黒魔獣、再び
『ガァァァアアアア!』
「あれは……!」
「黒い魔物………黒魔獣………」
それは黒い毛並みの、サーベルタイガーのような………しかし、黒い毛並みの上に、さらに黒い靄のようなオーラをまとっている。
いつだったか、アジト周辺の山々に出現した、黒靄をまとう魔獣のよう……というか、今俺とエレンの目の前にいるのは、過去、見たことのある、黒魔獣そのものだった。
「ソウジ、あれって………」
「ああ」
エレンも思い出したのだろう。もう結構前になるが、俺達はアレを倒したことがある。
それからは見ていなかったので、すっかり絶えたと思っていたのだが………どこかで繁殖でもしていたのだろうか。数年の期間を空ければ数も増えるか……?
「倒そう」
「……! うん、分かった!」
しかし、数多の魔物を倒してきた俺とエレンはもう、冒険者としての駆け出しの頃と比べて、そして何より、デカイノシシ一頭に手こずっていた頃ともわけが違う。
こういう場合の対処すら、よく話し合わずとも連携が取れる。
まずはエレンの先制攻撃から。次に備えながら、俺が敵を観察する。
「【ウォーターカッター】!」
エレンの掛け声と共に、キンッと凄まじい速さで伸びた超高圧の水の線が、敵の頭部を貫いた。
「………」
「………」
俺もエレンも、それで一喜一憂することなく、油断なく黒魔獣の亡骸に近づく。
「……以前は魔法を一撃分くらいは無効化されたよね?」
「ああ、そのはずだ」
「ウチ達が強くなり過ぎちゃった? それともコイツが弱い? あるいはそもそも別のパターン、かな……?」
「どうだろう」
台詞に自信はみなぎっているが、驕りともまた違う。あれこれと考えるエレンの分析に、俺もまた確たる何かを示せるわけではないので曖昧に頷くだけ。
「死体は持ち帰る。俺が担ぐから、エレンは周囲の警戒を頼む」
「分かった!」
担いだ死体の牙が、改めて巨大なのを実感する。小さい頃見ても巨大だと思ったが、今見ても巨大だ。
こんな凶悪な魔物なら、ギルドの魔物目録などに掲載されていてもおかしくはないと思うが………どこでも、こうした情報は見たことがない。
今の俺は王国の勇者だし、このコネも使って少し王国に調査を依頼してみようか。




