崩れていく平穏
やっと戦いが始まりそうです。
ー 辺り一面、白い世界が広がる中で二人の男が対峙する ー
ー お互いの武器を構え、相手が動くのをただひたすらに待っている ー
ー 先に動いたのはどちらだったか ー
ー 気合いと共に動き出した二人 ー
ー 裂帛の気合と共に二条の光が交錯し、夜の闇を切り裂いた ー
「それで、これからどうするつもりなの?」
雹華はいかにも不機嫌といった口調で竜武に尋ねた。
香苗に呼び出された竜武についていったのは確かに雹華自身だ。...だが、あんな話に付き合わされるとは聞いていないというのが雹華の意見だった。
(はぁ...ほんとに、何であんな話を...。それに竜武は伝えてくれなかったし!...ああ、もう!イライラしてきた!)
考えれば考えるほどイライラしてくる雹華だった。
当の竜武本人はというと、こちらは比較的冷静だった。
自分の異変が並大抵のものではないことには、薄々気づいていた。
流石に魔皇化だとは思っていなかったが…。
それと、雹華があそこまで怒ったのも予想外だった。
(魔皇化、か。原因が分かったのはいいけど、内容がデカすぎるな…。正直これから、面倒なことになりそうだな。)
「...竜武?人の話聞いてる?」
この先の事を考え始めた竜武の耳に雹華の声が響いた。
「ん?すまん、聞いてなかった。それで、何だ?」
「だ・か・ら!これからどうするつもりなわけ?」
「ああ、それは今考えてたところだ。とりあえず俺は、力の制御が第一だな。」
「これからの方針についてだけど、晃さん達に話してみたら?」
「親父達に話す?協力してくれると思うか?あの2人が。」
「分からない。でも、何もしないよりマシだから。それに、香苗先生が気づいてあの2人が気づいてないってことはないと思うし。」
「それもそうか。まあ、どうなるかは分かんねえけど、話くらいしてみるか。」
ある程度この先の確認を確認をしながら、2人は家路を急いだ。
... だが、いくら話をしても2人の中に芽生えた不安が消えることは無かった。
「ただいまー。」
「ただいま帰りました。」
家に到着した竜武達は、荷物を置くために部屋に戻り、そのままリビングに向かった。
リビングからは、美味しそうな料理の匂いが漂っていた。
「おかえり。こうやって2人の帰りを迎えるのも久々だね。」
リビングに入ってきた竜武達を迎えたのは、霧音ではなく、晃だった。
「ただいま、親父。母さんは?」
「母さんなら、飯食べてからこたつに潜り込んで出てきてないぞ。」
「おい...。いいのかよそれで...。」
「いいんじゃない?ゆっくりできるのも久しぶりだろうから。」
雹華は、霧音のことを咎めなかった。竜武もあまり気にしていなかったので、そのまま食卓につき、夕飯を食べ始めた。
「それで?竜武達は何をしてたんだい?」
竜武と雹華の食事が一段落したところで、お茶を飲んでいた晃が、何気なく尋ねた。
「ん?ああ、香苗ちゃんとちょっとした話をな。」
久しぶりに会話するなと思いながら、竜武が答えた。
「そうか、香苗とね…。それで、お前は俺に言いたいことがあるんじゃないのか?いや、正確には俺達に、かな?」
「!?やっぱり気づいてたか...。そうだな、確かに話がある。それも結構大きなことなんだが、それも?」
「ああ。魔皇化だろ?お前以外の奴にも何人か会ったことあるし、見抜くのは簡単だったな。魔力の流れが独特なんだよ基本。」
竜武は、晃が気づいていた事を確認できてホッとしていた。
(気づいてたなら、話が楽だな。)
「親父。この力のことで相談があるんだけど?」
「相談乗るぞ。しばらく予定無くて暇だしな。」
「サンキュー。まずこの力についてだな。」
「どうするつもりなの?あいつらには教える?」
雹華は、竜武が魔皇化についての情報をどうするつもりなのかが気がかりだった。
仲間は増やしたい。...だが、最悪の場合そこから広まることもある。
「この事は、あいつらにもしばらく黙っとく。今後の見通しが立たないうちに、巻き込む訳にはいかねえだろ。」
「そうだな、しばらくそれでいいだろ。お前が自分の力の状況を把握するのが先決だ。とりあえず、そこまで意識を割かずとも制御できるくらいになれ。」
「あとは、魔皇化の情報を嗅ぎつけた馬鹿共がやってきた時どうするかねも考えた方がいいんじゃない?
香苗先生を頼るにしても限度があるし…。」
「ある程度は俺と霧音でなんとかするつもりだ。だが、もし取りこぼしたのがそっちに流れたら、それはお前らでどうにかしろ。」
「まあそれが妥当だな。別にこの力を使わなくても戦えるしな。」
「油断はするなよ。力の制御をしつつ戦うんだからな?何があるかわからん。」
「了解。一応、心に留めとくよ。」
「だいたい纏まったか。...はぁ、何でこんな事になったんだか…。元々魔力がすごく多かったから?」
「それもあるだろうけど、それだけじゃないね。多いだけなら、霊力の多い雹華ちゃんに、同じようなことが起きてもおかしくないだろ?」
「確かにそうですね。という事は魔力だけにある何らかの性質とかですかね?」
「詳しいことは分からないんだ。一応魔力特有っぽいけど。」
魔皇化の謎は解決できなかったが、今後の対策の目処はある程度立ったため、3人は最近の出来事などの話をした。
突然、街の一箇所で大きな魔力が迸った。
3人は当然それを感じ取っていた。こたつで丸くなっていた霧音も、魔力を感じ取って飛び起きた。
「...っ!?何だ今の!?」
「結構大きいわ。まったく、驚いて起きちゃったじゃない!」
霧音は、魔力そのものよりも起こされたことに怒っていた。
「まあいいわ。あんた達行ってきなさい。」
眠そうに目を擦りながら言う霧音。
竜武達が行く。それは自分達2人に制圧しろということか。
思わず顔を見合わせて固まる2人に霧音がキレた。
「さっさと行ってこい!被害が出たらどうするのよ!」
竜武は、今1番被害を被っているのは自分たちだと思ったが口には出さなかった。
あのローブを羽織り、2人は夜の闇の中へと駆け出した。
「この辺りか...。」
「そうね。でも、何でまったく人の気配がしないの?」
その時、雹華がその言葉を言い終わるのを待っていたかのように先ほどよりも強い魔力が立ち上った。
「!?さっきより強い!不味いな…。」
「戦ってるのかしら?それにしては、不規則な...」
「...っ!?雹華!」
探していた人物であろう人影を見つけた竜武は、雹華を呼んだ。
その男は、長い剣を持っていた。そのすぐ奥には脇腹を抑えて倒れ込む獣人がいた。
男は何も言わずに剣を持ち上げると、目の前の獣人目掛けて振り下ろした。
だが、剣が獣人に届くことはなかった。
男が剣を振り下ろしたのを見た竜武は、咄嗟に間に入り生成した刀で受け止めていた。
剣を受け止めたまま、竜武は叫んだ。
「何してんだ、てめぇ!」
また投稿まで空いてしまうかもしれませんが、気長にお待ちください。




