中級冒険者同士のケンカ
「おう、んだよ、女連れのたった二人組でパーティーだぁ? よく今までゼンメツしなかったなぁ!?」
「……?」
至近距離で声がしたので何だろうと思って振り返ると、側頭部に剃りこみを入れたチンピラ風の男と目が合った。鎧や武器など装備品の使い込まれ方からしてそこそこ長いこと冒険者をしていると思われるお兄さんだ。俺とエレンよりも年上に見える。
「何か用っすかね?」
俺が立ち上がると、冒険者ギルド内にある食堂兼酒場で駄弁っていた連中のざわめきが一瞬で種類を変えた。どこか、こちらの様子を窺うようなものになっている。
注目されてしまっているが、仕方ない。
俺だって中級冒険者だ、ナメられるわけにはいかない―――というのはもちろん嘘で。
俺にはそんな、冒険者としてのプライドはない。皆無と言って良い。
しかしながら、俺がこうしてナメられまいとするのにも理由がある。
それは、隣だ。俺の隣に座っているヤツが理由だ。
俺に話しかけてきた男を鋭い目つきで睨んでいる女が、問題なのだ。
もはや、冒険者にもちらほら知り合いができつつある現状、俺よりも恐れられていると言って良い存在。
少しずつ“狂犬”だの何だのというあだ名が広まりつつある、プラチナブロンドの美少女。
エレンである。
「ちょっと、何なの?」
俺が冒険者の相手をしようとして立ち上がったのに。
チンピラのような風体だが大したことがなさそうな相手からの絡み、及びそれによるトラブルを最小限に抑えようとしていたのに、隣のエレンまで立ち上がってしまう。
「アンタ、ソウジに何か文句があるワケ?」
「ぁあ゛?」
「ちょ、二人とも……」
もはや俺を差し置いて、チンピラとエレンの間で火花が散り始める。
「あの、俺に用があったんじゃないっすか?」
慌ててエレンと男の間に身体を割り込ませ、互いの視線を遮った。
男の視線を正面から受けて、俺もまた会話の主導権を渡さないようにしなければならない。エレンにも、チンピラ風の男にも。
「生意気だな。表、出ろ」
「……えぇ?」
普通、こういうのって冒険者ギルドにやって来たばかりのルーキーにやるものじゃないだろうか。
こんな露骨な………。
「(ソウジ、やっちゃおう! 手足全部もいで思い知らせてやろ!)」
「(マジ落ち着いてくれエレン)」
俺よりも誰よりも怒るエレンを宥めつつ、俺は男により酒場に連れ出された。もちろん俺には人体から手足をもぎ取って分からせる趣味はないので安心してほしい。
途中、別のテーブルにいた知り合い―――『ボン・ファイターズ』の少年達と視線が合ったが、彼らは怯えきった目で、テーブルに手をつき腰を上げる寸前の姿勢のまま固まっていた。どうやら加勢しようと思うほどの情があるようだと確認出来て、俺は勝手にほっこりしておく。
しかしまぁ、困ったもんだよ。
「(ボッコボコのギッタギタにしちゃお!)」
「(エレンお前さぁ)」
特にエレン、お前にも困るよ。彼女の血の気の多さは、傭兵団で生活しているうちにそうなってしまったのだろうか。最近ではどうにも違うのではと思えて仕方がない。




