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第三章 1話 天界からの訪問者


 今日も、エリカの室は雑然としていた……


 アユミ、パルミア、バルサ、そしてセルが……皆、思い思いの主張を繰り返している。


(まったく……この連中は、ここへ何しに来てるのかしら……)


 エリカは、今日もゆっくりと睡眠をとれそうにはなかった。


 しかし、その中で、セルは妙にソワソワしていた。


 そして、ときおり、パルミアを意味ありげに見つめている。


(う〜ん……これは、どうするべきか……)


(これは、サマエル様に報告すべき案件かもしれないが……)


(でも……パルムの実の事は、報告できないのだ……)


 普段、なにも考えていないものが、悩んでいる姿は目立つ……


「ちょっと! セル!……あなた何を悩んでいるの?」


 エリカに、勘づかれてしまった。


「いやっ、べっ別に……何も悩んでないのだっ!」


「何の事、なのだっ……」


 しかし、目は泳いでいた……


 アユミが即答した。


「私は、わかってるわよ!」


「あなた……私がパルミアを手に入れたのが、悔しいんでしょ?」


『ごめんね! 私はアユミと同化してるから……』


『もう、諦めてよね!』


 パルミアが、どこか済まなそうに答えた。


「だれが、お前なんかほしがるか、なのだっ!」


「完璧な我に、補助精霊など、必要ないのだ!」


『なんですって! 失礼なっ、見習い天使のくせにっ!』


「ひっどい! 私のパルミアになんて事を言ってるの!」


「まあ……皆さん、仲良くコーヒーでもどうですか?」


 バルサは、どこから取り出したのか、高級そうなカップを優雅に傾けていた。


(もう……うるさくて、寝られない……)


 エリカが、げんなりとした表情を浮かべた、その時――


 ピピッ――


 突然、アユミの端末へ緊急コールが入る。


「あっ! 仕事だっ!」


(いや……私の事も仕事だと思うけど……)


「ちょっと、行くわね!」


「パルミア!……私の中に入って!」


『りよ〜かい! アユミ!』


 パルミアがアユミの中へ入ったところで、アユミは慌ただしく室を出ていった……


 それから、しばらくして――


 病室の扉が、静かに開いた。


「失礼しま〜す……」


 戻ってきたアユミの声は、どこか困ったような響きを含んでいた。


 その後ろには、一人の女性が立っている。


 長い銀色の髪。


 どこか幻想的な雰囲気をまとった、美しい女性だった。


 しかし、その表情はどこかぼんやりとしている……


 エリカは、思わず首をかしげた。


「……誰?」


 アユミは、どこか済まなそうに説明した。


「この女性が、さっき搬送されてきた人なの」


「どうやら、記憶障害みたいでね……」


「しかも、私が担当になっちゃって……」


 そう言いながら、アユミは苦笑する。


「悪いんだけど、しばらくここで同室にしてもいいかしら?」


「それは、別に構わないけど……」


 エリカは、女性の顔を見つめながら答えた。


「他に、空き部屋はなかったの?」


「いや、それがねぇ……」


 アユミは、微妙に視線をそらした。


「エリカちゃんと一緒の方が、私の都合がいいというか……」


(あっ……この人、面倒くさいんだ……)


 エリカは、なんとなく察した。


 しかし、その時だった――


 部屋の隅で固まっていたセルが、突然、女性を指差した。


「えっ……」


 その顔から、みるみる血の気が引いてゆく……


「ええぇぇぇーーーっ!!!?」




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