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第二章 5話 エリカの病室はカオス状態?


あの一件のあと――


エリカの病室は、なぜか“溜まり場”になっていた。


「……あのね?」


エリカが、こめかみを押さえながら言う。


「ここは、あなた達の溜まり場じゃないんだから!」


ベッドの上で、完全に不機嫌な顔。


その視線の先には――


当然のように椅子に座っている、セルとバルサ。


そして、ベッド脇でくつろいでいる安祐美。


完全に、いつもの風景になりつつあった。


「なんで、普通に集まるの?」


「しかも、あなた!」


エリカは、バルサを指差す。


「マイカップとか、コーヒーメーカーとか……なんでここに持ってきてるのよ!?」


部屋の隅には、小型のコーヒーメーカー。


そして、やたら上品なカップ。


どう考えても、病室の備品ではない。


「何、考えてるの?」


「あなた、敵だよね?」


バルサは、落ち着いた動作でカップを手に取る。


「敵かどうかは、その時の状況が決めるものでしょう?」


一口飲む。


「このティータイムに、敵など存在しませんよ」


「いや、あるでしょ普通に!」


エリカが即ツッコむ。


だが、誰も気にしない。


空気が、完全におかしい。


「それよりも――」


エリカは、安祐美へ視線を向けた。


「安祐美さんは、バカセルのせいで変な物食べさせられたんでしょ?」


「大丈夫?食中毒とか」


セルがピクリと反応する。


「“バカセル”とは何、なのだ!」


だが、エリカは完全に無視した。


「う〜ん……」


安祐美は、軽く首を傾げる。


「そこらへんは大丈夫そうなんだけど……」


自分の手を、じっと見つめる。


「なんか、体調がイマイチなのよね……」


「ほら見ろなのだ!」


セルが立ち上がる。


「我は、大事なデザートをこのオンナに食べられたのだ!」


「被害者なのだ!」


「しかも、お前に暴力まで振るわれたのだ!」


「完全なる被害者!」


エリカは、一切反応しなかった。


完全スルーである。


「セレグ!」


エリカが、真剣な顔になる。


「安祐美さんは、大丈夫かな?」


『う〜ん……』


低い声が、静かに返る。


『何か違和感はあるな……』


『はっきりとは認識できないが……』


その言葉に、わずかに空気が変わる。


だが――


「まあ……なるようになるでしょ!」


安祐美は、あっさりと言った。


「それに、結構美味しかったし……」


にこりと笑う。


「もう、セルを怒ってないよ!」


「だから!!!」


セルが机を叩く。


「我は被害者なのだ!!!」


「弁護人を要求する!」


バルサが、ゆっくりと顔を上げた。


「私は、弁護士の資格も持っていますよ」


にこやかな笑み。


「ただし――依頼料は、かなり高いですがね?」


セルの動きが止まる。


「……ほう」


真剣な顔になる。


「天界のコーヒー豆で、どうなのだ……?」


その一言に――


バルサの目が、わずかに細くなった。


「……興味深い」


ほんの少しだけ、空気が変わる。


「続けてください」


完全に、交渉に入っている。


「む……!」


セルは腕を組み、考え込む。


その横で――


ふわり、と甘い香りが広がった。


「……ん?」


エリカが顔を上げる。


「今、なんか甘くなかった?」


「え?そう?」


安祐美は、特に気にしていない様子。


だが――


その手元で。


ほんの一瞬だけ、淡い光が漏れた。


バルサの視線が、そこに向く。


「……なるほど」


小さく呟く。


「単なる毒ではない、か……」


セレグは、何も言わない。


ただ、静かに安祐美を見ていた。


セルは気づいていない。


エリカも、まだ気づいていない。


だが――


何かが、確実に動き始めていた。


それでも――


この病室の空気は変わらない。


「で、弁護料の話なのだ――」


「話を戻すな!」


エリカのツッコミが響く。


カオスな空間。


だが、その裏側で――


静かに、何かが進行していた。




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