勇者(国のパシリ)になっちまったよ
「勇者として、謹んで依頼を拝命いたします」
早くも、こんなセリフに慣れ始めている自分がいる。
冒険者になったからと言って直ちに何かが変わるわけでもない……などというわけもない。
早速、王命にかこつけたお使い、及びパシリなどの雑用がスケジュールを鬼のように埋めていた。
具体的には―――どこそこに赴いて誰誰から薬を調達してこい―――どこそこの山から薬の材料を調達してこい―――ナントカ地域にあるはずの珍しいアイテムを発見してこい―――ナントカとかいうモンスターを狩猟しろ―――王国騎士団と協力して街道沿いの荷馬車を襲うならず者を排除せよ―――などなど。
実に様々だ。
ヘタをすれば、種類だけなら冒険者ギルドに寄せられる依頼と同程度なのではないか。
あちらに関しては、しょっぱいものから数日がかりの大変な依頼、大型の魔物の狩猟まであるのだが、この王国の王様の下で勇者としてこなす依頼は、どれも難易度的にはほぼ均一。上手く、『勇者育成』を行われている気がする、というのも俺の勘違いではないと思う。
合間に冒険者ギルドに顔を出す。
「おう勇者様のおなりだ!」
「であえ、であえーーっ!」
「ガハハハハハ!」
「まさかソウジが勇者だったとはなァ!」
「おい今度奢れよ! 俺ぁ来月金欠になる予定なんだ」
偶に野郎どもの冷やかしに遭うが、それも親しみを込めてのものが多い。
やはり、本気で嫉妬や僻みに遭うこともなかった。そもそも俺がどういうやつなのか、どういう腕前なのかは知れ渡っているというのが大きいだろう。何より冒険者ギルドで人間関係を築いていたことが功を奏した形だ。そもそも傭兵団との軋轢を生まないため、あるいはパイプ作りのために冒険者を始めたから、当然と言えば当然だが。
あぁ………野郎ども・お姐さん方の荒っぽくも温かい歓迎に遭うと、帰って来た、って感じがする。
傭兵団のアジトほどではないが、この冒険者ギルドも、気付けばこの世界における第二の故郷みたいになっていたんだな。




