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【毎日更新】ユウシャ・イン・ワンダーランド ――ゼロ・ローグ―― ~異世界に来た元サラリーマン、異世界ライフのスタートは野盗の群れでした~  作者: むくつけきプリン
冒険者編

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新米冒険者として(2)

「ソウジ、依頼はどれからこなすの?」

「そうだな……どうするか。一応、俺達は冒険者としては新米でも、ギルドの依頼自体は何度も受けて、こなしているし」

 本当、中途採用って扱いが難しい。仕事には慣れている分、完全に新人としては扱えないし、俺も自分達の振る舞いについて、あるいは今後について考えるべきことは多い。

 基本的に優先順位として上に来るのは、「生命の安全」―――とか、そんな当たり前のことは置いておいて。

 依頼をこなすのは、「傭兵団のプラスになること」を狙ってのものだ。

 俺とエレンが傭兵団出身の冒険者としてギルド内で依頼をこなし、冒険者として相応の地位や名声を得られれば、必然的に傭兵団とギルドは互いの仲をより良くしようという話になる。

 そんな俺とエレンが窓口になれば、傭兵団に多数の仕事が舞い込むことも期待できる。

 コツコツ行こう。全てはコツコツと。

「今日はイノシシ退治だな」

「分かったー」

 どこかやる気のない返事だが、ギルドの受付で依頼の受注を済ませ、俺とエレンは目的地へ向かった。

 傭兵団には数日留守になるかもと言ってあるし、このままでも問題はないだろう。

「―――おい待て!」

「それはオイラ達が先に受ける予定だったんだぞ」

「ああ……?」

 呼び止められたので何だ何だと首を向ければ。

「そう! オレ達『ボン・ファイターズ』!」

「このオイラ、ボンがパーティーリーダーを務める『ボン・ファイターズ』のクエストだ! すぐにキャンセルして、オイラ達に献上しろ!」

 そう口々に言ったのは、何だか気の強そうな男の子達で―――その中でもフンフン得意げに胸を反らす、リーダー格と思しき男の子が、俺達に「依頼を譲れ」と言ってきたのだ。

「「………」」

 俺もエレンも呆気にとられた。

 何だコイツら。初対面で偉そうに。そして、おそらく大した身分でもないだろうに。俺もエレンも、似たような感想を抱いたことと思う。

 そもそもこの子達って、誰かと思えば………。

 先日、俺とエレンが初心者として冒険者の入門クエストに同行したメンバーの中にいた、同期、つまり同じ“初心者”組のうちの、四人じゃないか。

 こんにちは、だな。

 誰だったか思い出すと、彼らの風貌を観察する余裕も出てくる。

 四人ともすんごく弱そうだし、どう見たって俺やエレンよりも年下なのだが、偉そうなのは人数有利だとでも思っているからなのか。

 四人の内、リーダーを除く三人は誰かのおさがりと思しき安物の装備を身に着けているが、リーダー格の装備は新品の安物。リーダー格だから、普通はパーティー内でも少しだけ装備品が優遇されるということか。冒険者の新人がどういったものなのかとか、非常に勉強になる存在だ。俺は密かに、頭の中の教科書にこの光景を写真として収めておく。

 まぁ、それはさておき。

「何だって………?」

「あ、ちょ、おいエレン………」

 挨拶しようとした俺よりも先にエレンが手を出しそうだった。

 落ち着けよ、なにマジギレしてんだよエレン。こんなの挨拶みたいなもんだろ………。

「ソウジにまで偉そうにして、何なのアンタは!」

「うぉっ、な、なんだよこの女……!」

 そんな急にキレることかよとツッコみたいが、とにかくブチギレ寸前のエレンが彼らに食ってかかろうとする。

 放っておくと本当に刃傷沙汰になりそうだ。しかも一方的に男の子達が殴られる未来しか見えない。

「落ち着け、エレン」

 俺は必死に彼女を止める。

「放してソウジ! コイツ殴れない!」

「殴るな殴るな」

 エレンったら、ちょっと血の気が多いというか、何というか。

 確かに、団内だったらこの程度のケンカは起こり得るし、二、三発拳を交わしたら気が済んで互いに謝る文化が一部にある。だが外だったら、殴り合いのケンカが殺し合いに発展しないとも限らない。今のエレンに、そこまで先は見通せていないのだ。

 やはり育つ環境って大事なんだなと、俺は今さらながらに傭兵団という特殊な集団にいたことを自覚した。エレンも普段は穏やかな美少女って感じなんだが、何でか俺を馬鹿にするやつが現れると、まるで自分が代わりになるとでも言わんばかりに憤慨するのだ。

 友達想いのなんて良い子、とか感動してもいられない。どうしてそんな忠犬ムーブをかますんだお前は。

 もしかしたら彼女は団内の「側近」システムの話を真に受けて、本当に将来は俺の側近にでもなろうとしているのではないか。

 最近、ますますそんな気がしている。

「ちょ、本当に落ち着けよ! てかこんなとこで本気でブチギレんな!」

「先っちょだけ! ちょっと拳の先っちょだけだから!」

「ひっ……!?」

 頭に血が上ったエレンの怒気と、普通は卑猥なはずなのに今はどこか不気味に聞こえる言葉選びとに気圧(けお)される少年が印象的だった。

 エレンは俺やニール達の猥談を離れたところで聞いていて、後で不機嫌そうな顔で(あと、ちょっとだけ頬を染めながら)「なに話してたの」なんて聞いてくることがあるが、やっぱり聞いてたんじゃねーか。その語彙がいかんなく発揮される形だ。

「な、なんだよやんの……か………!?」

「殺されても文句言うなよ!」

「ヒィッ!?」

 そうなんだよ。これでもエレンって、実力だけは確かにあるんだ、だからその感じ方は正しいぞ少年………。

「やめろエレン、少年が本気で怯えてるから」

 でも、怒った女性って怖いよな。ブチギレエレンの剣幕に怯える少年の味方をしたくなる俺だった。

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