第五章 15話 漆黒と堕天使
ギィィィ……
重々しい扉が開く。
そこは――巨大なホールだった。
高級ホテルのラウンジのような空間。
赤い絨毯。
シャンデリア。
だが、その美しい空間には――
無数の魔族達の死体が転がっていた。
「……あなた達が来る前に、少し掃除をしておきましてね」
バルサが、ゆっくりとコーヒーカップを置く。
「邪魔だったので」
『相変わらず、趣味の悪い野郎だな……』
「褒め言葉として受け取っておきますよ」
バルサは、静かに白衣を脱ぎ捨てた。
その瞬間――
空気が変わる。
ズゥゥゥゥゥ……
周囲の闇が、まるで生き物のように蠢き始めた。
白衣の下から現れたのは――黒い礼装。
そして、その背後には……
巨大な漆黒の翼。
『……堕天使』
「ええ……久しぶりに、少し本気を出してみましょうか」
バルサが、薄く笑った。
その瞬間――
ドゴォォォォォォンッ!!
床が爆発した。
「っ!!」
セレグの拳が、すでにバルサの眼前へ到達していた。
凄まじい速度。
だが――
「遅いですね」
バルサは、片手で受け止めていた。
ゴギギギギギ……!!
床が砕ける。
空間が軋む。
『なっ……!?』
「確かに、この前より遥かに強い……」
「ですが――まだ甘い」
ブワッ!!
巨大な黒翼が広がる。
その瞬間――
セレグの身体が、吹き飛ばされた。
ドガァァァァァン!!
壁を何枚も突き破る。
『ぐっ……!!』
「あなたは、怒りに頼りすぎる……」
バルサが、静かに歩いてくる。
「怒りは力になる」
「ですが、それだけでは……上へは届かない」
『説教か?』
「ええ」
「年長者としての、ちょっとした助言ですよ」
セレグが、ゆっくり立ち上がる。
その漆黒の鎧が、ギチギチと音を立てながら変形してゆく。
『だったら……』
『その余裕ごと、叩き潰してやるっ!!』
ドバァァァァァッ!!
漆黒が、爆発した。
黒い粒子が、嵐のように吹き荒れる。
バルサが、少しだけ目を細めた。
「……なるほど」
「それが、あなたの〝漆黒〝ですか」
その瞬間――
セレグが消えた。
いや……
速すぎて、視認できない。
次の瞬間――
ドゴォォォォォンッ!!
バルサの身体が、初めて大きく吹き飛んだ。
床を滑り、
巨大な柱へ激突する。
「……ほう」
バルサが、口元の血を拭った。
だが――
その顔は、むしろ嬉しそうだった。
「いいですねぇ……」
「やはり、あなた達は面白い……!」




