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孤独な魔王様と 神々の愛し子  作者: にくきぅ


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10/22

10__29年ぶりの外出 2

2日目の続きです。10話目にして、漸く ロキが お出掛けします。

そして、漸く ファンタジーな生き物が『チラリ』と出ます。




___視点:東の魔王 - ロキ___


ロキは、そろり と窓から顔を出した。

此処は、北の塔の 最も北に位置する小さな窓だ。

元は メイドの常駐していた部屋で、今は 物置にすら使われていない空き部屋の1っである。

メイド達の休憩室に使われていた この部屋は、広さはあれど 眺望は希(のぞ)めない。

窓の際には背の高い樹木が植えてあり、その先の景色を隠している。

尤(もっと)も、曾(かつ)ては の譚(はなし)だ。

今は、ロキの魔力に晒された樹木の殆(ほとん)どが 立ち枯れ、林の先まで見通せる様になっている。

昔はあった林に囲まれた 広い花園も、今は枯れて 土が抜き出しになっている。

立ち枯れた樹々に、何もない荒れ果てた大地。

面影もない程 荒涼とした景色へ睛(め)を向けて、ロキは 1っ息を咐(つ)いた。

周囲-5キロ圏内に存在する生物の気配を、慎重に偵(さぐ)る。


《 よし、誰も いない。》


これから邀(むか)う先に 傷付けてはならない者達がいない事を確認して、ロキは 小さな窓枠に 趾(あし)を掛けた。

覚悟を決めた彼は、一気に 窓の外へ飛び出る。

骨格の細い子供の軀(からだ)は、すんなりと窓枠を通り抜け 北の塔の裏庭へ降りる。

革靴越しに伝わる 久々の土の感触に、ほんの少し 懐かしさを懐(いだ)いたのか。

ロキは、惟(おも)わず 足許(あしもと)へ睛(め)を向けていた。

小さな趾(あし)が踏み締めているのは、茶色の大地と 枯れ草だ。

其処には、何の生命(いのち)もない。


《 これも………。》


曾(かつ)ては 緑に彩られていた庭は、見る影もない。

植えられていた花も 木々も、手入れを怠れば生える雑草さえ 此処にはない。生きられない。

ロキの 暴力的な魔力の影響だが、この有様は 全く希(のぞ)まない景色だ。

そもそも、ロキは 国民を護る為に 躬(みずか)ら北の塔に篭(こも)る程、優しい魔王だ。

枯れた草木は、その姿のまま 其処にある。

微生物なども死滅している為、腐食する事もなく 分解されて土に戻る事もない。

木々は立ち枯れ 落ち葉は堆積し、下草や花々は 葉緑素を失った状態で 力なく大地にへばり付いている。

この有様は、彼の精神を がりがりに削る効果があった。

一気に哀しくなってきた気分を追い払う様に、ロキは ぶんぶんと首を振った。


《 ––––––––––––駄目だ、落ち込んでちゃ。》


その頭には 麦わら帽子があり、その背には 竹で編まれた籠があり、その手には 軍手が嵌められていた。

綜(すべ)て、北の塔の物置にあったモノだ。

曾(かつ)ては、庭園の手入れをしていた者達が使っていた道具なのだろう。

帽子も 籠も 軍手も古びていたが、物置に 整然と仕舞われており 使用には耐えられる状態だった。

それ等を持ち出したのは、彼の中にある『誰とも判らない男』の記憶にあったからだ。

やけに自立した考えをした『かの男』の 記憶と経験には、これまでも 援(たす)けられてきた。

ロキが この北の塔で独り暮らしが出来ているのは、この男の存在(きおく)の お陰であると断言しても良い。

故に、この記憶に忤(さから)う理由などない。

今日も、初めて見たのに使い方が判る事へ 何の疑問も懐(いだ)かず、これ等を身に付けて 塔を離れた。

