まあずっと全裸状態だったしな
ひとまず二人に対して、私はよろしくの自己紹介を告げる。
「まあ何かアンタらあんま好みじゃないから挨拶遅れたけど、主様の眷属やってる者です! 呼び名は変態! 好みのタイプは筋肉と巨乳! ただしデブは却下だたるんだ結果の巨乳に用はねえ! だからといって引き締まり過ぎた筋肉も却下な! 鍛えられててむっちんとしててぱっつんとしてる筋肉が良いんだよ! 細マッチョなんざ犬に食わせろ! ボクサー系も重量あるなら良い体してっけど引き締め過ぎて干し肉みたいになってるヤツは要らん! そんなわけでアンタらは全然好みじゃない! 残念! よろしく!」
「初対面から失礼極まりないぞコイツ!?」
「…………不愉快」
「でもなんか、呼び名は最高にコイツ表してる感あるし、少なくともターゲットにされないなら良いかみたいな安心感あるよな」
「………………」
青いのの言葉に、まあ確かにといった様子で黄色いのが頷いた。
何て失礼なガキ共だ。
いやまあ、失礼極まってるのは私の方なんだろうけど、私はただ自分の性癖を叫んだだけなので知ったこっちゃねえ。
プロフィールで性癖叫んどくのは保身の為にも超大事。なんせ呟き系じゃ性癖が同じ相手と繋がっておくと良い餌流れて来るからな。
「というかマジで癖強くない? よくこんなの眷属にしたよな、諦観者」
「面白そうだったから眷属にしたらこんな性格だったんだよ」
「すぐ殺しそうなのに」
「既に何度も殺してる。ただ使い勝手は良いし、頻繁に気持ち悪い点以外は弁えてるから便利でね」
「その一点が致命傷じゃない?」
「だって主様のこの美貌を前にしてセクハラも何もしないなんて出来ないだろ!?」
青いのの言葉を無視出来ず思わず叫ぶ。
「コレで平然としてられるなんて精神的に去勢されてるレベルだよ! スマートにキマッてるのも良いけど、それでもわかる筋肉の厚み! 太ももの分厚さ! そして服を着込んでいる場合、脱いだ瞬間に現れる想像以上の素晴らしい筋肉! パーフェクト!」
全力で叫んで拳を握れば、青いのは物凄く引き攣った顔で私と主様の顔を見比べる。
私は一切恥じる事など無いと胸を張り、火炎袋が詰まった爆乳はぼよんとイイ感じに跳ね、主様は今更何か反応するのも面倒臭いし慣れたとでも言わんばかりに平然としていた。
「…………あー、まあ、相性は悪く無さそうで何よりだよ。そのまま好きに生きて行けば良いんじゃないかな。キメラって死んでるけどさ」
「何だそのコイツらに関わりたくないみたいな顔」
「関わりたくないんだよ変態。わかる? 僕らみたいな子供には特に近付いて欲しくないタイプだね。教育に悪い要素が凝縮され過ぎ」
馬鹿にしたような、この程度もわからないのかコイツといった表情でアメリカンなジェスチャーと共にそう告げられた。
熱血にも教育に悪いと言われたが、自分の好きなものに正直なのは美徳だろうに。
まあ私だって公衆の面前で性癖を声高々に叫ぶロリショタが居たら将来とか大丈夫か心配になるけどさ。
ちなみに私の場合の将来は完全アウト。突然地球をサヨナラした上に死んでキメラになって人食いコース。ただし素敵な主様に仕える事が出来るし常に好みのSMプレイ状態なので文句は無い。ここが私のシャングリラ。
「一応、そういう変態らしい部分が何故か諦観者と噛み合ってるみたいだから良いけどさ」
「えっ、どこが噛み合ってそう!? 性的な合体は残念ながら出来なかったんだけど具体的にどの辺が噛み合ってそう!?」
「子供相手にどういうセクハラだ!」
「…………最低」
何故かめっちゃキレられたし肥溜めに触れてたハエが今から食べようとしたリンゴの上にその足で乗って来た時みたいな目を向けられた。もっともっと!
