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【毎日更新】ユウシャ・イン・ワンダーランド ――ゼロ・ローグ―― ~異世界に来た元サラリーマン、異世界ライフのスタートは野盗の群れでした~  作者: むくつけきプリン
魔法研究・初級編

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小遣い稼ぎのつもりが、冒険者っぽくなってる

 近隣の湖に凶悪なトカゲの魔物が住み着いたというので向かったところ、情報とは違う、明らかに『竜』みたいな……いや、『小型の竜』みたいな種だと思われる魔物がいた。ソイツの首を、【ウォーターカッター】の魔法で切断。即座に絶命せしめ、依頼完了。首を持ち帰る。


 近隣の山に凶悪なダチョウの魔物が群れているというので向かったところ、情報にはなかった、明らかに三十を超える、信じられないくらい大量の魔物の群れがいた。数が多いし素早いので骨が折れる、しかもこちらを囲んできたソイツらは、俺の知っているダチョウよりはるかに頭が良いと思われたが、俺が「人間スプリンクラー」の要領で両手から【ウォーターカッター】を出しながらくるりと回ったら、あっさり全滅せしめ、依頼完了。死体処理に思いのほか時間がかかったが、計三十三にものぼるダチョウの首を、台車に積んで持ち帰る。運搬の方が大変だった。


 近隣の洞窟に凶悪な熊の魔物が出たというので向かったところ、情報では詳しくなかった、明らかに身の丈三メートルを超える『巨人』みたいな……いや、『熊のように太い胴体とゴリラのような長く太い手足、器用さを持つ、俊敏な大型の魔物』というものに出くわした。ソイツの心臓を、その胸骨ごと【魔装体術(マジックアーツ)】を発動しパンチ一発で爆散せしめ、依頼完了。切断・処理した首を持ち帰る。


 ………そんな風に、冒険者ギルドから来たらしい、冒険者もやりたがらないような高難易度・高リスクの依頼を俺が受けているのは、ひとえに傭兵団の収入を増やすため。

 我らが傭兵団のカシラでもあるオヤジどうやら王都にコネのあるらしいオヤジは、付き合いも多い分、金の出入りも激しい。時期と調子によっては、団内から一時的に金がなくなることもある。

 そんな時に、俺から腕試しがてら金を稼ぐ方法が何かないかと提案したところ、ニール達の伝手で冒険者ギルドの方から声がかかり、依頼書を兼ねた手紙が届くようになった、というわけだ。

 緊急性に関してはそれほどでもないものが多いが、難易度は信じられないくらい高いらしい。

 まぁ、手紙が届く度にいちいちやるかやらないかの返事をするのも手間だし、依頼を遂行したら証拠物品と手紙を持ってギルドに向かうことになる。


 ………で、今回、でっかい熊みたいな魔物の首を持ち帰った俺を、ギルドの職員と、ギルドの建物内にある食堂に居座る不良みたいな冒険者達が、一斉に見てきた。

 なんだ。文句あんのか。

「……?」

 とりあえずなぜそんなに見てくるのか分からないが、足を引っかけてきたりするやつはいなかった。

 察するに、ちょっと変な依頼をこなし過ぎたせいで、奇異の目で見られているのかもしれない。

「(ソウジ、心配ないよ)」

「(そうか?)」

「(アイツらはビビってるだけ)」

「(そう……なのか?)」

 俺の隣で済ました表情をしていたプラチナブロンドの美少女・エレンが、そう言ってなぜかふふんと得意げな顔になり、周囲を見回していた。

 やめてほしい。あんまり威張ると、痛くない腹を探られて面倒なことになるかもしれないし、因縁をふっかけられるかもしれない。こちとら、そこらの有象無象に割いてやる時間はないのだ。

 ………最近では、「こんなことをしていて俺は本当に元の世界に帰れるのか」という焦り、帰郷への想いというか郷愁すら思い出す頻度が減っているから、そのこと自体に焦りを覚えているというのに。

 ギルドの受付に顔を出し、その脇の台にどっかりと、依頼遂行の証拠物品を置く。デカい袋に包んだデカ熊魔物の首だ。血は抜いてあるので、ベチャベチャってこともない。思えば、こうした処理に俺は随分と慣れてきたものだ。

 ………まぁ、こうした血みどろな色々に、俺自身随分と慣れてしまったものだよなぁ、なんて思ったりはするが、未だに人を殺すことに関しては無理だ。俺個人に限って言えば、殺すのは魔物・獣限定。

