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【毎日更新】ユウシャ・イン・ワンダーランド ――ゼロ・ローグ―― ~異世界に来た元サラリーマン、異世界ライフのスタートは野盗の群れでした~  作者: むくつけきプリン
勇者認定編

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勇者任命式

 かくして、勇者任命式が始まった。

 新しい勇者が誕生するための、及び、そのことを周知するための、儀式のようなもの。

 この度、(くだん)の勇者として大抜擢されるのは、なんと、この俺だ。

 歴史的な偉業を達成したわけでもない、勇者になりたいなんて願望なんぞも持ち合わていない。

 ゴロツキ一味上がりで、冒険者なんかもやってみたら頭角を現してしまった、そんな勢いがつき始めたばかりの一般人の、この俺なのだ。

 まさか、まさかまさか、勇者とかいう称号を与えられることになろうとは。というか本当に俺で良いのか? 内心で様々な感情が渦巻く。

 しかし、俺の内心など知らぬとばかり、なぜか王様は、俺が異世界の出であり、しかも帰る方法を探している身だと知っていた。

 その上で、俺に勇者なんぞの称号を与えやがったのである。

 俺をここまで世話してくれた、ありがたき傭兵団のカシラたる、むくつけきオッサンのオヤジは言った。あの爺さんもえげつないことをしやがる、と。それだけ強引な手段であり、非情な措置なのだと、遅れて俺も理解することとなった。



『勇者様ご一行の、おな~~り~~!』

 やたら古めかしい文句と共に、大広間の大扉が開き、やたら豪華な装いに着替えさせられた俺とエレンが入場する。

 その大広間では、大きな長テーブルに数々の豪勢な料理が並べられ、所狭しとばかりに貴族がそれらの席を埋めていた。

 皆、一様にこちらを見ている。

 ある者は手を構え、既に拍手の準備に入っており、ある者は、ただ興味深そうに眺め、またある者は、顔に嘲笑を浮かべ―――。

「(ソウジ、手と足が一緒に出てるよ)」

「(やべっ)」

 緊張でガチガチの俺と、妙に慣れた様子のエレンは、やっとの思いで専用の席に着席した。

 ちなみに俺とエレンの席は、貴族達の席に対し、何やら披露宴の新郎新婦が座るような位置関係にある。

 王様の席は貴族たちの席の奥、つまり上座にあり、そこには王妃と思われる女性と、そして王と王妃の間に生まれた子供達の席があった。

 あっ。

 あれは確か、俺を一時期、この城に軟禁してくれた姫だ。あの子もいるのか、そりゃそうだよな。だって姫様だし。

『――っ! ………? ………。………………』

 彼女は俺の姿を見ると一瞬だけ目を輝かせたが、そもそもどうしてこんなことになってるんだ?とばかりに首を傾げ、以降ずっと目を細め、ジト目を向けてきている。様子がコロコロ変わって分かりやすい、面白いのは相変わらず。

 そんな姫様と俺は、数年ぶりの再会ってことになるのか。彼女は大分大人っぽい見た目に成長したな。とはいえ、今、彼女が浮かべているあの顔は………。

『………………』

 ロクに挨拶をしなかったことを咎めるかのような視線だった。後で再会の挨拶と共に謝っておかないとな。

「(ソウジ、どうしたの? 王様はこの後でしょ?)」

「(あ、ああ)」

 王族の座る席を凝視してしまっていたからだろう、エレンが不思議そうにしていた。

 彼女の言う通り、今は王の姿はない。おそらく登場の順序とか作法があるのだろう、そうすると入場は俺達の後か。

 チャララ~、と、大広間の隅のスペースに待機した一団が、音楽を奏で始める。

 噂をすれば。

『陛下の、おなぁ~~~りぃ~~~~!!』

 行司のような声が張り上がり、大広間の、今度は上座の方の扉が開く。

 王の入場だ。

 現れたのは、誰よりも豪奢な衣装に身を包む、一人の男性。年齢で言うと六十代。

 王は厳粛な足取りで自席に向かい、給仕が引いた椅子に腰かけ、言い放つ。

「此度は勇者とその一行の称号を、その者らに授けることとなった。古き慣わしに従い、新たな勇者の誕生を歓迎する。みな、今宵は歌われよ、称えられよ。神が人に祝福を、新たな導きを授けたまわんことを」

『――――』

 王の厳粛な口上に、「ははぁーっ!」という感じで貴族達が座ったまま礼をしたものだから、俺とエレンも慌てて頭を下げた。

 音楽のボリュームが一瞬だけ大きくなり、まるで王の威厳をただ知らしめるために設けられた場のようにも感じる。

 楽団の演奏がまた通常のものに戻ると、王は今度は静かな口調で言った。

「今宵は新たなる勇者誕生を祝う場。主賓はそなたらである、ゆるりと楽しまれよ」

「はい」

 緊張の割に落ち着いた返事が出た。

 王が口をつけ、貴族達が口をつける。俺達も口をつけた。上品な味の料理だが、ほとんど味など分からない食事となってしまった。

 この後では立食パーティーみたいなのが催されるらしいので、俺はそちらの方を楽しみたいかな………と、小心者は腹を押さえながら思いましたとさ。

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