいんじゃないかな。
たぶん、両方共 親とは似ても似つかないんだろうな。
《 あの光りと 一緒で、神々からの『贈り物』なんだ。》
俺の睛には、この子(取り敢えず、愛称は『シシィ』で)が放ってる 眩しいくらいの光りが視える。
これは、神々からの やたらな加護を受けた証しで、この子にとっては 厄災の元になるモノだ。
何せ、この光りに惹かれるのは 人間だけじゃない。
人間-以外のほうが、この光りを認識し易いんだ。
身近な家畜や 野鳥だって、周辺の野生動物だって、勿論 魔物だって、この光りが視えれば 惹き寄せられちゃうんだ。
慕って 集おうとするモノもいるし、その『光り』欲しさに この子を襲うモノだっている。
人間は 簡単に傷付くんだ、って理解しない 獰猛な野生動物とか、知能の低い(或るいは、ない)魔物が その類いだけど。
本当は、彼等だって〔愛し子〕を傷付ける気は ないんだと惟う。
ただ、自分達の力が勍すぎる って事を理解する前に 相手を殺しちゃうだけだ。
歴代の〔愛し子〕は、そうして 死んだんだと惟う。
人間じゃ、護り切れる筈ないし。
《 この子も、それが原因で、此処に来る事になったんだろうな。》
この呪布は、移動途中で 他の生物に〔愛し子〕と悟らせない為。
ひょっとすると、日常的に これに…………。
違う……『絶対に』そうだ。
人間に護り切れる訳ないんだ、何度も押し寄せてくる いろんなモノから、この子を。
だから、隠す為に 呪布を用意した。
だけど、その状態が何年も って考えた時、無理だって事に気が付いちゃったんだ。
もしかしたら、他の人間達から 厄災の種みたいな扱いになってきてたのかも……。
それで、あの祭壇に…………。
そう惟うと ちょっと複雑な気分だけど、その お陰で、会えたんだ。
でも、これは、喜んじゃ いけない、のかな……?
《 …………ちょっと、複雑。》
可哀相だ って惟うのに、どうしても 嬉しい気持ちが勝っちゃってるのが。
どうしても、自分の事が優先になっちゃう。
俺って 魔族なんだし、仕方ないけどね。
だけど、それと この子が成長しちゃったのとは、譚が別だ。
「 ––––––––––––ごめんね」
急に詫びられても、この子には 伝わらないかもしれないけど……それでも、言わずにはいられなかった。
軀が大きくなったのは、きっと 俺のせいだから。
《 俺が、願っちゃったから……。》
あの時、名前を付ける時、俺は 願ってた。
俺の傍にいられる この特殊な存在に、ずっと 傍にいてほしい……って。
心の何処かで、そうあれば って、惟ってた。
人間には無理だ って判ってたけど、それでも この状態の俺の傍にいられる 唯一の存在だったから。
シシィがいてくれれば、俺は 孤独なんかじゃない、って。
《 こんな事になるなんて、惟ってなかった。》
これは、本当だ。
叶わない願いだと惟ってたし、短い間でも いてくれるだけで充分だ とも惟ってた。
でも、確かに この願いは、俺の中にあった。
《 まさか、そのせいで 成長させちゃうなんて………。》
名前を付けたのも、ひょっとしたら いけなかったのかも。
俺は、魔王だ………実感ないけど。
強い仂を持つ者の影響は、いろんな形で出る。
俺が 名前を付けた事で、この子を 根本から変えちゃったのかも。
それこそ、自然界の、人間としての在り方-そのものを、根本から。
《 有り得るよね、元々 普通の人間じゃなかったんだし。》
神々の加護と云う称の 詛い。
俺が 眞名を付けたせいで、それが反応した可能性が大きい。
軀が成長したと同時に、寿命とかも 変わっちゃったかも……。
「 ––––––––––––……… 」
俺は、無言で瞰してくる紅藤色の瞳を じっと見詰めた。
綺麗な睛に映る自分を、見た。
幼い少年の顔は、嬉しそうに笑ってる。
《 嬉しい!》
詭らざる心が、シシィの睛に 映ってた。
何だかんだ云っても、俺は 魔族。
最終的には、自分が中心だ。
自分が良ければ、それでいいんだ。
この先の人生に シシィがいてくれれば、俺は 独りじゃない。
《 本当に、いい事あったなぁ。》
俺の魔力に曝されて 平然としてるシシィを見上げて、心から 嬉しいと惟った。
誤魔化せないくらい、俺は 上機嫌になってた。
