第五章 16話 堕天使の退場
ドゴォォォォォォンッ!!
漆黒の衝撃が、ホール全体を揺らした。
砕けた床。
崩れ落ちる柱。
黒い粒子と、闇の羽根が激しく舞い散る。
その中心で――
セレグとバルサが、至近距離で睨み合っていた。
ギギギギギ……
互いの力がぶつかり合い、空間そのものが軋んでいる。
『どうした……』
『さっきまでの余裕はっ!!』
セレグが、漆黒の剣を押し込む。
だが――
「フッ……」
バルサは、薄く笑った。
「いや……実に楽しい」
「これほど、人間側に興味を持ったのは久しぶりですよ」
『人間側だと?』
「ええ……」
「本来ならば、あなた達など観察対象にすぎなかった」
「ですが――」
「少し、認識を改める必要がありそうだ」
その瞬間――
ブワァァァァァッ!!
巨大な黒翼が、一気に広がった。
『っ!?』
セレグが距離を取る。
そして、バルサは静かにネクタイを直した。
まるで――戦闘終了の合図のように。
『……なんだ?』
「いえ……」
「今日は、この辺にしておきましょうか?」
『は?』
「もうひとり……」
「会わないといけない人がいるのでね……」
バルサが、意味深に微笑む。
そして、その姿が――
スゥゥゥゥ……
闇へ溶けるように消えてゆく。
『待てっ!!』
セレグが手を伸ばす。
だが、もう気配はない。
静まり返るホール。
崩れた天井から、粉塵だけが舞い落ちる。
『いつもながら……勝手なヤツだな……』
セレグは、小さくつぶやいた――。




