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転生鍛冶師の武器無双~自作の武器でSランクの魔物を相手に試し斬りしていたら、何故か最前線で送られることになったんだが~  作者: WING
第2部

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第10話:契約成立

 ――さて。


 王女様直々に「王家と王国が保有する希少素材を提供する」などという、〈鍛冶師〉にとっては夢どころか幻覚みたいな条件を提示されたわけだが、俺はその言葉を額面通りに受け取るほど素直な人間でもなければ、都合のいい話に飛びついて後悔するほど間抜けでもない。


 むしろ、だからこそ考える。

 ……この条件、どういう裏がある?


 俺は頬杖をつきながら、目の前のエリシアをじっと観察するように見据えつつ、頭の中で状況を一つ一つ分解していく。


 まず前提として、王家や国が管理する資源というのは、当然ながら個人の一存でどうこうできる代物ではないはずであり、たとえ目の前にいるのが第二王女であったとしても、無制限に提供できるなどという話は普通に考えればあり得ない。


 つまり――


「……それ、エリシアの独断で決められる話じゃないだろ」


 俺がそう言うと、エリシアはほんの僅かに目を細めた。


「さすがに鋭いな」

「まあな。鍛冶も交渉も、素材の見極めが命なんでね」


 まあ、素材なんて魔境で調達しているけど。

 肩を竦めながらも、言葉を続ける。


「王家の倉庫なんて、国王の許可なしに開けられるもんじゃないし、流通管理してる素材だって同じだろ。つまりそれを提示してるってことは――」


 一拍置く。

 エリシアは王女であり、第三騎士団を率いる騎士団長。そこから導き出されることは一つ。


「俺のことは上に、国王にまで話通ってるな?」


 沈黙が一瞬落ちる。

 その沈黙が、答えだった。


「……否定はしない」

「だろうな」


 まあ、あの場であれだけ派手にやれば、報告が上がらない方がおかしい。

 むしろ半月でこの程度なら遅いくらいだが、俺を引き込める条件を探していたのだろう。


「つまり俺は今、国家案件ってわけだ」

「その認識で間違っていない」


 なるほどねぇ。

 俺は小さく息を吐きながら、椅子に深く背を預ける。

 面倒くさいことになってきたが、同時にこれはチャンスでもある。

 個人相手の交渉じゃない。

 国が相手だ。

 なら、引き出せるものは――全部引き出す。


「で、その希少素材ってのは、具体的にどの辺まで出てくるんだ?」


 俺がそう促すと、エリシアはわずかに顎を引き、淡々と列挙し始めた。


「高純度の魔鋼石、竜種の鱗および骨、古代遺跡から発掘された未解析金属、高純度の魔力結晶……他にも多くがある」


 ……おいおい。

 内心で思わず口笛を吹きそうになるのを抑える。

 どれもこれも、市場に出れば国家が傾くレベルの代物ばかりだ。

 だが、それだけでは終わらなかった。


「加えて――伝説級の素材も一部存在する」

「……例えば?」


 わざと平静を装って聞き返す。


「神獣の遺骸の一部、原初鉱石、封印指定の素材などだ」


 ――ああ、ダメだ。

 口元が勝手に緩む。


 抑えろ。まだだ。ここで食いついたら負けだ。

 だが脳内ではすでに、いくつもの設計図が勝手に展開されていく。

 原初鉱石に魔力結晶を組み合わせて、竜骨で補強すれば――いや、神獣素材を芯に使えばさらに――……


 ……やばいな。

 普通に世界を壊せる武器ができるぞ、これ。


「……悪くない」


 ぽつりと漏れた本音に、エリシアの目がわずかに細められる。

 完全に食いついたと思われたな。

 まあ否定はしない。

 だが――


「つまり」


 俺はゆっくりと体を起こし、真正面からエリシアを見据える。


「王家と国が管理してる素材は、全部俺が好きに使っていいってことか?」


 わざと極端に言う。

 当然、そのまま通るとは思っていない。

 エリシアは一瞬だけ沈黙し、やがて静かに頷いた。


「原則としては、そうだ」


 ほう?


