冒険者生活に慣れてきて(3)
『ワアアアアアア!』
ギルドの食堂を冒険者たちが占領する。
各々が手に酒瓶を持って、ある者は歌ったり、ある者は一気飲みの飲み比べに挑んだりと、実に盛り上がっている。盛り上がり過ぎて、騒々しいくらいだ。ほどなくして、慌ててギルドの建物の外に駆けて行き、ゲーゲーとやる人間まで出て来る。あーあー、無茶な飲み方をするからだ。急性アルコール中毒とか、怖くないのだろうか。怖くないんだろうなぁ。
ちなみにこの場がなぜ設けられたのかというと、ギルドが定期的に主催している「交流会」というものらしい。
冒険者どうしの交流を活発にし、繋がりを作らせ、情報交換を密にさせ、生存率アップへと繋げるのが目的なのだろう。ギルドのお姉さんに質問すると、そんな風に解説してもくれるしな。まぁ、別に隠すことでもないのだろうが………。
後は、食堂などギルド側へ金を落とすことへ心理的抵抗を弱める意味もあるのだろう。皆の憩いの場、うちではご飯も出してますってな。
「ソウジ、これお酒、だよね………」
「ああ」
エレンがどこか顔を引きつらせ、耳打ちしてくる。俺とエレンの手元にも、なぜか酒が配られた。他の冒険者の手元にあるようなのが。木製のジョッキや陶器のようなジョッキなど器はバラバラだが、中身は全部一緒。酒だ。
もちろん、同じテーブルを囲む他の冒険者―――ボン少年達も同様なのだが。
俺とエレンが飲酒を躊躇しているのに、しかし俺達より年下の彼らは躊躇なく口を付けている。
どうなってんだ、この世界の法律は―――しかし、そんなことを気にする輩はこの場にいない。
最初は少しずつ口をつけていたボン少年達だが、徐々にその視点が定まらないようになってきている。酔っ払って暴れ出すことはないものの………四人とも、もうそろそろ眠ってしまいそうだ。まぶたがかなり重そうな表情をしている。
「おいお前、おめぇが噂の新入りだるぉぉ?」
「噂……?」
突然、別のテーブルからヨロヨロと千鳥足でやって来た赤ら顔の青年。
強そうには見えないし、酒にもそれほど強くはないようだ。もうすっかり出来上がっている。
こちらに話しかけてきた彼は、プハァと酒臭い息を吐きながらヤケにでもなったように言った。
「お前ぇ、噂になってんぞぉ、とある傭兵団のガキが、えらく凄腕だってなぁ! まったく、どんな教育してんだ!」
「………」
それは、どんな教育を受けたらギルドで目立つ真似をするんだという、いわゆる新人いびりの台詞だろうか。
「どうやったらそんなに強くなれるんだぁ!? ガキんちょのくせして、羨ましいぜ、このっ!」
「ハハハ……」
違った。どうやら彼は、傭兵団では俺のような子供に英才教育を施していると思っているらしかった。
傭兵団は人材に関しては、特に戦闘方面でピカイチの人員が揃っている。
俺と絡みのあるのは、主に我らがカシラたるオヤジと、ニール、モッチ、そしてドラくらいだが、他にも凄腕のアニキ分・アネキ分達は多く存在する。
皆忙しいのでそれぞれ任務で遠征していたり、アジトで留守番していたりと色々だが………俺の戦闘面での伸びに関して驚いていた人物もいるが、俺が傭兵団でやれているのも、皆が優れているからだ。
「当然でしょ、ソウジはすごいんだから!」
フフンと胸を張ったエレン。
俺に絡んで来た酔っ払いの視線がそちらにも向く。
「すげぇ冒険者デュオってな、お前ら有名になってんぜ」
「「……!」」
俺とエレンは目を合わせた。
エレンはどこか得意げで嬉しそうだ。
呑気にも思えるが………俺としては、いつの間にか普通に目立っていたことに驚く。
まだボン少年率いる『ボン・ファイターズ』くらいとしか絡みらしい絡みはないと思っていたが………。
なかなかどうして、冒険者の情報網も侮れないらしい。




