第2四半期「いたずら屋(インシデンター)」
ジョオはメシを食う、リョウも食う、反重力ちゃぶ台で食う、キューブ型のテレビがびーびーわめく。
ジョオはチョップする、テレビは持ちなおす、タタミをゴキブリがはう、リョウの箸がつかまえる、割れ窓の外にほうりだす。
テレビはこんなことをいっている、
――みなさま、こ・ち・ら!!! ご覧ください!!!!!! なんとこの宇宙船、オール・インクルーシブに!!!!! なって、いるんです!!!!!!!!!!!!!!!
この船で、太陽系合同説明会へむかわれる就活生さんたちは――。
ジョオの舌打ちが炸裂、チャンネルを変える、しかしどの局もその話題で持ちきりだ。
「うっぜえなあ」
テレ地だけはおもしろい。初地球旅行の火星人一家が百均のクオリティに感激したりトイレのきれいさに衝撃をうけたりしている、
――いま、地球のアニメが宇宙で大人気!
ふたりして「にひひ」。
メシが終わりじゃんけんをしてリョウが皿を洗いそろって仕事の準備にかかる。
リュックにつめる、トンカチ、スプレー、ペンキに水でっぽう。
目出し帽、装着。
ホンバーにまたがる、ジョオが前、リョウが後ろ、ぱからぱからと街を行く。
ほんとうはバイクがいいに決まってる。でもガソリンは高い。くずニンジンで走る乗りものなんてほかにない。
目的地、到着。
業務、開始――。
つぎの日、夕方に起きる。
起きてさっそくテレビをつける。
――さあ近づいてまいりました、太陽系合同説明会!
またジョオの「うっぜえなあ」がでる。ついでにゴキブリも。ジョオはリモコンでたたきつぶす。
チャンネルを変えると、――大成功。
――昨夜、カクカク町の住宅が何者かによって汚損される事件が起き……。
イエーイ、とハイタッチ。
黒電話が鳴る。ジョオがでる。
「ああ、はい……。はいはい……。ああ、そう! それはそれは……。あざっす。迅速な入金、助かります。はい、……はいはい……はいはい。またなんかあったらよろしく。そんじゃ」
通話終了。リョウはリモコンを入念にふきながら、
「依頼者?」
「ああ。もう振りこんでくれたって」
「早いね。じゃあ、仕事きまったの?」
「きまりそうっぽい。すげー感謝してた」
「よかったね」
「ああ……。まあな……」
商売とはふしぎなものである。
なんにでも需要があって、どこにでもチャンスはころがっている。
ふたりが目をつけたのは「いたずら(インシデント)」だった。
今回の案件でいえば、こうだ。
就活生から電話がくる。「仕事がきまらない」となげいてる。地球の内定枠はもうない、宇宙にも諸事情あって出られない。
仕事がないならつくればいい。
そこらの家をペンキまみれにする。道路を穴ボコにする。イベントに爆破予告の電話をいれる……。
すると清掃会社、舗装会社、警備会社……などなどに案件が発生、人手が不足する。
雇用が創出される――。
「だいたい、なんでもかんでもZAKURO社がやりすぎなんだよ」
せっせと爆竹をしかけながらジョオがいう。
「独禁法がじゃまだから裁判所ごと買いとりましたって? イカレてるだろ、そんなの」
うん、とリョウもバナナの皮を配置する。
カイト元気かな、とおもう。
口にはださない。
だしたらジョオがとまらなくなる。
「あーあ。おれもあいつみたいに天才で金持ちのアニキがいて、もうちょっとめぐまれた環境で教育をうけられればなあ。そうすりゃもっと、ましな仕事に就いてるはずなんだがなあ。地頭じゃ負けてないとおもうんだけどなあ。ほら、お前も覚えてるだろ? おれ、いっつもあいつのこと論破して泣かせてた。あーあ。まったくやりきれないよなあ。宇宙はほんとにくそだなあ――」
――とかなんとか。
「金持ちはろくでなしばっかりさ」
「うん」
「ちょっと口がうまくて運がいいだけの、軟弱な俗物ばっかだよ」
「うん」
「それなのに、えっらそうに……」
「うん」
「そんなやつらにおれらの仕事がつとまるか?」
「うん――いや」
「もちろん、おれだってもっと向いている仕事はほかにある」
「うん」
「頭脳労働とか。あとは、トーク力とかもなかなかのもんだな」
「うん……」
「だから、営業とか?」
「うん……」
「ま、とにかくいえることはさ」
「うん」
「金持ちは、くそだってことさ!」




