表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【毎日更新】ユウシャ・イン・ワンダーランド ――ゼロ・ローグ―― ~異世界に来た元サラリーマン、異世界ライフのスタートは野盗の群れでした~  作者: むくつけきプリン
冒険者編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

126/183

初心者デュオ、ただし結構強い

「………ソウジ、お前、魔法使いだったのか……」

「まぁな」

 とはいえ詮索は無用だ。適当な返事にとどめておく。

 本当は、威力や使い勝手の点でおそらく【ウォーターカッター】を上回るだろう奥の手たる【魔装体術(マジックアーツ)】もあるが………そちらは本当に限られた人間にしか明かさないことに決めている。身体強化とかいう汎用性の高い奥義は、どうやら俺に備わっているらしい“魔力の(直接的な)操作”という特性とも関係があるらしいし。まだ研究中なのもあって、これに関する情報の開示が弱みに繋がらないとも限らないしな。弱点があるなら早めに発見しておきたいところだが………魔力を多量に消費する点以外で特に欠点らしい欠点もない。そもそも俺の魔力は人よりかなり多いようだし、唯一の欠点もあってないようなもの。【魔装体術】中の高速戦闘に動体視力が完全に追いついた今では、直線的な動きで戦ってしまうこともなくなったわけだし、本当にただただ強い技という感じだ。

 とはいえやはり、文字通りの切り札であるため、隠しておくのが無難だろう。

 反対に【ウォーターカッター】は、射程にも限りがあり付近に味方がいる場合には拳銃などと同じような間合いと使い方になるだろうから、その辺が弱点になり、対策も可能となる。こちらを表向きの切り札としておいた方が良いだろう。こちらを殺そうと【ウォーターカッター】対策を講じてきた相手は【魔装体術】で返り討ちにできる、そのように思えれば精神衛生上も安泰だ。

「む」

 おっと、前方百メートルくらいに、大量の魔力の気配。

 数は………ちと分かりにくいな。とにかくたくさん、だ。

「ソウジ」

「ああ、分かってる」

 エレンももちろん察知していた。ボン少年は「?」と首を傾げている。呑気で可愛いな。

 俺達はそのまましばらく足を進め、俺の攻撃の射程圏内に獲物全てを捉える位置まで来たところで、木陰から俺は前方に手をかざす。

 これから行使する魔法に、大抵の障害物は意味を成さない。

「【ウォーターカッター】っと……」

「うわぁっ!?」

 シーッ、と水が空気すらも切り裂く特徴的な音。

 俺が突如として高圧の水で辺りを薙ぎ払ったものだから、隣のボン少年は素っ頓狂な声を出した。

 この魔法の怖さはしっかり理解している彼が、ビクッ、と軽く頭を手で押さえて姿勢を低くしたところで、俺達の前方では、ぐらぐらり、どすどすーん。

 傾いだ木々が何本も倒れ、向こうにあった景色が前方に見えるように。あっという間に開けた空き地の出来上がり。

 その空き地では、両断され、綺麗な断面から血を噴き上げるイノシシの群れが見える。どうやらここをねぐらにしていたらしい魔物は一掃できたと見えて、視界がイノシシの毛並みたる茶と噴き上げる血の赤とで染まる。

 同時に、先程まで感じていた大量の魔力的な気配も、ものの見事に消失する。

 血だまりに沈んだ大量の肉塊。昔の俺なら卒倒したかもしれない景色だが………こういう暴力的な景色にも慣れてしまった。自分の変化が少し恐ろしくもある。相変わらず人の血肉は見るのも無理なくせにな。

「!」

 ふと、俺の感知範囲に何かが引っかかる。

 ここから九時の方向……左側少し離れた場所に、魔力的な反応。

 おそらくデカイノシシだろうが、猛スピードで、それこそ「猪突猛進」って感じで突っ込んでくる個体が一つ。

 生き残り? おそらく、目の前で壊滅したこの群れに属する個体だろうか。

「任せて!」

 悲しいかな、群れの危機を察してやってきたデカイノシシだったが、俺の隣に並び出たエレンが流れるように魔法を行使。

「【ウォーターカッター】!」

『ヴモ―――――』

 少し大きめな個体だった。俺達に突進しながら、勇ましく咆哮を上げようとしたところで、容赦のないエレンの魔法。咆哮の上げ始めで、既に真っ二つとなってしまった悲しき獣。エレン、本当に容赦ない。誰に似たのだろう。

「――フフン♪」

 見たでしょソウジ、ウチだってこれくらいできるのよ! とでも言いたげなドヤ顔。可愛らしいが………見ろ、ボン少年達が引いている。今まで俺に対して「何だこいつは」だったのが、今では俺()に対して「何だこいつ()は」みたいになっている。彼らの顔と視線が、俺とエレンとの間を行ったり来たり。

「近くには、もういないみたいだね」

「そうだな」

 しかしエレンはそんな彼らをちらりと一瞥(いちべつ)しただけで、俺と同じように周囲の気配を探り、俺達以外の魔力的な反応が絶えたことを確認した。

 もう周辺に魔物の気配はないのは確かだろう。エレンの確認もあると安心するな。

 彼女は俺の技術習得に合わせて、同じように習得してきたからな。察しがよくて、連携上手というのもあるが、なにより俺の至らぬ点をフォローしようと動いてくれるから、実に助かっている。

「……ん? やべ、袋、もう無い―――」

「ソウジ、はいこれ。こうなると思って、戦利品を入れるための予備の袋、用意しといたから」

「うわめっちゃ助かる。ありがとうエレン」

「えへへ♪」

 本当に、エレンは良くできたパートナーだ。

「………」

 いつの間にか地面に尻もちをついていた『ボン・ファイターズ』の面々。ぽかんとした表情で俺達を見上げている彼らの様子が印象的だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