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転生鍛冶師の武器無双~自作の武器でSランクの魔物を相手に試し斬りしていたら、何故か最前線で送られることになったんだが~  作者: WING
第3部

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第17話:鴨がネギを背負ってくる

 ――正直に言おう。


 目の前に広がる光景は、普通の人間ならば絶望と断じて何らおかしくない類のものであり、むしろ悲鳴を上げて逃げ出さないだけでも賞賛されるべき状況。


 だが――俺にとっては、どうにもそうは見えなかった。


「……いや、笑うなって方が無理だろこれ」


 視界いっぱいに広がる魔物の群れ、その大半は牙と爪を剥き出しにした低級種であり、ところどころに明らかに格の違うA級の個体が混ざっている。

 全体として見れば質より量で押し潰す典型的な構成であり、戦術としては極めて単純、だがそれゆえに対処を誤れば壊滅を招く厄介極まりない代物だ。


 ――そして。


「素材の山じゃねぇか……!」


 口元が、どうしても緩む。

 いやだって仕方ないだろ、これ全部が武器の素材になるんだぞ?


 爪、牙、骨、皮、魔石、場合によっては内臓まで含めて一切合切が利用価値のある資源であり、それが自分から突っ込んできてくれるとか、もはやボーナスタイム以外の何物でもない。


「戦争? 知らん知らん、今は収穫祭だ」


 軽口を叩きながら、俺は腕輪へと魔力を流し込む。

 開かれる空間、その奥に眠る無数の武器たちの中から、一本を掴み取る。


「まずは……これでいくか」


 取り出したのは、試作段階の魔剣。

 刀身に複雑な魔力回路を刻み込み、斬撃の際に内部で魔力を圧縮・放出することで切断力を底上げするタイプの代物であり、単純な強度と鋭利さだけに頼らない斬るための機構を組み込んだ一本だ。


「――行くぞ」


 踏み込む。

 一瞬で間合いを詰め、振るう。

 それだけで、前方にいた魔物の群れが、まとめて裂けた。


「……うん、いいなこれ」


 手応えを確かめながら、次へ、次へと動く。

 斬る、斬る、斬る。

 ただそれだけの単純作業を、高速で繰り返す。

 魔物の血が飛び散り、肉片が舞い、骨が砕ける音が連続する中で、俺の思考は妙に冷静で、むしろ「どの部位がどの素材として使えるか」なんてことを考えているあたり、自分でもだいぶズレている自覚はある。


 視線を巡らせる。


「しかし、数が多すぎるな」


 いくら斬っても、減っている実感が薄い。

 個体の強さは問題ないが、物量が純粋に処理速度を上回っている。


「さすがにこれは効率が悪いか」


 魔剣を戻し、次を選ぶ。


「じゃあ――面制圧といこうか」


 取り出したのは、五発装填式の回転機構を持つ異形の兵器。

 前世で見たM32というグレネードランチャーを見よう見真似で作ってみた。


 名前は――『試作型拡散爆裂回転砲(インサイド・バースト)』。


「名前は長いが、要するに――」


 狙いを定める。


「まとめて吹き飛べってことだ」


 引き金を引く。

 射出された弾が空中で分解し、無数の小型爆裂弾へと変化しながら前方へと散布された。


 次の瞬間、連鎖する内部爆発。

 魔物の肉体に食い込んだ弾が、内側から弾ける。

 爆ぜる音が連続し、肉と血と破片が撒き散らされる。


「おお、これは……」


 想像以上の威力に思わず感心する。


「いいな、想定以上だ」


 撃ってまた撃つ。

 装填、発射、爆裂。

 その一連の動作を、呼吸するように繰り返す。

 跳躍し、空中で身体を回転させながら射撃し、着地と同時に次弾を撃ち込む。


「……あれ、これ楽しいな?」


 気づけば、完全に動きが軽くなっていた。

 戦闘というより、もはや演武に近い。


「ただ――」


 数発撃ったところで、違和感に気づく。


「食い込みが甘いな」


 硬い個体には弾が弾かれている。

 さらに、地面に当たった弾が遅延爆発を起こし、予測しないタイミングで爆ぜる。


「……うん、欠点もちゃんとある」


 そして、銃身がわずかに歪む。

 熱と圧力、そして魔力負荷による変形。


「撃ちすぎるとこうなる、と。耐久性はまだ改善の余地ありだな」


 カチ、と空転音。


「予備残弾なし。弾切れか」


 躊躇なく『収納の腕輪』へと戻す。

 そして、次を引き抜く。


「……で、問題児のお出ましだ」


 現れたのは、デヴォウラー戦で使った呪われた大剣。


 ――『血鍛喰刃(ブラッド・イーター)』。


 刃が、裂ける。

 まるで口のように開き、ぎちり、と不快な音を立てる。

 そして「ギヂィ、ギヂィ」と呻く。

 明らかに、生きている。


「……やっぱ廃棄すべきだったか?」


 ぼそりと呟く。

 いや、強化の方向性を間違えた自覚はある。

 最初に血肉を混ぜて打った時点で嫌な予感はしていたし、その後さらに強化した結果、完全に〝意思を持った武器〟になってしまった。


「まあいい」


 迫る魔物を前に、構える。


「黙らせればいいからな」


 振るった瞬間、大剣が魔物に噛みついた。

 胴体を、斬るのではなく喰らう。

 肉を引き裂き、骨を砕き、血と魔力を吸い上げる。


「……うわ、相変わらずエグいな」


 だがその分、力が返ってくる。

 身体の内側に、魔力が流れ込む。


「制御できてるうちは問題なし、と」


 次々と振るう。

 喰らい、奪い、砕く。

 魔物の群れが、目に見えて削れていく。

 だが同時に――


「……腹減ったな」


 じわり、と来る飢餓感。

 精神を侵食する、喰らえという衝動。


「うるせぇぞ。製作者は俺だ。次に逆らったら廃棄するぞ」


 即座に強い意志でねじ伏せ、さらに振るう。

 裂ける刃が、笑うように開く。

 その度に、魔物が消える。


「――ははっ」


 気づけば、笑っていた。


「いいじゃねぇか」


 目の前の敵。

 手の中の武器。

 積み上がる素材。


「全部まとめて――相手してやるよ」


 再び踏み込む。

 魔物の群れの中へと、一直線に。



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