「お、お疲れさまです、ソウジ様」

「どーも。これ、以来の熊の首です」

「あっ……ハイ、確認いたします、少々お待ちください」

 ギルドのカウンター。ギルドの建物はそもそも木造のオシャレな造りで、正面入り口から入った者を、真正面にあるカウンターの職員が出迎える構造だが、向かって左手には食堂が併設されている。依頼をこなして金を稼ぐ冒険者にギルドにも金を落とさせるためだろう。ちなみに右手の方は掲示板。ギルドのカウンター正面に向かって両脇に食堂と依頼掲載用の掲示板があるのが、「これぞ冒険者ギルド」って感じの基本的な造りだそうだ。

 たまに、昼間から酒盛りをやってる団体もいるが、今はいない。いや、赤ら顔の男は数人くらいだが、いずれも一人飲みだ。

「「「………」」」

 そんな酔っ払いでさえこちらをじっと見ているのは不気味だが。

 そういえば、俺達傭兵団はどういうわけか冒険者達と一定の距離を保っているわけだが………詳しい事情は知らない。色々あるのだろうな、オヤジやアニキ達にも。

「「「「「……」」」」」

 見られている。

 そもそも傭兵団が今まで積極的に関わろうとしなかったところに、俺が足しげく通っているのだから、珍しいというのもあるだろう。

 そして、要因はそれだけじゃない。

 まず、俺の持ち帰る依頼物品。いずれも高難度の依頼だというのは有名な話らしく、それをこうして度々持って来ることで注目されてしまっているのだ。

 また、隣のエレンもその要因だろう。

 彼女は美少女だ。おそらく、誰の目から見てもそうなのだろう。

 まだ齢十四とか十五とかそこらなのに、俺と同年代でありながらもう誰の目をも惹きつける美貌に育っている。

「(ソウジ、もっと胸を張っていいよ。ソウジには注目されるだけのスゴさがあるんだから)」

「(いや……エレンが美人さんだから注目されてるのは、大いにあると思うぞ……)」

「(えっ……!?)」

 エレンが驚いた顔で俺を見た後、分かりやすく身をくねらせた。

「(そんな、褒めても何も出ないよっ……!)」

「(はいはい)」

 嬉しそうだ。

 何ともチョロいというか、心配になるな。この先、ちょっと褒められたくらいでコロッといったりして、変な男に騙され酷い目に遭ったりしないだろうか。

 まぁ、エレンは俺と一緒に修行したのだから、俺も彼女の腕は分かる。彼女の腕っぷしは滅茶苦茶強い。その辺の男が余計な気を起こそうものなら木端微塵になってしまうだろうが………まぁ、心配はないか。魔法が使えずとも、その辺の成人男性なら容易に組み伏せる程度の膂力はあるからな。本当、この世界の強さの基準って滅茶苦茶だ。だから皆、対人戦闘では慎重にもなるのだろう。

「こちらが、今回の……報酬になります………」

 それはそうと、ギルドのお姉さんから金を包んだ袋を受け取る。え、なんでそんな感じなの……? と、俺は受付のお姉さんの態度に疑問を覚えた。

 といっても、クレームを入れるわけではない。

 何ともドン引きされているようなのが気になったのだ。こちらとしては悪いことをしたわけではなく、むしろギルドに貢献している形。本来ならばそのような態度を取られることはないはずで、やはりその点に疑問を覚えた。

「あの、何かありました?」

 報酬を受け取りつつ聞くと、ギルドの受付のお姉さんはちょっと困った顔をしつつ。

「いえ………ただ、冒険者でもない方に、このような依頼ばかり押し付けるのはいかがなものかという声が、ギルド内部でも上がっていまして………」

「なるほど」

 どうやらひとえに、心苦しさから来るものらしい………という性善説って感じの受け取り方もできるが。

 あるいは、嫉妬ややっかみかもしれない。冒険者でもないくせに、冒険者ギルドで有名になりやがって、的な。

 うーむ。これでは、傭兵団にとっては後々マイナスになるかもしれないな。例えば創作でも「オレツエー」みたいな作品は見受けられるが、どう考えたって世の中は他者との関係性でできているはずなのだ。

 その中で上手く立ち回らなければ、どんな無双の英雄だって最後には孤立し、失敗するのだ。

 世界は自分を中心に回っているわけではない。社会人ならおそらく誰もが理解しているはずのこと。同時に、知っといて、理解しといてよかった、と一種の安堵も覚える。

「すみません………また来ます。ちょっと上と相談したいことができました。依頼はいずれまた受けさせていただきたいと思いますが、今回はしばらくお休みをいただきたいです」

「はい、かしこまりました」

 そう言って互いに頭を下げたが、その時のギルドの受付のお姉さんの顔が、少しほっとしていたように見えた。

 やはり政治的なことが問題だったのだなと、ある種の確信を得て、俺はこの件を傭兵団に持ち帰ることにしたのだった。

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