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12-3:決戦

 五人は再び、長い一本道に差しかかった。進行方向から流れてくる風は、地下墓地とは比べ物にならないほど新鮮で、外が近いことを暗に示していた。


 踊り場のある上り階段がしばらく続いた後、急に視界が開けた。たどり着いたのは森の空き地で、目の前には雲行きの怪しい薄暗い空と、巨大な祭儀場が広がっていた。


 ルキウス・アルコニウス・ノガタスは、<森の民>が造った古代の祭事場の中に立っていた。巨獣の角のような太い柱が立ち並ぶ、古代の祈りの場——そこには牢獄から連れ去られた囚人たちの死体が、儀式の生贄のように散らばっていた。生存者は見る影もない。一行は救出が遅すぎたのだと悟った。


「お前はどこまでもしつこい男だな、審問官」


 ノガタスはこちらに気づくと、いつものように嘲るような笑みを浮かべた。奴は祭儀場の中心に、たった一人で立っていた。ドラゴンの姿は見当たらない。どこかに隠れているか、すでに逃げ去ったのだろうか。


「このまま生かしておけば、お前は地の果てまで私を追いかけてくるのだろうな。ここで決着をつけた方が、お互いのためだろう。仲間共々、いっぺんにかかってくるがいい」


「お前はどこまで罪を重ねるつもりだ、ノガタス?」


 辺りに散らばる死体を目にしたクロトールは、怒りに声を震わせながら尋ねた。


「お前一人の都合で、これだけの人々を殺めるとは。この蛮行には、神でさえ眉をひそめることだろう」


 奴にはどんな言葉も効かないと分かっていたが、それでも口にせずにはいられなかった。すると案の定、ノガタスはぎらついた歯を口からのぞかせ、不快な声で笑い出した。


「何も知ろうとしない、英雄気取りの大馬鹿者め。私は神にとって最良の選択をしているだけだ。ドラゴンの意思に従うことは、神の意思に従うことと同じなのだぞ」


「あの男はまさしく狂人だな」


 ミアの傍らに立つエイレナが、毅然とした態度で言い放った。


「奴の言葉は、単なるこじつけに過ぎない。耳を貸すのは時間の無駄だ」


「私の言葉は全て真実だ」


 ノガタスはそう言うと、己を誇示するように腕を広げた。


「ドラゴンの存在は、常に人間の営みとともにあった。例えば古代サナン人は、ドラゴンが空の監視者で、月の満ち欠けは瞬膜の開閉に起因すると考えていた。遠いアスランでは、ドラゴンが古い太陽を飲み込み、新しくする行為が日食だと信じる者たちがいる。だから、ドラゴンは火を吐くのだと」


「俺たちはそんな話を聞くために来たんじゃない」


 イヴォが歯の間から、しぼり出すようにして言った。


「こいつを倒さなくては。奴は過ちを絶対に認めないし、生きている限り同じことを繰り返す」


「知ってるさ」


 フェリックスが言って、弓につがえた矢の先端をノガタスに向けた。


「奴の行くところには血が流れる。これまでも散々見てきただろう?」


「帝国の神が望むのは、文明の夜明けだ」


 ノガタスは周りを無視して、なおも続けた。


「神は、世界が光で満たされることを望んでいる。天空の支配者で、太陽と同じ性質を持つドラゴンが、神とは無関係だとなぜ言い切れる? その存在は、夜明けを望む神の思想そのものではないか」


「ドラゴンはどこにいるんだ、ノガタス?」


 クロトールは声を一段と大きくして尋ねた。


「お前にとってそれほど重要な生物が、なぜここにいない?」


 ノガタスは質問をぶつけられると、耳障りな声でひとしきり笑ってみせた。


「心配は無用だ。あの子はもうじき帰ってくる。今は空を飛ぶ練習の最中でな」


 その言葉に偽りはなかった。突然、遠くの木々がざわめいたかと思うと、森の背後からいきなり黒い影が現れた。黄昏時を思わせる鱗に、上空を覆う巨大な翼——ノガタスのドラゴンが戻ってきたのだ。その体は、前回見た時より成長し、ひと回り大きくなっている。


 ノガタスは、地上すれすれまで下りてきたドラゴンに素早く飛びつき、背中にまたがった。それからひとしきり高笑いすると、上空を旋回した後、五人めがけて突進してきた。そこから戦いが始まった。

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