冒険者ギルドに行く日の朝はこんな感じ
「おう。順調か」
朝早くからエレンと共に冒険者ギルドに出発しようする俺を見送るように出て来たオヤジ。
靴ひもを結び直して腰を上げた俺は振り返り、オヤジに挨拶をした。
「はい。今は中級冒険者です。中級ですよ」
どんなもんだいと胸を張る俺を見て、オヤジは目を細めて可笑しそうな表情を浮かべた。
「ハッ。冒険者が長続きするとはな。イノシシ相手に腰抜かしてたガキが、やるようになったじゃねぇか」
「どうも。そのうち傭兵団そのものに依頼が来るようにしてみせますよ」
「ケッ。期待なんてするかよ」
台詞とは裏腹に、その口調も表情も穏やかなもの。オヤジの口から出て来るのは憎まれ口ばかりだが、どこか温かい。行間を読まずとも、オヤジは今まで、俺の成長を見守っていてくれたということだ。
顔も身体も古傷だらけの髭面、大柄で腕っぷしも強い、このむくつけきオヤジ。我らがカシラは、信じられないほど部下の面倒見が良い。彼の下だからこそ、傭兵団の面々も一つになれているということだろう。
ちなみに我らが傭兵団の構成員は百名ほど。俺が入った頃に比べて、規模も大きくなってきている。少しずつだが、勢力が拡大してきている。
ならば俺も冒険者ギルドに顔を出す以上は、これからはナメられないよう“格”というものの演出にも力を入れていかなければならないだろう。
「何日だ」
いきなり日数を聞かれるが、なんてことはない。俺とエレンが傭兵団を留守にするだろう日数を聞かれている。この辺も毎度のことである。
「一週間ほどを見込んでます。ギルドからそう遠くないダンジョンに合同パーティーを組んで向かわされるようなんで」
「ほう………そうか」
オヤジは少し思案げにしてからゆっくりと頷いた。オヤジは歴戦の猛者だからな。ギルド近隣のダンジョンと聞いて、いくつか候補を絞ったのだろう。
「どうした、いつまで突っ立ってやがる」
と、オヤジの様子を眺めていた俺達に、オヤジからあんまりな一言。
この人、絶対に「いってらっしゃい」は言わないんだ。
「早く行って来い」
「「行ってきます」」
おそらく俺達なら大丈夫だと判断したオヤジに、オヤジなりの「いってらっしゃい」で送り出され、俺とエレンはアジトを出発した。




