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第三章 2話 サマエルとセル


 それから、アユミは用事で部屋を出ていった……


 そして――


 エリカは、ついに限界がきて眠ってしまった。


 病室には、記憶障害の女性とセルだけが、ぽつりと残されている……


「あっ……あのう……」


 珍しく、セルが緊張した様子で口を開いた。


「なぜ、サマエル様がここへ来られたのですか?」


 女性――サマエルは、静かにセルを見つめる。


「あなたが、役目をちゃんとこなしてなさそうだったから……」


「ええ〜っ!!!」


 セルが飛び上がった。


 しかし、サマエルは小さく微笑む。


「……冗談よ」


「極秘任務……とだけ、言っておきましょうか」


「だから、あなたは余計な事を言わないようにね?」


「は、はいっ……もちろんです!」


 セルは、慌てて最敬礼した。


 そんなセルを見ながら、サマエルはふと思い出したように呟く。


「それと……アユミさんだったかしら?」


「パルムの精霊と同化している人……」


「はっ……はあ……」


 セルの顔色が、一気に悪くなった。


「一応、言っておくけど……」


「天界の物を、無許可で持ち出した者は――極刑なのは知ってる?」


「えっ……ええ〜っ!!!」


 今度こそ、セルは本気で青ざめた。


 サマエルは、そんな反応を楽しむように微笑む。


「まあ……ばれたら、の話だけどね♪」


 セルは、まるで死刑宣告を受けたような顔になっていた。


「くれぐれも……余計な事はしないようにね?」


「あ、あの……私の処分は……?」


「そうねぇ……」


 サマエルは、少し考えるように視線を逸らした。


「私は、時々……物覚えが悪くなるから♪」


「わかったわね?」


「もっ、もちろんですっ!」


 セルは、再び勢いよく最敬礼する。


 その時――


 病室の扉が開いた。


「ただいま〜……って、あれ?」


 戻ってきたアユミが、不思議そうに目を丸くする。


「あなた……セルが見えるの?」


「えっ……ああ、この天使さんですか?」


 サマエルは、きょとんとした表情を浮かべた。


「ええ、見えますけど……」


「なぜ、ここに天使さんがいるんですか?」


「ああ……それは私もよく知らないわね!」


 アユミは、あっさりと言った。


「っていうか、あなた……なんでここに来るの?」


「今さら、そんな事を聞くのか! なのだ!」


 セルは、なぜか胸を張る。


「我は、人間界全般の治安を任されている存在なのだ!」


「偉い天使なのだ!」


 見習いだけど……


「ここは、人間界を見張る為の拠点に使ってやっているのだ!」


「えっ……なんか、その割には暇そうにしてるわよね?」


「わっ、私は……ここで色々と重要な考え事をしてるのだっ!」


「へぇ〜っ……偉い方なんですね?」


 サマエルが、柔らかく微笑んだ。


「………………っ!?」


 セルの顔が、一瞬で真っ青になる。


「でっ、では……我は、ちょっと見回りに行くのだっ!」


 そう言うと、セルは慌てて窓から飛び出していった。


(なんか……すごく慌てて出ていったわね?)


 アユミが首をかしげる。


 その時――


『その女性は、誰なんだ?』


 突然、セレグの声が響いた。


「あっ、セレグ!」


「あなた、エリカちゃんが寝てても出てこれるの?」


『まあ……別人格みたいなものだからね』


 セレグは、静かにサマエルを見つめる。


「この人は、私の患者よ!」


「記憶障害で、何も覚えてないんですって」


「必要な検査が終わったら、然るべき施設へ移動してもらう予定なの」


「すみません……」


 サマエルは、少し申し訳なさそうに微笑んだ。


「本来なら名乗るべきなんでしょうけど……名前がわからなくて……」


「あなたは、幽霊さんですか?」


「あっ、この変なのはセレグ!」


「エリカちゃんに取り憑いてるの」


『いや! 霊とか悪霊とかじゃないから!』


『私は、エリカのナイトをしている者だ』


「ナイト……ですか?」


 サマエルは、不思議そうに首を傾げる。


「まあ、害はないから気にしなくていいわ!」


 アユミは軽く言いながら、空いているベッドを指差した。


「それより、しばらくの間だけど……このベッドを使ってね?」





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