残機を一消費して全体攻撃って感じ
「油断するな! 放て!」
ギターも爆発によってぶっ壊れた為、操られていた聖騎士達の動きが止まった。
それを好機とみなし、ナイトを始めとする攻撃準備をしていた聖騎士達が、聖属性が付与されているのだろうおぞましい、人間からすれば聖なる気配を纏っている槍を投擲する。
投擲された十を超える数の槍は外れるものも多かったが、幾つかは二人を縫い留めるのに成功していた。
喉と右足の付け根を貫かれた青いのと、腹と左目を貫かれた黄色いのが鈍い呻き声を上げる。
……聖属性はな、痛いだろうな……。
私はソレに触れた事が無いけれど、キメラにとって聖属性は天敵そのもの。
触れただけで肉が爛れ、そのまま外せずにいたら致命傷になってしまう代物。
残機が回復しない内に残機が尽きる程殺せば死ぬキメラだが、残機云々を無視して仕留める事が出来てしまうのが聖属性だった。
その上、痛覚の無いキメラすらも通常の痛覚レベルで激痛を覚える仕様なのが聖属性。
……うーむ、幼い少年と幼くもない少年が呻きながら苦しんで地面に磔になっている図ってのはリアルで見ると中々にエグイな。
町で人間を食う時は適当に、それこそ浮浪者を狙う。
道端に捨てられている孤児なんかも狙い目の食糧なので何度か食べたが、全部一撃で仕留めて食った。
あんな風に苦しめるような仕留め方はしていないし、人殺しの化け物だとはわかっていても、ナイト達もまた複雑そうに顔を歪めていた。
守るべき子供の姿、というには大分魔物だが、人間らしい面影がある相手が苦しむのを喜ぶようなメンタルはしていないのだろう。
それは大変正常で真っ当で、人間として失くしちゃいけない道徳の部分だろうけれども、
「まだ腕が動く状態なのに放置するとは、やっぱり思った通りになるか。どんでん返しが見れるかと期待したのに、期待外れだったな」
背中で主様がそう呟くと同時、仰向けで磔にされて呻いていたはずの青いのと黄色いのの口角が吊り上がった。
「…………残念」
「だよねえ、ジョーヌ」
楽しそうな、実に笑える滑稽な話を聞いたように悪辣な笑み。
「確かに苦しいし痛いし辛いし死にそうだけど、まだ死なない。僕らはまだ生きていて、まだ死ねるんだ。対して彼らは一度きりの人生! 僕らに喧嘩を売るのは結構さ! ソレもまた楽しいしね! だけど足りない、これじゃあ足りない!」
「…………痛いのは、本当」
「それでも僕らの動きを完全に封じられなかったのが致命打となったね! ま、キミ達も生き返る事が出来たらもっと抗えたかもしれないけど、それはそれで泥沼になるだろうから、そっちはそっちで潔く散ってくれ!」
歌うように叫びながら、青いのがいつの間にか取り出していた何かを空中へと放り投げる。
同時、まだ右側が再生していない黄色いのが、手元にあった石を左手で投げ、その何かへとブチ当てた。
「上空」
「あっ、ハイ!」
戯れのような脳天への踵落としにハッとして、主様が落ちないよう尻尾で調節しつつ雲の上まで退避する。
直後、それなりに分厚くお空を覆っていた雲が散る程の大爆発が発生した。
キノコ雲は無いけれど、見事なまでにぽっかりとしたクレーターが出来ている。
雲が散ったので大変視界が良好だった。
……こりゃあナイト達、完全に散ったな!
