第五章 10話 白花と魔薔薇
ブワァァァァッ!!
赤黒い薔薇のツタが、嵐のように襲いかかる。
「うわぁぁぁっ!!」
安祐美は、とっさに両腕を交差した。
その瞬間――
ガキィィィィンッ!!
白き花弁障壁が展開される。
無数の薔薇ツタが、火花を散らしながら弾かれた。
『へぇ……』
ローズ・デモニカが、妖しく微笑む。
『防御型なのね……』
『でも、それだけで、この庭を越えられるかしら?』
その瞬間――
ズズズズズズ……
別荘周辺の地面が、一斉に脈打った。
「えっ……!?」
ドバァァァァァッ!!
巨大な悪魔の薔薇が、無数に咲き乱れる。
赤黒い花弁が、夜空を埋め尽くした……
『うわぁぁっ!!』
『囲まれたぞぉぉっ!!』
魔物達が悲鳴を上げる。
ツタが、次々と魔物達へ絡みついていた。
『くっ……切っても再生します!!』
シルバニア・ウォークが、槍で薔薇を吹き飛ばす。
しかし――
シュルルルル……
切断されたツタが、すぐに再生していった。
『面倒な能力だな……』
ゴールディアが、戦斧を構え直す。
その時だった。
「みんな!! 下がって!!」
ガーディアン・ブルームが、前へ飛び出した。
白き花装甲が、夜の闇で輝く。
背後では、巨大な花弁状マナが回転していた……
『ブルーム・ガーデン!!』
ブワァァァァッ!!
白い花弁が、大地へ広がる。
その瞬間――
ドゴォォォォンッ!!
地面から、巨大な白い花々が一斉に咲いた。
「おおおっ!!」
白花が、赤黒い薔薇を押し返してゆく。
侵食してくるツタを、浄化するように消滅させた……
『へぇ……』
ローズ・デモニカの目が、細められる。
『浄化系統……?』
『天界フルーツって、思ったより厄介ねぇ』
「そっちこそ!!」
安祐美が、指を突きつける。
「人のこと、養分とか言うのやめてくれない!?」
『だって、本当のことでしょう?』
ローズは、クスクス笑った。
『弱い存在は、強い存在の糧になる……』
『それが自然の摂理じゃない♪』
「うわぁ……考え方まで嫌なタイプだぁ……」
すると突然――
ドゴォォォンッ!!
巨大な爆音が響いた。
『道を開けろぉぉぉっ!!』
ゴールディア・ウォークだった。
黄金の戦斧が、薔薇の壁を叩き割る。
さらに――
『デッド・ハウンド隊!! 突撃!!』
シルバニアの号令と共に、魔物軍団が前進した。
ブルームの防御。
オーク兄弟の突破。
そして、魔物軍団の進撃。
戦場が、少しずつ押し返され始める……
『ふふっ……』
だが、ローズ・デモニカは笑っていた。
『いいわ……もっと咲きなさい』
その瞬間――
ズズズズズズズ……
別荘全体が、不気味に脈動した。
「えっ……?」
安祐美の顔が強張る。
次の瞬間――
ドバァァァァァァァッ!!
別荘の壁を突き破り、
超巨大な〝悪魔の薔薇〝が姿を現した――




