第四章 9話 天界フルーツの届け先 その3
「まったく、も〜〜っ……私より、自己中な人?!」
「だいたいねぇ……」
エリカが、怪しい果実をジト目で見つめる。
「こんな変な物……そんな簡単に食べれるわけ――」
その時だった。
「……うんっ?」
エリカの動きが止まる。
「……なんか」
「美味しそうな気が……?」
「うわぁぁぁっ!!」
セルが、頭を抱えて叫んだ。
「始まったのだぁーーっ!!」
「フルーツの洗脳が始まったのだーーっ!!」
『えっ!?』
パルミアが、ぱあっと表情を輝かせる。
『おめでとうっ♪』
『それって、すごい事よ!?』
『選ばれたのねっ!!』
「何が、おめでとうなのよっ!!」
安祐美が、思わずツッコんだ。
「エリカちゃんっ!よく見るのよ!?」
「それ、本当に食べ物っぽい!?」
「色を見れば、危険だって分かるでしょ!?」
『ええ〜っ?』
パルミアが、不思議そうに首を傾げる。
『でも、アユミも食べたじゃない?』
「あっ……!」
安祐美の表情が固まる。
『しかも、皮ごとモシャモシャ〜って♪』
「パルミアぁぁぁっ!!」
安祐美が、真っ赤になった。
「そっ、それは違うのよっ!!」
「私は、その……なんか気づいたら……!」
「それを洗脳って言うのだっ!!」
「おそろしいのだっ!!」
セルが、涙目で叫ぶ。
しかし――
その間にも。
エリカの視線は、完全に果実へ吸い寄せられていた。
「……なんか」
「すっごく、いい匂い……」
「だからダメなのだぁぁっ!!」
セルが飛びつこうとする。
だが、小さいので届かない。
「返すのだっ!」
「それは危険物なのだっ!!」
「え〜……ちょっとくらい、いいでしょ?」
「ちょっとで済まないのだぁぁぁ!!」
その瞬間。
――パクッ。
「ええぇぇぇぇっ!!?」
安祐美とセルの声が綺麗に重なった。
「食べたぁぁぁっ!!」
「わわわわっ!!」
セルが、その場をぐるぐる回り始める。
一方。
エリカは、普通にモグモグしていた。
パクッ。
モシャ……
パクッ……
「エリカちゃんっ!!」
安祐美が、半泣きで叫ぶ。
「せめて皮は剥いてぇぇっ!!」
「……あっ」
エリカが、ぴたりと止まる。
「そういえば、皮って毒なんだっけ?」
「まっ……いいかっ!」
「今さらなのだぁぁぁぁっ!!」
セルが絶叫した。
そして次の瞬間――
「はっ!?」
セルが、突然何かを思い出す。
「そっ、そうだったのだ!」
「我は忙しいのだっ!」
「うんっ……天界へ帰る用事があったのだ!」
ものすごい勢いで窓へ向かおうとする。
しかし。
ガシッ!!
「どこに行くのよっ!」
安祐美が、真顔でセルを捕獲した。
「離すのだっ!!」
「我はちゃんと止めたのだっ!!」
「責任は果物側にあるのだっ!!」
「うるさいっ!!」
「ひとりで逃げる気でしょ!?」
「だって怖いのだぁぁっ!!」
その時だった。
「うっ……!」
エリカが、突然胸を押さえた。
「エリカちゃん!?」
「始まったのだぁぁぁぁ!!」
セルが涙目で叫ぶ。
「我は止めたのだ……!」
「本当に止めたのだ……!」
『わぁ〜っ♪』
パルミアだけが、妙に楽しそうだった。
『何が起きるのかしらっ♪』
「ううっ……!」
エリカの身体が、小さく震える。
「うっ……ううっ……!」
安祐美が、不安そうに支える。
「エリカちゃんっ!」
そして――
エリカは、ゆっくり顔を上げた。
「ううっ……う・うまいわっ!!」
沈黙。
『キャハハハハハッ!!』
パルミアだけが、大爆笑していた。
セルは、その場へ崩れ落ちる。
「終わったのだ……」
安祐美も、頭を抱えていた。
こうして――
エリカは、果物戦士2号となったのであった
めでたし、めでたし……?
……多分。