▽ ▽ ▽ ▽ ▽
___視点:魔王の側近 - リク___
「!––––––––––––––– 」
私は、魔王城の 北の翼棟の一室で、息を飲んだ。
大丈夫だと惟ったからこそ ロキ様の許に〔愛し子〕を残して来たのだが、心配で 自室に戻れなかった。
そんな訳で、北の塔が見える 高い階層にいるのだ。
窓から見える景色の一郭に、谿と その向うに建つ北の塔が見える。
その方向から、強烈な気配が溢れたのだ。
《 これが〔愛し子〕の……。》
ロキ様の魔力は、ご本人の心や性格とは裏腹に 暴力の様だ。
夥しい刃を その中に孕み 、近付こうとすれば 気軽に切り刻んでくる。
しかし、今し方の気配は 違っていた。
魔族の気配とは違う、波動を感じるだけで心躍る感覚が 軀を貫いた。
私が 生贄の祭壇へ着いた時、赤児は 呪布に葆まれていた。
〔愛し子〕-特有の光りも 気配も、実際には 睛にしていない。
それでも、この気配の主が あの赤児である事は 確信していた。
《 無事だった。》
今更ながら、そんな考えが頭を過ぎった。
私でさえ 2メートル以内には近付けないと云うのに……。
生まれたばかりの人間の赤児が、ロキ様の傍にいられるのだ。
而も、人間である あの〔愛し子〕は、ロキ様に 直接 觝れられても平気らしい。
《 呪布を取り払ったのですね。》
お優しいロキ様の事だ。
呪布などに包まれているのは可哀相、とでも惟ったのだろう。
それで、躬ら あの呪布を解いたのだろう。
だからこそ、急に 気配が溢れ出たのだろう。
傍にいられるだけでも驚きなのに、直接 觝れられても異常をきたさないのだ。
神々の加護を 一身に受けた人間、それが〔愛し子〕である。
叡智・能力・魔力・美貌、それ等を 神から与えられた人間である。
その穏やかで 密度の濃い魔力は、ロキ様の魔力の波動にも屈しなかったのだ。
《 人間でしたよねぇ……? 》
惟わず そんな疑問を呟きたくなったくらいには驚いていた。
そのくらい 信じられない事態なのだ。
神々の加護とは、こんな事にも作用するのだろうか……?
《 あの睛も、叡智-故でしょうか。》
出会った瞬間から 見定める様な睛を向けられていた事を思い出し、首を捻る。
赤児の間から そんな叡智があるモノか、と問われれば、私には答えようがない。
その可能性がある、と云う事でしかないのだ。
《 もし、そんな事があるのなら……。》
その叡智で 叶えてほしい事があった。
私だけではない、この国の多くの者達の 切なる願いだ。
勿論、産まれたばかりの赤児に希む事ではない。
自分達であっても叶えられない願いを、あの〔愛し子〕に託すのは 身勝手とも云える。
だが、可能性があるとすれば〔愛し子〕だけなのも 事実なのだ。
《 もし、出来るのなら……。》
今、の譚ではない。
彼女が大きくなってからで 構わない。
人間の成長時間は、吾々に較べれば 極端に早い。
20年足らずで『せいじん』とやらに達する生き物だ。
そのくらい 待てる。余裕で待てる。
ロキ様の これからの人生を考えれば、ほんの午睡-程度の時間だ。
《 だから、どうか……。》
其処まで考えて 頼ってはいけない、と 理性の様なモノが働いた。
彼女は、人間だ。
〔愛し子〕として産まれてはいても、この世界で 最も非力な人型の生物だ。
魔力が強いと云っても、ロキ様の仂を制え込める程ではないだろう。
飽く迄も、自分の身を護れる と云うだけだろう。
《 だが、もしかしたら……。》
諦めなければ、そう 惟っているのだが、心は やはり願わずにはおれなかった。
暫く この場から動く事も出来ず、この他力本願な願いを払拭する事も出来ずにいた。
そう、ほんの10時間-少々を、そうして 北の翼棟の一室で過ごしていた。
ロキの願いが ほんのちょっとだけ叶いました。
リクの願いは、その内 叶うかな…。叶う、かな……たぶん。
それにしても、小さな子を描くのは難しいな…ロキの場合は、中身が大人設定だから いいとしても、もう1人は どうしよう。
子供産んだ事もなけりゃ 子育て経験もない私には 難易度が高いです。
何で こんな設定にしちゃったんだか…。
育児放棄にならない様に 頑張って進みます。
最早、作中のロキやリクの苦労など そっち除けだ。




