第6四半期「太陽系合同説明会」
起きるとジョオはもういなかった。リョウはとりあえずレイカに電話した。
――ばかじゃないの!? きのう着いたならきのう連絡いれなさいよ! ホウレンソウもまともにできないとか、ひととしてありえない! だからそんなばかな仕事しかできないのよ、ごみ! 無能!
どうすればいいかって? それを考えるのもあんたの仕事でしょ? ほんっとにばか。低能。ぐず。うすのろ。トンチキの、おたんちん――
とりあえずコンビニに行くことにした。さいわい徒歩三分。
信号を待っているうちに気がかわり、ちょっと道路ぞいを歩いてみると公園があった。
噴水もある。ホットドッグ屋さんもいる。
ベンチもあって、とろ~りチーズのをたべていると電気鳩たちがよってきた。
にせものの日差しがあたたかい。
部屋にもどって、テレビをつけると水星のバラエティ番組がやっていた。
「ぶっ、――ははは。あ! チョウスケ! 後ろ、後ろ!」
ひるねして、へんな夢をみた。
その夢のことを考えていたらジョオがきて、「うっし」といって、「行くか」といって、「おら身だしなみ」といって、「早くしろ」といって、とりあえず寝ぐせだけ直してリョウはでることになった。
降下中のエレベーターでジョオはいう。
「ぜんっぜんだめだな、どの会社も」
七階、六階、五階。
「本質わかってねえ。古くさい価値観にとらわれちまってる」
四階でひとが乗ってきた。就活生二名。ジョオはだまった。
片方がいう、
「どうする? オファー」
もう片方がいう、
「蹴っちゃおっかな」
ロビー階につくと、ドア脇のリョウをおしのけてジョオは華麗に「開く」ボタンを押下した。就活生たちはちょっとけげんな顔をして、お辞儀して出ていった。
ジョオはいった。
「気づかいが大事だからさ」
外にでる。
懇親会場がちかづいてくる。
リョウはとつぜん、
「いたたたたた……」
としゃがみこんだ。
ジョオは立ったまま、「ふうっ」と息を吐いてから、
「どうした。だいじょうぶか」
「お」
とリョウはいった。お腹が――。
ホテルへひきかえしていくリョウの背中をみて、ジョオは、こんなことをおもった。
――宇宙には二種類の人間がいる。努力できる人間と、そうじゃないやつと。前者は成功をつかみとる。後者は負け犬のまま。
ひととしてレベルがちがうもの同士は、もういっしょにはいられない。それは、ひどくせつない宇宙の真理だ!
――だが、しかたがねえ。
ジョオは、ドアを、あける。
木星料理特有の、香ばしいガーリックのにおい。差しだされる食前酒。
まずは、ぐいっと一気飲み。
ホールには就活生だけでなく各界の第一線で活躍する現役のビジネスパーソンたち。
とんでもねえ大ものたちもいる――Tさん。IT企業の経営者。筋トレもしている。
Hさん。複合施設のプロデューサー。金歯もある。
Eさん。宇宙有数の大富豪。人身売買もやっている。
すげえ、まじやべえ、まじハンパねえ怪物級のばけものぞろいだ――相手にとって、不足なし!
さあジョオ劇場の開幕だ!
まずはかる~く、自虐ネタ。でるわ、でるわの貧乏エピソード。就活生たちから「おもろいやつ」との評価をいただいた。
名刺、交換しまくる。肩、組みまくる。バーベキュー、企画しまくる。
みんなサイコーにいいやつでムードメーカーでハイセンスで個性的で主体的で積極的で知的で行動的でコミュ力おばけで向上心やばくて深い話もできる、いい意味でクレイジーな同志たちだ。
おつぎは一流たち。
ジョオはメモ帳をもって傾聴につとめたがやばい、まじやばい、一流は教養も感性もユーモアも頭の回転もまじぶっ飛んでいておれでもついていくのに精いっぱいだ、億稼ぐ男たちはやっぱ見えている景色がちがいすぎる。歯並びもいい。
金言がぼんぼんとびだす。
――けっきょく最後は、人間力。
――二十代はとにかく自己投資。
――ビジネスパーソンこそ、古典を読め……。
革命がおきた。
まちがいなく「伝説の一夜」とよばれるにふさわしい会だった。
気づきがやばい。学びもやばい。
帰り道ジョオは脳内で昼間じぶんをやんわりと拒絶した能なし採用担当者どもの糾弾集会をひらいた。
部屋にもどるとリョウはねていた。
ジョオはさっそく未来日記を書きはじめた。




