服を買いに行く
この世界の製品はつくりがいい加減だったりすることが多い……というのは俺の住んでいる場所、及び地域の経済力のせいか? それとも市井の人々の物作りに対する意識の低さのせいか?
この間なんか長袖長ズボンで臨んだ薬草採取で、着ている服の繊維の隙間から薬草が肌に届いたらしく、肌がかぶれてしまったし。
「ソウジ、服買いに行こうよ。背も伸びたし、ちょうどいい頃合いじゃない?」
「ええ、いいよ、まだもう少し着れるから」
「そんなこと言わない! ほら、行くよ!」
何だか親っぽいことを言うエレンに街に連れ出された。
「ソウジはローブだろ」
「俺はチョッキがいいと思うぜ。動きやすいし、防刃のやつで胴体だけ守ってりゃ充分さ」
「……服はそれでもいい。だが防寒性能、そして帯剣性能を備えているのが最低条件だ」
「ベルトがあるだろ?」
「そのベルトを装備しやすいものにしろと言うことだ」
「ならローブで決定だな。残念だったなモッチ。チョッキはまたの機会だ」
「いや、チョッキなんて服やローブの下に着込めるだろ……なぁソウジ?」
「ん? ああ、そうだな。チョッキ着てローブ着て剣を差せばいいんだろ」
「テキトーだな」
「服装にこだわりがないだけだって」
この世界のファッションにおいて俺のセンス、及び元の世界の基準が正しいという保証はないからな。
この人達に任せておけば大丈夫だろうと思う。
なぜかやたらとローブを推すニールと、チョッキを推すモッチと、帯剣させたがるドラと。
………うん、なんかもう着せ替え人形みたいだが、別に俺はそれでもいい。いずれ元の世界に帰るにしても、それまで生き延びる装備品はどの道必要になる。
「………………………」
して、ずっとダンマリなエレンが気になったので、隣に目を向けて問うてみる。
「さっきからずっと黙ってるけど、どうしたエレン」
「………………………」
あら。目元に影を作ったエレンに、ギロリと睨み付けられましたね。
なんでご機嫌ナナメなのかな?
「ウチがソウジの服を見繕ってあげるって話だったのに!」
「そういう話だったか……?」
話の流れは………確か、街に繰り出そうとした俺達に、なんだなんだと構ってきたニールに始まり、モッチやドラもついて来ただけだが。
「(二人っきりじゃない………)」
「?」
エレンは小声で文句を言っていたが………二人っきりが良かったのか?
俺は賑やかでいいと思うけどな。
これも一つの思い出だ。別にこういうことがあっても―――あ。
異世界に戻るって、記憶は持ち越しってことでいいんだよな?
この世界に来た俺、なぜか身体が縮んでたけど、記憶はそのままだったし。
ならやっぱり、いずれ元の世界に帰るのなら、アニキ分達との楽しい思い出がもうちょっとほしいとか欲張ったらいけないだろうか。
「お、美味そうだな、肉串買おうぜ!」
「モッチ、お前またそれかよ………」
服を買いに来たのに屋台の匂いに釣られてフラフラと行ってしまうモッチに、ニールがゲンナリとしながらついて行った。
「むっ、あれは……!」
そして、何やらセール中の武器商が広げた風呂敷の上に、剣やナイフなど様々な刃物が並んでいるのを見つけて、ドラはそちらに。
「……結局こうなるんだから、普通にソウジと二人きりにさせてほしいよね、最初から」
「心配だったんじゃないかな、アレでも」
俺は中身はともかく外見は子供だし、彼らに関しては、この世界の常識に疎い俺の事情も(転移者、あるいは転生者であるという事情も)知っている。
加えて、エレンは腕っぷしは滅茶苦茶強く成長したが、見た目は美しい、ただの可憐な美少女だ。
身内として、あるいは団内の年長者としての部分が彼らを動かしたのではと思う。
まぁ、ただ面白そうだからついて来ただけかもしれないが。
「じゃあ、服は皆で選ぶから後で服屋に集合ってことにしてさ、ウチらも見て回ろうよ!」
「ああ」
ひとまずニールに一言だけ断りを入れて、はしゃぐエレンに手を引かれながら俺も歩き出した。
俺はエレンと街を見て回り、露店を冷やかし、昼はその辺で食べて、そして最後は服屋でニール達と合流。
二人で街を見て回っている間、エレンの機嫌はすこぶる良かった。
「ソウジにはローブだろ」
「チョッキもな」
「新しいベルトも必要だ」
「ソウジ、新しい服はこっちがいいと思う♪」
「………………うん、うん。皆ありがとう」
とりあえず、俺の伸びつつある身長に合わせた新しい装備品一式は、こうして決まったのだった。




