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【毎日更新】ユウシャ・イン・ワンダーランド ――ゼロ・ローグ―― ~異世界に来た元サラリーマン、異世界ライフのスタートは野盗の群れでした~  作者: むくつけきプリン
冒険者編

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新米冒険者として

 冒険者としての肩書きを手に入れたからといって何が変わるわけでもない―――というわけでもないのは、身をもって知ることになる。

 団内でも、冒険者としての肩書きを持つ者は意外と少ない。おそらく身の上だけで言えば不幸な者も多く、身分は不確かで、冒険者ギルドに行くという選択肢すら浮かばなかった者が大半だと思われるからだ。

 最近入団した人物にしろ、冒険者経験がある人間もいるが、得てしてここは「はぐれ者」の集まり。

 行き場のない実力者の吹き溜まりであり、社会で言えば「掃きだめ」もいいところなのだろう。

 だが、極悪かといえばそうでもない。オヤジの人柄を考えれば、実は入団させる人物に関してはかなり厳格な基準を持っているようだからな。俺のアニキ分達にも、まず悪人らしい悪人は存在しないし。

 汚い仕事もこなすことがあるとはいえ、それは仕事だと割り切っているから、こなすだけ。好んで、あるいは喜んでやるというわけでもないし。

 だから、俺のような血を見るのが苦手な人間にとっても、居心地が良いのだと思う。

「(冒険者も大したことないね)」

「……はは」

「(同じひよっこでも、ウチとソウジは一緒にしないでほしいよ)」

「ははは」

「(魔物が飛び出してきたら、すんごい魔法を見せて黙らせちゃおう?)」

「(そのくらいにしとけ、エレン)」

 隣から囁いてくるエレンだが、同意するのは怖いので苦笑しながら制止しておく。

「(魔物だってエキストラだったり、これ自体が何かのアトラクションかもしれないんだから)」

「(エキス……? アトラク……? それって、なに?)」

「(あ………まぁ、要するに『仕込み』かもしれないんだから、迂闊な行動はしないでおこうってことだ。大人なら、そういう配慮もできてこそだろ?)」

「(あ、なるほどね! さっすがソウジ!)」

 さて、そんな俺とエレンだが、今、俺達は冒険者の中でも初心者で作る部隊に組み込まれ、一応ながら「入門用クエスト」(要するにチュートリアル)に臨んでいた。

 内容は………まぁ、野山を散歩しながら、気を付けるべきことなど、およそ「生命と安全」に関わる基本的事項の確認作業って感じだ。「こういうところから魔物は飛び出してきたりするんだ。君達は気を付けるんだぞ」とか「この薬草は広く使われているものだ。擦過傷など軽いケガなら、生のまま使用しても数時間で完治する」とか、そんな講釈を延々と垂れ流しにされるわけである。

 俺とエレンにとっては、ぶっちゃけ全部、既知の情報だった。というより、傭兵団に入った者が、最初に叩きこまれる初歩の初歩である知識ばかりだ。

 そもそもなぜそんなものに俺達が参加しているか………だって?

 まぁ、既に俺とエレンは傭兵団として、数々の依頼はこなしていたわけだが、今回は冒険者としての初の依頼……クエストってわけだから、この辺はギルドの方にある決まり、つまりマニュアルに従った形になるな。安全だし、新鮮だから俺は構わないのだが、エレンはかなり不満そうだったりする。

「(あーあ。普段だったら今頃は、ソウジと魔法の研究とかしてる時間なのにね)」

「(まぁそう文句ばかり言わずに。こういうのも大事だよ。知ってる内容ばかりだけど、油断すると足元をすくわれて、どんな強者だって一瞬で死ぬだろうし)」

「(……そういうものなの?)」

「(そういうもんだよ)」

「(そうなんだ)」

「(そうそう)」

「(………ソウジが負けるところ、想像できないんだけど)」

「(バカ言うな。俺は最強じゃないぞ、きっと)」

「(………)」

 エレンがジト目で見てくるが、その信頼が怖過ぎる。

 俺としては異世界であり、常識の把握にすら一苦労の異郷でしかない。

 そんな世界である程度の戦闘力を獲得できたからといって、自分が世界最強だなんて思えるはずがないし、思っちゃいけないだろう。

 魔法がある世界だ。つまり、神秘がある。そして、どんな神秘を操るバケモノが存在するか―――分かったものではないのだから。

「(でも、この扱いはないんじゃない? 入門編くらい免除してくれてもよかったのに)」

「(この前ギルドのマニュアルちらっと見たんだけど、全員参加させることって記載があったぞ。向こうは仕事をしているだけだ、だから参加するだけ参加しておこう)」

「(………分かった。ソウジが、そう言うなら………)」

「(えらいえらい)」

「(ちょっ、子供扱いしないでよっ! 同い年のくせに!)」

 聞き訳が良いのを褒めるつもりで頭を撫でたら、手を振り払われた。やり過ぎたか。

 まぁ、そうだよな。子供からしたら「子供扱いするな」って感じだよな。エレンもまだまだ子供らしい、可愛いところがあって安心する。この世界の子供ってやっぱりマセている気がするし。

 今参加しているこのクエスト、本当に初心者用だから、エレンも退屈なのだろうとは理解できる。

 ただ、こういうのが大事だって、一つ一つの確認作業をそれとなくしっかり済ませてしまうようになると、自分も歳をとったのを実感するな。学生の頃だったら………学生の頃でもしっかり確認くらいはしただろうが、今のように、ガイドさん役の冒険者の話を一言一句違えず憶えようとはいなかっただろう。

 恩を着せられても困るので反応はほどほどという感じだが、内容は再確認のため、一応ちゃんと聞いている。

「「「「「ありがとうございましたー!」」」」」

 俺達初心者勢が日帰りの初心者用クエストからギルドに戻って来る頃には、すっかり夕暮れだった。

 ギルドから支給だと思われる素朴な食事を食堂で振る舞われてから、初心者用クエストとはいえ少額の報酬が生じた内から、ごくわずかな金額が差っ引かれているのを確認する。

 まさか保険でもあるまいし、この部分はなぜ引かれてるんですか、って確認したら、「あなたも食べたでしょう? 食事代です」ときたもんだ。

 ちゃっかりしてやがる、冒険者ギルド。

 まぁ、今度からは気を付ければ良いだけだ。社会人経験の浅い者でも、こうしたことに思うところのある人間にとっては、良い経験にもなるのだろう。こういうことってたまにあるよな、世の中には。

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