邀(むか)うは、北に拡がる 巨大な森だ。

其処にいるのは、凶悪な進化を遂げた植物達だ。

善良な植物もあるが、数は 圧倒的に尠(すくな)い。

その為、魔族と雖(いえど)も 気軽には立ち入らない区域(エリア)になっている。

当然、其処に生息する動物達も 凶暴な力を揮(ふる)うモノばかりで、これも また〔不可侵の森〕を形成する要因となっていた。

尤(もっと)も、ロキには 影響がないのだが。


《 喰べようと惟(おも)えば、喰べれる気がするんだよね。》


勝手に溢れる魔力に因(よ)る 探知能力を駆使して、森の生物を偵(さぐ)りつつ 歩く。

立ち枯れた林を通り 枯れ果てた花園へ踏み込んで、ロキは 3キロ先の森を目指した。

トコトコと歩きながら偵(さぐ)る事-3分。

唐突に、ロキの瞳が輝いた。

「み〜ぃつけたッ!」

歓喜の声を上げると同時に、小さな趾(あし)は 乾き切った大地を蹴った。



   ✳︎   ✳︎   ✳︎   ✳︎   ✳︎



2分後、ロキは 歓喜の声をあげた。

「やったぁ」

彼の前(寧(むし)ろ 足許(あしもと))には、朱色の毛皮がある。

ロキは、その上に竚(た)っていた。

「いや〜ぁ、簡単だったなぁ」

北の塔を出て、ほんの 3分の事だ。

縣(かか)っても、精々 5分だった。

ロキは、北の塔の3キロ先にいる 動物の気配を感じ取り、一気に跳んだ。

なめし革の靴に収まった 小さな趾(あし)は 力強く大地を蹴り、細身で小さな軀(からだ)は 一瞬で宙へ舞い上がった。

彼は、梢の先が20メートルもの高みにある 1本の枯れ樹を 軽々と跳び越えた。

この樹は、花園の ほぼ中央に竚(た)っていた。

つまり、北の塔の裏庭にある 花園の南端から跳び、樹の梢を下に見て 花園の北端に着地したのだ。

この一跳躍での移動距離は、100メートル以上だった。

ロキ-本人も、これには驚いた。

何せ、この 30年近くは 北の塔にいて、裏庭にさえ出ていない。

大柄な魔族や魔獣達に対応した造りになっているとは云え、屋内で そんな跳躍力を発揮する機会などない。

その為、彼は 自分の身体能力の程を実感する事がなかった。

体格の割に『どうやら 力はあるかな〜』程度に惟(おも)っていた。

それが、全力ではない跳躍で 30メートル近く跳び上がったのだ。

驚愕の事実だった。

尤(もっと)も、驚いたのは 一瞬だ。

最高点へ到達した時には、喫驚に彩られていた顔は 喜色に染まっていた。

着地した時には、歓喜に似た感情が 全身を駆け巡っていた。

衝動に従って、ロキは 地を蹴った。

再び 跳び上がった小さな軀(からだ)は、高揚していた。

あっと云う間に 目的地-中空に到達したロキは、その勢いのまま 獲物へ降下した。

否、獲物を強襲した と表現したほうが正しい。

30メートルもの高みから獲物を視認したロキは、宙を蹴った。

読んで字の如く、駿足に蹴り出された小さな趾(あし)は 大気を押し出す。

瞬間的に押された大気は、移動する暇もない。

動かない空気は、与えられた衝撃を 同じ力で押し返す。

魔法ではない、強靭な脚力が爲(な)せる技である。

ロキの趾(あし)に感じたのは、弾力のある板を蹴った様な感触だった。

自由落下に因(よ)る加重に 勢いをプラスしての攻撃だ。

獲物は、己(おの)れの頭上に飛来したロキの一撃で 仆(たお)されたのである。

ロキとしては『勢いを付けて着地した』程度だったろうが、獲物は これに耐えられなかったのだ。

斯(か)くして、本項の冒頭に戻る訳だ。

「アクリスなんて、いたんだなぁ」

しみじみと、ロキが呟いた。

ロキが仆(たお)したアクリスとは、大型の哺乳類だ。

深い森の中に生息する 草食動物であるが故か、人間達の間では『幻想動物』とさえ云われている。