「あーもう、僕らがツッコミに回るだなんて滅多に無いよ! 新鮮だけどこんな面倒な新鮮さは要らない! 服も無いし!」
「………………」
「な、失敗だったよな! 一応必要な道具とかはこういうのにも耐えられるレベルの袋にも入れておいたけど、着る物に至っては想定外! 何か入れてたっけかなー……着替えは背負ってた普通の袋に入れてたから大失敗だよ、もう!」
ぶつくさ言いつつ、青いのは近くに落ちていた袋を拾い、表面を汚している煤をパタパタと手で叩いて落としてから中を確認した。
……しかしコイツら恥じらわないな……。
全裸の少年二人が焼け野原な荒野で座り込んでる図は中々にヤバい。
本人達があまりにも平然としているのが尚の事ヤバさを強めている。
剥ぎコラの世界かここはとツッコミたくなるくらいには絵面がキツイ。
が、キメラの性欲云々がどうたらこうたらというのを考えれば、まあ、彼らがその辺に頓着しないのも当然なのだろうか。愉快犯の匂いするし。
「あー! やっぱり着れそうなの全然無い! 分解しようとしてた服とか材料予定の布ならあるけど……どうするジョーヌ?」
「…………却下」
「だよな! ここでコレ着るとか勿体ないもんな! でも普通の旅する子供に見せかける為とはいえ、怪しまれないような着替え類を普通の安物袋に入れてたのは間違いだった……とはいっても着替え以外に詰められそうなの無かったし、仕方ないか。工具類とかに万が一があったら困るもんな」
「…………無い」
「ああ、人気? そうなんだよ、さっきの大爆発もあるから様子見くらい来るかと思ったら来ないし……この辺人里無さ過ぎ! 通行人居たら食事ついでに服剥ぎ取ったのに!」
「奪衣婆かよ」
罪の重さを量る為じゃなくて自分用の服として確保する辺り、お仕事でやってらっしゃる奪衣婆とは大きく差が開いている気がするけれど。勿論マイナス方面で。
というか青いのが袋を自分の左側、骸骨部分のあばら骨に紐部分をぐるぐるっと巻いてぶら下げてるのは誰もツッコまないんだろうか。
……しかも他のヤツまでぶら下げ始めた……。
弾っぽいのとかもどんどんあばら骨部分に吊り下げられ始め、嫌なクリスマスツリーを見ている気分だ。あるいは嫌な七夕飾り。
「……何でそんなトコに荷物吊るしてんのお前」
「こうしとけば服着るだけで相手からは見えないし取り出しやすいからさ! 人間に擬態してたとしても、これらをぶら下げてる事で何か問題があるわけでも無いしね!」
骨部分に物を吊るした状態で擬態して肉付けしたらどうなるんだと思ったが、本人が問題無いと言うなら問題は無いんだろう。
私だって翼やツノを収納可能なわけだし、その辺は物理的な法則云々の外側なのかもしれない。
「ちなみに僕特製の武器はネックレスに変形させる事が出来るから、こうして身に着けておけば何かあっても即座に対応可能ってわけ!」
えっへん、と青いのは胸を張った。
人間としての倫理観がソレで良いのかと叫んでいる気がするが、まあ本人が良いなら良いんだろう。多分。正直言って青いのは好みじゃないので本人が良くなかろうと興味はない。
思うのは、自分の発明品を自慢するくらいには自信があるんだな、くらいだ。
いやもう本当に将来性に期待出来ないヤツは駄目。興味が湧かない。美形だからまだ良いけれど、全裸だからこそヒョロガリなのがわかってしまってひたすらに萎える。
……それに比べて主様の筋肉の素晴らしさときたら堪んないな!