見ればちらほらと残骸らしき武器とか鎧とかが落ちているけれど、肉である人間は欠片も存在していなかった。
否、間もなくして何かがうごめき始める。
魔法なのか純粋に硬いのかは不明だが、先程青いのが使用していた武器や弾が残っている地点。
そこで肉が蠢き、集まり、ぐちゅぐちゅと体を構築していった。
「いやあ、上手く行ったなジョーヌ!」
「…………」
再生した、まだ体の一部は出来上がっていないものの頭部の殆どと胴体、そして腕が復活している二人は笑い合って勢いのあるハイタッチ。
青いのはわかりやすく快活な笑み、黄色いのは控えめながらも満足げな笑みを浮かべている。
まあ服は普通の服だったのか爆発の影響で完全に散っており、二人共見事に素っ裸状態だけれど。
……うーん、筋肉が残念……。
どちらも細身でガッシリしてないのが超残念。
青いのは成長しても筋肉に期待出来なさそうなヒョロさだし、黄色いのは鍛えれば筋肉つきそうな骨格だけれども、キメラである以上今後の成長には期待出来ない。
つまりはどちらも対象外という事でマジ残念。
「この爆弾試すタイミング探してたから向こうから丁度良くカモが来たって思ったし、実際使えて超ラッキー! 幸いな事にこっちに同情してたから油断もしてたし! そりゃ確かに激痛だったし放っといたら致命傷だけど、それで油断するのは駄目だよね! ぜーんぜん駄目! アイツらきっと油断こそが死因ランキング上位に食い込む常連だって事を知らないんだ!」
「………………」
喋っているのは青いのだけだが、双方楽しそうに笑っている。
……いや、でも、成る程なあ。
聖属性の武器は触れるだけで焼けるし、肉を貫けばそのままじゅうじゅう焼けて腐っていく最悪の相性。
しかし復活出来るからという理由で巻き添え型の爆死を選んで死に戻り、つまりは残機を一機犠牲にしての復活コース。
リアルでやるには中々に反則技じゃないかと思うが、キメラ自体のコンセプトが不死身の化け物である以上、あそこで連撃しなかったナイト達の落ち度という事になるのだろう。
「ふん」
二人の会話に耳を澄ましていれば、主様の鼻を鳴らす音が聞こえた。
同時、バチリという音が弾けて、気付けば真っ青なお空では無く焼け焦げた茶色い荒野が視界に広がっている。
……んおお!? 何が起きた!?
「油断がどうのこうのと言うなら、キミ達も油断が多いと思うけどね」
いつの間にか地面に降り立っている主様は、私の首根っこを掴んでいたようだがぽいっと地面へ抛り捨てた。
思わず顔面が地面にキスをしかねないので慌てて手をつく。
「あ、諦観者だ」
「…………」
「あと誰?」
きょとんとした水色の目と、眠そうながらも誰だコイツと雄弁に語っている金色の目。
それらに見つめられながらも、こいつら興味の対象じゃないし別に良いやと無視しながら私は自分の身を確認する。
……何か私、焦げ臭いな……。
本日着ていたのはガッパリ開いている胸元は白くて、裾がヒラヒラしている黒い長袖。
そして足首まで隠すし何なら引きずりそうなレベルで長い、マーメイドライン染みた黒のスカート。
首からは三重のパールネックレスが下げられており、ドレスコードがあるけどそこまで厳しくないちょっとした会合なんかにはこのまま行けそうなレベル。
髪は長い髪を見飽きたという主様に爪で綺麗にカットされ、首までの髪になっている。
襟足だけは長いままなので、ロングスカートと合わせてすらりとした印象を与える組み合わせだ。
……まあ髪自体は回復の要領で伸ばせるから良いんだけど、
問題は、そんな服が随分と焦げ臭い事。
一瞬燃えるレベルで熱が加わったけどギリ発火しませんでしたでも焦げました、みたいな臭いだ。
黒地なのでわかりにくいが、胸元の白い生地には焦げがついてるし。
……さては今の、電撃移動か。
私の首根っこを掴んで一瞬で地面に移動したらしい。
そこで私を置いて行かずにちゃんと連れてきてくれたとは何と嬉しい事だろう。
まあ結果的に一回死ぬ事になったが、とりあえず一緒に連れて行こうと思って貰えているなら大歓喜イベントと言っても過言じゃない。
主様の眷属としての記録更新だけでも毎日喜ばしいというのに、わざわざ一緒に連れてきてくれたという事実。
「主様、ありがとうございます!」
「何が?」
「さっきので上空に置いて行かずに私まで一緒に連れてきてくれた事ですよ! 一緒に居たいって思ってくれてるって事ですか!?」
「キミの靴についてが目的だから、キミが居ないと話にならない」
他に理由はない、と端的かつクールな目で断言された。
「そういうところもご褒美です!」
「…………コレが新しい眷属だ」
「諦観者が眷属連れてるのは、まあ、定期的に変わるとはいえよくあるから良いけど、なんか今回の眷属、やたらと癖強くない?」
「…………同意」
ひゃっほいと喜んでいたら溜め息混じりに紹介され、青いのと黄色いのにも変なものを見る目で見られた。もっともっと!
正直言って好みじゃない二人だけれど、顔は良いのでちょっと冷たい対応をされるくらいなら興奮出来る。我ながらコスパが良過ぎるな。




