気付けば勇者の日常に
「王都周辺のご依頼書からですね。こちらになります」
「どうも」
俺もエレンも若干の疲労を滲ませながら、冒険者として討伐系の依頼を受ける。討伐系の依頼を受けるのは、その方が俺とエレンにとって簡単だからだ。この辺の魔物は、大抵は出会い頭に【ウォーターカッター】で首を切断するだけで片付くようなものが多いからな。どんな強い魔物も、大抵は頭が弱点であり、そして首は切断しやすい。どこが頭か分かれば、後は大体【ウォーターカッター】の射程圏内に近づいて、魔法で切断して終わり。
「ソウジ、ちょっと疲れてる? 王様に頼んでお休みをもらった方がいいんじゃない……?」
こちらを気遣ったエレンがありがたいことを言ってくれるが、この同年代のプラチナブロンドの美少女に、俺は力なく笑みを向けた。
「お前も、無理してついて来なくていいんだぞ」
「ソウジが心配なんだもん」
「お前、この勇者様が心配だって言うのか?」
「ウチだって勇者のパートナーなんだよ? 仲間の言葉が聞けないって言うの?」
「手強いな」
「えへへぇ♪」
まぁ、言っても聞かない強情なところがあるのは、今に始まったわけじゃないからな。
エレンにも譲れない部分はあるということ。俺は勇者なんぞに選ばれちまって、エレンもまた勇者の“パートナー”……つまり、将来的に勇者パーティーの一員になることが決まってしまっているわけだ。
そう考えれば、エレンはただ俺の事情に巻き込まれただけとも言える。
「ソウジ、勇者になってどぉ?」
「どうって………」
王都近郊へ遠足がてら、エレンがこちらを覗き込むようにして尋ねてきた。
「あんまり実感はないな。それよりも心配事の方が多いし」
「ふーん」
「ふーんって」
聞いておいて余り興味はなさそうな返事。エレンはクスクスと笑っていた。
「ソウジはソウジだね」
「どういう意味だよ」
「どういう意味だろーねー?」
俺がツッコミを入れると、エレンはまたクスクスと笑いながら、その髪の毛に光る髪飾りをそっと手で撫でた。彼女は俺が成人祝いに贈ったプレゼントを、今も大事に身に着けてくれている。
「………」
俺は何となくその仕草から視線を逸らし、エレンと共に街道から外れてだだっ広い平原をつっきるように進む。