思わず熱い吐息が零れそうな程には魅力的。
しっかりと着込まれている服の中にミッチリ筋肉が詰まっているかと思うと大興奮だ。
ありとあらゆるお宝が詰め込まれている宝箱を前にしているかのような高揚感があって素晴らしい。
味の宝石箱ならぬ、性癖の宝石箱が目の前に居て、それが自分の主様であるという幸運よ。マジで異世界最高だな。
「カートリッジは別に仕舞っておいても良いんだけど、さっきみたいな襲撃を思うとねー。やっぱり取り出しやすい方が良いと思わない?」
「カートリッジ?」
「コレだよコレコレ! ジョーヌの毛髪だったりキノコだったり魔物だったり、様々な物を材料として抽出した特製弾!」
手に持って主張されたのは、武器に詰め込まれていた謎の弾だった。
何ともスチームパンク的なデザインの電池だな、といったビジュアルをしている。
縁の部分は金属製で、透明な瓶なのか中身が窺える。
その中に入っているのは蛍光色の液体であり、正直言って得体が知れない。
……あ、電池型だけかと思ったら色んな形状があるんだな。
しずく型だったりボール型だったりと色々な形状のカートリッジがあばら骨に吊るされている。
あばら骨が独特のデコレーションされていくのにドン引きでよく見ていなかったが、何らかの拘りでもあるんだろうか。
「物によっては威力も勿論だけど付属効果が付くからね! 初手は攻撃力高めかつジョーヌの一部を使用した弾を使って、そこからは炎だとか風圧だとかそういう系! 経過観察とかを兼ねてるなら毒属性のも良いんだけど、今日はそういう気分じゃ無かったもんな?」
「………………」
青いのの言葉に、コクリと黄色いのが頷く。
会話も無いのによくまあコミュニケーションが取れるものだ。
「しっかし何でいきなり正体暴きを使用されたんだろう! 僕ら普通に無害な子供だったぜ!?」
「…………誤解?」
「他にもこの辺に、人間に化けてるタイプの魔物が居るって? 見ての通り目の前に諦観者と眷属の変態が居るけど、諦観者の場合は自分がバレたら目撃者をさっさと殺すタイプだろ? もしくは追ってこられない場所まで逃げて数十年コース! え、マジで何でだ?」
「単純に」
疑問符を浮かべる二人に、主様は堂々とした様子のまま告げる。
「キミ達の見た目をした人食いの化け物が居るという事を伝えただけだよ。僕がね」
「ハァ!?」
さらりと告げられた言葉に青いのが驚きを露わにした。
「いやまあお陰で威力実験出来たし良いけど、何だってまたそんな、聖騎士だなんて厄介な天敵使ってきたんだよ! まさかまた暇潰しか!?」
……また、って事は主様、暇潰しで似たような事何回かしてたりするのか……?
わりとあり得そうなのが怖い。
いや、別に私に被害が無くて主様を堪能してひゃっほい出来るなら別に良いけどさ。
「暇潰しというのも否定はしないが、少しばかり用があって探しててね。中々見つからないものだから聖騎士を使わせてもらった」
「人探しに天敵使うとかトリュフ探す為にトリュフ食べちゃう豚を使うようなモンじゃないかふざけるなよ! まあでも飽きっぽい諦観者が探してるヤツ見つからないからって他人使う辺り、放置し辛い何かしらの問題があるのは事実か!」
諦観者、適当な問題なら面倒だから放置ってタイプだもんな!
そう言って青いのは笑う。
青いの達がやられたのはわりと命の危険が伴う理不尽なものだったと思うのだが、回数制限有りとはいえ原則不死身なキメラをやってるとあんまりその辺気にならなくなるんだろうか。
「…………それなら」
「うん、それなら面白そうだしオッケー! 僕達の情報売ったのは見逃してやるよ!」
カラカラ笑ってサムズアップした青いのに、それは良かった、と主様は貼り付けられた笑みで返した。
……あ、今のはスルーなんだ?
主様の事なので「見逃してやるよ」といった上から目線系の言い方にはキレるかと思ったが、特にそういう事は無いらしい。
まあ人間が相手でも上から目線な相手に対してもあんまり態度を変えていなかったので、単純に自分の下についている立場の存在が立場をわかってないような事を言ったらキレる、という感じなんだろうか。
私としては合法的にめっちゃ這いつくばれるぜやっほいという最高シチュエーションでしかないから良いけれど。
「で、どういう用事があるって?」
問い掛ける青いのの言葉には返さず、主様は一度私を近くに呼んで袋を手に取る。
「その前に着替えてくれるかい? 見苦しい」
眉を顰めた主様により、二人の頭にそれぞれ着替えがぶん投げられた。