 エリシアは「ただし」と言葉を続ける。


「唯一無二の素材や、国家運用に関わるものについては、その都度協議になる」


 なるほど。

 完全フリーではない、と。

 ……だが。


「まあ、そこは当然か」


 あっさりと引き下がる。


「……いいのか?」

「国を揺るがす代物を個人の裁量で使えてしまう。今提示された条件が現実的なラインだろ」


 これは本音だ。

 最初から完璧を取りに行くのは三流のやり方だ。

 まずは土台を固め、その上で――削り、すべてをいただく。


「で?」


 俺は指を軽く組む。


「条件はそれだけか?」

「……何が言いたい?」


 エリシアの視線が鋭くなる。

 いい目だ。だが、まだ甘い。


「俺を囲い込みたいんだろ?」


 あえて直球で言う。


「だったらその程度じゃ足りない」

「……」

「言っとくけどな」


 軽く肩を竦める。


「別に俺、王国にこだわる理由ないからな?」


 その場の空気が、わずかに張り詰める。


「帝国でもどこでも、いい条件出されれば普通にそっち行くぞ」


 嘘ではない。

 むしろ合理的な判断だ。


「……それは脅しのつもりか?」

「脅し? 俺の持つ力が欲しいから交渉に来たんだろう?」


 即答する。


「言っとくが、俺は〈鍛冶師〉だ。いい素材と環境をくれるところに行く。それだけの話だろ?」


 沈黙。

 ミーナが隣で「え、ええ……お、王女相手になんてことを」みたいな顔してるのが視界の端に映るが、気にしない。

 騎士連中も完全に固まっている。


 まあそうだろうな。

 王女相手にこんな話し方する奴、普通いない。

 だが――


「……面白い」


 ふっと、エリシアが小さく笑った。


「貴族どころか、王族相手にここまで対等に条件を突きつけてくるとはな」

「対等じゃないと交渉にならないだろ?」

「確かに」


 その目に、明確な興味が宿る。


「いいだろう、続けろ」


 許可が出た。

 なら遠慮はいらない。


「まず素材に関しては、優先使用権は俺に寄越せ。協議とか言って後回しにされるのはごめんだ」

「……検討可能だ」

「あと、加工・保管・運用に関する裁量も全部俺持ちだ。口出しは最低限。じゃないと帝国に亡命する」

「それは――」

「無理なら交渉終了でいいぞ?」


 間髪入れずに畳みかける。

 主導権は渡さない。


「……わかった、認めよう」


 よし。


「あと俺の生活には干渉するな。徴兵も強制任務もなし。呼ばれたら〝気が向いたら行く〟くらいの距離感な」

「それは軍としては――」

「じゃあ帝国行くわ」

「待て!」


 即止められた。

 よしよし。

 いい感じに焦ってるな。

 そこから先は、ほとんど消耗戦だった。

 条件を積み上げ、削り、また積み上げる。


 エリシアも一歩も引かず、だが確実にこちらの意図を読み取りながら最適解を探ってくる。

 王女ゆえか、頭が良い。

 だからこそ――やりやすい。

 そして。

 長い、長い交渉の末に。


「……わかった」


 エリシアが、静かに頷いた。


「提示された条件、すべて受け入れる」


 その言葉に、空気が止まる。


「え? だ、団長……!?」

「本気ですか……!?」


 背後の騎士たちがざわめく。

 ミーナに至っては、完全に放心状態だ。

 まあ無理もない。

 国家規模の資源と権限を、ほぼ一個人に渡したようなもんだからな。


「……太っ腹だな。まあ、予想通り国王から交渉に関するすべての権限をもらっていたようだな」


 俺は小さく笑う。


「そこまで見破られていたか……」

「個人が決められるような内容じゃない。簡単なことだ」

「私の完敗だな。しかし、クロムそれだけの価値があると判断した」


 迷いのない答えだった。

 なるほど。そこまで言うなら。


「契約成立、だな」


 俺は立ち上がりながら、軽く肩を回す。


「末永くよろしく頼むぜ、王女様」


 にやりと笑った。

 その瞬間、背後でミーナが小さく呟いた。


「……クロムさん、なんかとんでもないことしてません……?」


 ……まあな。

 俺もちょっとそう思ってる。



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