第4話:空間収納の腕輪
数カ月が経過し、俺は新たな取り組みをしていた。
それは一カ月ほど前、魔境でとある能力を持った魔物と遭遇したことから始まった。
その魔物は時空間系統の魔法を扱っており、討伐には少々苦戦した。
空間を操り背後から魔法を放ったり、俺が投げた石を展開した空間に飛ばすなど厄介な相手だった。
まあ、隙をついて『血錬式貫杭機構』で倒しけど。
お陰で時空間系統の新素材が沢山手に入ってウハウハである。
素材には魔物の保有能力が不随することがあり、高ランクの魔物ほど確率が高くなる。
そして、今回の魔物はSランク以上の力を有しており、素材に能力が宿っているのは確実だ。
そこで俺は、この素材を使ってある問題を片付けようと考えていた。
工房の地下に存在する、巨大な武具保管庫のことである。
大きさとしてはかなりの広さがあり、魔剣や聖剣、防具や魔道具などが所狭しと存在している。
魔道具と言いつつも、鍛冶で作っているために『防具』扱いだ。
脱線したが、要は保管庫から溢れそうな武具を、空間に保管しようと考えている。
ゲームなどでよく出てくる『アイテムボックス』を作ろうとしているのだ。
そうすれば、いつでも武器や防具の出し入れが可能となる。
「とはいえ、何を作るかだ」
短剣タイプにすると、失くした場合が問題だし、一々短剣を出し入れするのは面倒だ。
なら、意志ひとつで発動するアクセサリー系が一番だろう。
「とはいえ、アクセサリーは数回しか作ったことがないんだよなぁ……」
世話になっているミーナや村の人にお守りとして作った程度で、圧倒的に作成経験が少ない。
加えて、俺の欲しい『アイテムボックス』の機能があるアクセサリーが作れるかが問題だ。
「なるようになる、か……」
俺は金槌を握り、炉と向かい合う。
そのまま素材を熱し、叩き、他の素材とも混ぜてまた叩く。
それから数時間して完成した。
外観はシンプルな腕輪。
腕輪にしたのは、どこかで落とすという心配がないから。
俺は腕輪を手に付け、魔力を通すと、目の前の空間に数十センチほどの黒い点が現れた。
「まずは成功か?」
俺は近くに剣があったので、それを現れた黒い点へと突っ込んだ。
暴発するということはなく、剣は黒い点、空間に消えていった。
一度閉じて、もう一度魔力を通して空間を開く。
ここまでは成功だが……
「こりゃあ失敗、だな……」
恐る恐る手を入れて取り出したのは――刃・柄・芯材とバラバラになったものだった。
入れた物が分解される保管庫は、どう考えても失敗作だった。
ただ、これはこれで使い道がある。
「魔物とかの死体を入れたら、素材として分解されるんじゃ……もしそうだったら、思わぬ副産物だな」
とはいえ、失敗は失敗。
素材の選別からし直さないとダメなようだ。
それからさらに月日が経った。
俺はついに、『アイテムボックス』能力の付いた腕輪を作ることに成功した。
失くしたら嫌だなとか思いながら作っていたからなのか、帰属能力と所有者固定も付随していた。
つまり、失くしたら返って来るし、俺以外開くことができないとうことだ。
「もしかしたら、製作者の意思が反映されるのかもしれないな」
これは要検証だな。
それともう一つ、朗報がある。
失敗作だと思われていた腕輪だが、どうやら収納した魔物も素材として分解されるようだった。
「これでさらに効率が良くなるな。そうだな『解体の腕輪』とでも名前を付けるか」
それからというもの、俺の生活は再び素材を集め、武器を作り、試し斬り、改良、また狩るという循環に戻った。
俺は魔境へ足を運び、手頃な魔物を見つけては仕留めていく。
以前なら解体作業に時間を取られていたが、今は違う。
「……よし」
仕留めた魔物の死体へ腕輪を向け、魔力を流と空間が開き、そのまま放り込む。
空間内では骨、肉、皮、魔石等に分解される。
「やっぱり便利だな、これ」
『解体の腕輪』は、もはや解体という工程そのものを過去のものにしていた。
そして工房へ戻れば、そのまま鍛造に入る。
分解された素材は質がいい。余計な不純物が抜けているのか、熱の通りも違うし、打感も明らかに均一だ。まるで最初から鍛えられるために存在していたかのように、素直に応えてくる。
「いいな……この感じ」
金槌を振るうたびに、素材が意図通りに変化していく。
歪みも少なく、狙った特性を乗せやすい。
――完成。
新しく打ち上げた武器を手に取り、今度は再び魔境へ向かう。
適当な魔物を見つけ、間合いを詰める。
「試し斬りの相手になってくれや」
一閃。
手応えを確かめる。切断面の滑らかさ、抵抗、魔力の通り。
足りない部分があれば、その場で修正点を頭の中に叩き込む。
「……少し重いか。いや、魔力の流れが鈍いな」
倒した魔物はそのまま腕輪で回収し、工房に戻る。
打ち直し、また狩る。
改良し、また試す。
その繰り返し。
気がつけば、武器の完成度は目に見えて上がっていた。
以前なら数日かけていた調整も、今は一日のうちに数度は試せる。
「効率が段違いだな……」
呟きながら、打ち上げたばかりの刃を光にかざす。
金属の中に、わずかに異質な揺らぎが見えた。
今回使ったのは、あの時空間系の魔物から得た素材だ。
分解された状態でも、その性質は確かに残っている。
「……伸びてる、のか?」
刃先を軽く振る。
空気を裂く感触が、ほんの僅かに遅れて伝わってくる。
距離が、ズレている。
「面白いな」
思わず口元が緩む。
素材を分解し、性質を抽出し、再構築する。
その過程で、元の魔物が持っていた能力を部品として扱える。
「ふむ。武器に能力を組み込めるってことか」
そうなれば話は早い。
ただ強い武器を作るだけじゃない。
用途に応じて、機能を設計する。
斬るための刃。
貫くための杭。
歪めるための刃。
選び、混ぜ、叩き、仕上げる。
「……まだまだ色々やれるな」
炉の熱は落ちることがない。
金槌を握る手も、止まることはない。
狩って、打ち、試し、また打つ。
その果てに、どこまで行けるのか。
「試してやるさ」
俺は再び炉に向き直り、新たな素材を掴んだ。
「クロムさん。いますか――って、また鍛冶してますね!? 今日はしないって言ったじゃないですか!」
「げっ、ミーナ!? これはその……」
「言い訳無用です!」
俺はミーナに引きずらるようにして連れていかれるのだった。
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