勇者やめたい
「勇者やめたいです」
「うおっ。なんだ藪から棒に」
ニールは驚きつつも、少し心配そうに俺の顔を見てきた。
「勇者なんて仕事、俺には何だか、合っていないような気がするんです………」
「いつの間にか敬語に戻ってるな……。さては相当重症だな?」
新婚であり幸せの絶頂にあるニールに言うことでもないかと思ったが、誰かに聞いてほしかったので。
「ソウジったらずっとこんな調子で。ウチが大丈夫だって言っても聞いてくんないんだもん……」
「ああ………」
どこか不満そうに口元を尖らせるエレンの様子を見て、ニールも何か悟ったらしい。
「それで、どうしたんだよ、話聞いてやろうか?」
彼はその天パをぽりぽりと掻いてから相談に応じてくれた。
「もう、何だか嫌になってきたんです………勇者とは名ばかりで、事実上の王国の飼い犬で。そもそも、ようやく元の世界に帰るための情報網が構築できそうかなって時に、あの王様、俺を呼びつけて、勇者とか言ってっ………!」
「お、おおぅ………」
気付けば俺の魂の叫びが出ていた。
いや、叫ぶというほどではないが、語る口調にはつい熱が入ってしまう。
「大体、俺は歴代最弱の勇者って呼ばれてるんです。貴族達も陰で笑ってるの、俺は知ってるんだからぁ!」
「………おいエレン、こんなになるまでソウジを放っておいたのか?」
「ちょ、まるでウチが何にもしてなかったみたいじゃん! ソウジも、やっと里帰りできたからってはしゃぎ過ぎ!」
熱が最高潮になったところでファンから水を差される。俺の愚痴ライブはまだ始まったばかりなのに。
「まぁまぁ、ソウジ。始めてからすぐにやめるなんて言うなよ。せめて三年、あと少しだけ続けてみようぜ。な?」
「………」
「な、なんだよその目は………」
俺を宥めすかすニールだが。
これ、オヤジの方からも話が行っていると見た。
だって、勇者をやめられたら、傭兵団にもどんな影響が出るか分からないからな。
困る人間にそう吹き込まれたのだろう。オヤジめ。




