冒険者登録
後日、オヤジと相談してから、俺はアジトから最寄りの(それでも数日の移動が必要な距離の)冒険者ギルドを再び訪れていた。
「冒険者登録ですね。ではこちらの用紙にご記入の方お願いいたします」
受付のお姉さんから紙を受け取り、さらさらと。
この世界の文字、読めるだけでなく書けるようにもなっています、っと。
すぐ隣では、俺と同じようにエレンも冒険者登録をしている。
「少々お待ちください」
奥に引っ込んだお姉さんが戻って来るまでのしばしの間。
「ソウジ、冒険者になりたかったんだ?」
どこか不思議そうに問うエレンに、俺は力なく首を振る。
「いや、必要に駆られてだな。こうした方が都合が良い。冒険者達から見た傭兵団の心証を下げるのはマズいからな。オヤジもそこを分かってるから了承してくれたんだろう」
「うちの団にも何人か元冒険者はいるもんね」
「そういうことだ。忌避するものでもないなら、別に構わないだろう。それで傭兵団の仕事ができなくなると、多分怒られるだろうけどな」
「そうは言っても、オヤジにしては随分な勝手を許してくれるよね。やっぱりソウジ、信頼されてるんだ?」
「どうだかな」
なぜだか嬉しそうに微笑んでいるエレンだが………オヤジが俺を信頼している、か。
それはどうだろう。俺がいずれ傭兵団から去る身であるとはオヤジも知っているはず。
俺の気が変わらない内は………いや、もしかすると俺の心変わりを期待しているのだろうか。
まぁ、順調に絆されているわけだからな、俺も。既に五年ほどいるのだ、もう母校みたいなもんだろう。
それでも、元の世界に帰りたい願望が消えたわけじゃないが。
「あ、何か持って来たみたい」
顔を上げると、冒険者ギルド施設の奥から戻って来たお姉さんが、受付のカウンターにコトコトと二つのプレートのようなものを置いて見せてきた。
四隅に穴が空いており、紐を通せるようになっている、金属っぽい素材でできたプレート。
これが冒険者カードというらしい。
こなした依頼の数と難易度によりカードのデザインも変わるらしく、この辺は何というか、ほとんど昇給とか昇進のシステムに該当するだろう。人事評価は完全にギルドの預かりかと思いきや、著名な人物、及び上の方にいる実力者とやらの推薦があれば地位もアップするのだとか。ここまでは、まぁそういうものだろうとは思うが。
「本日から冒険者となるお二人に、私から説明を。まず、このプレートを身に着けるに際しては―――」
そこからお姉さんのチュートリアル的な説明が続き、十分ほど話を聞いてから、俺達は冒険者カードを受け取った。
「私共ギルドは冒険者様方のご健闘とますますの栄達をお祈りしております」
そんな感じで「頑張れよ」的なことを恭しく言われながら、俺とエレンはこの世界における『冒険者』という肩書きを手に入れたのだった。




