冒険者生活に慣れてきて(2)
「クソ、抜けた!」
「ソウジ!」
「ああ」
ごにょごにょと呪文っぽいことを呟いて、手から火炎を出す。【火炎放射】。
別に可燃性のガスを発生させているわけでもないのに、持続的に燃える炎が、かざした手の前方十数メートルほどを焼く。
行使の前にごにょごにょと呟いたのは………言うなれば、これも“保険”だ。変に目を付けられないようにするための。手練れ扱いされると、程度にもよるがデメリットが生まれるだろう、だからその辺を嫌った形になる。
この世界ではたとえ一つの魔法であっても、それを極めた人間は無詠唱でその魔法を行使することができるからな。大切なのは練度であり、この点でも経験豊富な戦闘員ほど他とは一線を画すものなのだ。
だから、まさか俺が習得した魔法を無詠唱で使えるなどとバレれば、どのような輩に目を付けられるか分かったものじゃない。
もちろん、人目がなければその限りではないが。
「ソウジ、俺達はあっちに逃げたヤツを追う! そっちは頼んだからな!」
「任せとけ~」
ボン達は全員……向こうに行ったな。
「よし。あらよっと、【ウォーターカッター】」
今、その人目がなくなった。俺の手から出た高圧の水噴射が、一本の細い線となって前方二十五メートルを薙ぎ払う。狙った魔物を隠す木々ごと一刀両断だ。扇形に開けた空き地が出来上がる。
まぁ、人目がないと言っても、近くにエレンはいるが、彼女には既に俺の実力は知れているので、バレたうちに入らない。
「これでもやり過ぎかなぁ」
「うーん、大丈夫じゃない?」
魔物から戦利品の剥ぎ取りの最中、そんなことを呟いてみると、エレンが反応した。
「【ウォーターカッター】はウチも使ってるし。それに、こっちの方は人もあんまり来ないでしょ」
「……だな」
どうにも、俺は傭兵団との顔つなぎをする意味でも冒険者ギルドに通いつめ、最近では結構な数の依頼もこなしているから、色々と心配してしまうことも多い。
着実に信用は積み重ねているのだ、変なトラブルで台無しにする愚は避けたいところ。
「ソウジ、こっちも剥ぎ取り終わったぞ!」
しばらくすると、ボン少年率いる『ボン・ファイターズ』の内の一人、デンがやって来て血の染みた袋を掲げていた。あーあ、ちゃんと血は拭いとけって前に言ったんだけどなぁ。監禁の時にケチつけられて安く買われても知らんぞ、っと。
「っし、エレン、俺達もそろそろ終わるか」
「うんっ!」
俺とエレンも剥ぎ取り作業を終え、ボン少年達と合流。そのままギルドの方へ向けて出発した。
………何だか最近は彼らと行動を共にすることが多いし何となく合同パーティーみたいな感じになっているが………まぁ、今の内は良いだろう。群れることは厄介の種も増える可能性がある一方で、群れることが自衛に繋がるケースもある。何であれ、人との繋がりは持ってみるものだ。特に、経験が浅いうちは、な。




