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第28四半期「宇宙たち」

ジョオは乗った。冥王星行きの船に乗った。じぶんの意志で乗った。ジェイドの命令で乗った。仲間たちも乗った。意気揚々と乗った。







リョウは「AKUBI」を観はじめる。


ブイログ星の主婦がいる。ガクレキ星の塾講師がいる。ブレイキング星の格闘家がいる。ダイパン星のプロゲーマーがいる。ナリキン星の経営者がいる。モノモース星の評論家がいる。バクロー星の情報通がいる。


ホーロー星のバックパッカーがいる。



——わたくしいま、コッフィン星という星にきております。


この星はですね、星ぜんたいがでっかい棺桶であり、古墳なんです。


見てください。地表にびっしりなにか文字のようなものが刻みこまれておりますね。


そうです。これ、文字なんです。死者たちの人生の記録なんです。


これまでに死んだすべてのこの星のひとたちが、どういう名前で、いついつが生年月日で、血液型はなにで、好物はこれで、どんな性格で、どういう生きかたをして、どんなふうに死んでいったか――と、いうことが、どこまでもこまかく、記録されているんです。


これを踏みつけることは、もちろん冒瀆にあたりますから、これ以上先へはすすめません。


コッフィン星人たちは、そういう冒瀆をせずにすむために、進化の過程で両足をなくし、しかも、死者の事績をつねに一望していられるのなら、それは、なんといいますかとてもすてきなことでしょうから、あのあたり、わたくしの、ずっと上空のあの雲のあたりを、ふわふわとただよいつづけるようになったんです。


それで、地表のこまかい文字を読む際に、ひとのまなざしをさえぎらずにすむよう、みんな透明になりました。透明人間の生涯なんてたかが知れているわけですから、事績の記録も短文ですみます。一石二鳥です。


こういうわけでコッフィン星人は、いまでは、ただ膨大な死者たちの生きざまを解読することだけに一生をついやしているというわけなんです。









ジョオは行く。冥王星へ行く。逃げだしたい。逃げだしたくない。負けたくない。ジョオは行く。どこでもいいから行きたいのだ。どこに行ったってしかたがない。とにかく遠くへ行きたいのだ。








ハイシン星のゲーム実況者がいる。キョーヨー星の元教師がいる。エンジョー星の国会議員がいる。オーグイ星のフードファイターがいる。オモシロ星の大学生がいる。ウンチク星の雑学王がいる。スピリチュアル星の占い師がいる。






「お疲れさまです」




画面にむかって、リョウはぽつりとつぶやいた。












ジョオは行く。冥王星へ行く。どこでもいいから行きたいのだ。冥王星へ行きたいのだ。じぶんの意志で乗ったのだ。ジェイドの命令で乗ったのだ。














メーワク星のやんちゃものがいる。ホーゲン星の落語家がいる。ハテンコー星のお笑い芸人がいる。ラーメン星の会社員がいる。アルコール星のグラビアアイドルがいる。アウトドア星の料理人がいる。ロンパー星の起業家がいる。












ジョオは行く。冥王星へ行きたいのだ。逃げだしたい。じぶんの意志で乗ったのだ。どこでもいいから行きたいのだ。逃げたくない。負けたくない。ジェイドの命令で乗ったのだ。逃げだしたい。冥王星へ行きたいのだ。












メンタル星のカウンセラーがいる。イロコイ星のホストがいる。ヒーテミタ星のギタリストがいる。トシデンセツ星の元ジャーナリストがいる。ローゴノタノシミ星のおばあさんがいる。ツヅキハユウリョウチャンネルデ星の詐欺師がいる。











ジョオは行く。


トイレへ行く。


トイレへ行きたいのだ。逃げだしたいのだ。どこにも行きたくない。ジェイドの命令で乗ったのだ――。








「隊長!」

ジョオは挙手した。

「お腹が、いたいです!」


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