この〔不可侵の森〕で生息する事が可能な時点で、通常の生物ではない事は ご理解頂けるだろう。

体長-300センチ前後、肩高-200センチ前後、体重に至っては 700〜800キロになる。

雄も雌も 大きな角(ツノ)を持ち、姿としては ヘラジカに近い。

朱色の毛皮に包まれた身体は頑丈で 力も強く、成獣のアクリスを狩る動物は皆無と云って良い。

そんなアクリスを、ロキは、両足で勢い良く着地する要領で 頭蓋骨を粉砕させた。

幻獣-アクリスとしては 敵を認識する以前の問題で、痛みを認識する暇があったか どうか。

兎に角、電光石火の狩りだった。

「これだけあれば、いろいろ作れる………けど」

育ち盛り・喰べ盛りのシシィに、肉は 必要だ。

しかし、昨日 初めて固形物を口にし始めた彼女に 焼肉を提供する訳にはいかない。

そうなると、野菜が欲しい攸(ところ)だ。


《 木の実は、あるんだけど。》


食用になる野草や キノコなどは、流石のロキの探知能力にも 引っ掛からない。

魔物と化した植物ならば 探せるが、魔力を持たない(或(ある)いは 弱い)植物を 森の中で探すのは厳しいモノがある。

こればかりは、目視で探す必要があった。

その間、大きな獲物を持ち歩くのは 建設的ではない。

しかし、此処に置いておけば 森の肉食獣に素敵な朝食をプレゼントして終わってしまう。

「 ………あれ?」

良く考えたら 失敗だった? などと首を傾げるものの、深くは悩まなかった。


《 結界って、どう張るんだろう? 》


必要のなかった行為だけに、使った事のない魔法だった。

ロキに近付けるモノは極少だったし、そもそも 魔王の所有物を奪(と)ろうとする大莫迦(おおばか)モノは 存在しなかった。

故に、張り方すら 知識になかった。

今は 爆心地であるロキの傍(そば)に来れないだけで、離れれば 痛みをおしてでも アクリスを喰べに来るだろう。

それだけ 魅力的な獲物なのだ、アクリスと云う幻獣は。

「俺の魔力が届く この森にいられる野獣やら 魔獣やらだったら、2キロも離れれば 喰べに来ちゃうよなぁ」

野草を探して歩き廻れば、2キロなど あっと云う間だ。

夢中になって探している間に 獲物を横奪(よこど)りされていた、など 笑えない。

結界は、必須だと惟(おも)えた。

しかし、やり方が判らない。

「ん〜〜、ん〜、んん〜……… 」

どうしたら この獲物に近付けなくなるか、を考えて 考えて、1っ 閃いた。


《 つまり、これの傍(そば)に『俺がいる』状態なら いい訳だ。》


勿論、現実的に 絶えず傍(そば)にいる と云う意味ではない。

離れても、この場にロキがいる時と同じ状態にさえなっていれば シシィ以外は近付く事も叶わない。

其処に至った時、或る方法を惟(おも)い付いたのだ。

ロキは、徐(おもむろ)に アクリスの角(ツノ)へ手を当てた。

角(ツノ)の先に、魔力を込める。

勿論、ほんの少し だ。

油断すれば、魔力の強さに耐えかねて 角(ツノ)が崩れてしまうのである。

魔力の加減が苦手なロキは、随分 苦労して、自分の魔力をアクリスの角(ツノ)へ宿らせた。

ロキにしてみたら、些細な量の魔力だ。

微量、と表現しても良い量だった。

しかし、彼と シシィ以外には觝(ふ)れられない強さの魔力だった。

「これで よし」

直感でしかないが、これで 獲物は無事だと惟(おも)えた。


《 さぁて、喰べれそうな野草は あるかな〜ぁ。》


ロキは、アクリスの巨体から跳び降りて 改めて辺りを見回した。

取り敢えず、森を 更に奥へ進む事にした。

ファンタジー要素やら 魔法要素の低い話ばかり書いていますね。

………済みません。そんなのが、これからも続きそうです。

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