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俺の枷共(パーティー)は煩わしい  作者: 湯気狐
四章 〜生真面目眼鏡と冒険者認定試験〜
39/45

さようなら始まりの町

 この世界にやって来てからどれくらいの月日が経過したんだろうか。


 パチンコ店でフィーバーしてたらいきなり異界に召喚されて、日々付き纏って離れないポンコツ女神と知り合って、一文無しのところを真の女神であるリィアさんに拾われて――今となっては懐かしい苦い思い出だ。


 過去にリンクスやサーヴァントといった様々な街に赴いたわけだが、やはり一番思い出が詰まっているのはこの町だ。


 世界を轟かす変態怪盗のピノと出会って馴染みになったり、報酬金の少ないアルバイトのような町内クエストで汗水流したり、ミルクと常にいることで周りから夫婦だ何だと冷やかされて駄目夫呼ばわりされて――今思い返してもロクな思い出がない。


 幸せな日々とは言い難い非日常。周りに怒鳴り散らしてばかりの記憶しかほぼ覚えていないし、唯一良かったことと言えばリィアさんと出会えたということのみである。


 客観的意見を述べれば、時間を無駄にしていたとしか思えない。


 ただ、そんなろくでもない時を過ごしていたとはいえ、馴染み深い町であることに変わりはないのだ。


 住めば都という諺があるように、多少の愛着が無いと言えば嘘になる。


 俺の日常が一変することとなった始まりの町、ウンターガング。


 今日、数多くの思い出の詰まったこの町に、別れを告げる日がやって来た。


「よし、こんなもんか……」


 リィア家の仮部屋にて自分の荷物をまとめ終えて、お世話になった部屋をざっと見渡す。


「お世話になりました」


 誰にお辞儀をするわけでもなく、部屋に向かって頭を下げて部屋を出た。


 さて、後は他の馬鹿共の準備が出来ているかどうかだが……。


 まずはミルクの様子を確認するべく、俺の隣の部屋のドアを開いた。


「こっちは終わったぞ。準備出来たかポンコツ」


「あっ、ビャクト様。ちょっと待ってください、もう少しで掃除が終わりますので。それとさりげなく女神を外さないで下さい……」


 ミルクも既に荷物はまとめ終えていたようで、俺と同じくお世話になった部屋を掃除中だった。こいつらしい殊勝な心掛けだ。


「お前のことだから最後の最後までリィアさんに頼って掃除してると思ってたわ。少しは成長してるじゃねぇか」


「あはは……。不器用なりに色んな町内クエストを受けていましたし、これくらいはできて当たり前にもなりますよ」


「そうか。つまりお前が自立できるのももう少しというわけか。てことは、ポンコツと別れられる未来も近いってわけだ。今晩は赤飯でも炊こうか……」


「それはそれ、これはこれですよ! 嫌ですからね! 今更ビャクト様とお別れするつもりはありませんからね! それと女神は付けて下さいと何度も言ってるのに!」


「ギャーギャー喚くなっての。早く掃除終わらせないと置いてくからな」


「またそんな意地悪言って、私は分かっているんですよビャクト様。今のはビャクト様のツンデレ言葉であり、いくら掃除に時間が掛かろうとも私を置いていくようなことはしな――」


 話を遮るように静かにドアを閉めると、ドアの向こうから急にドタドタと騒がしい物音が聞こえて来た。


「あぁゴミが!?」と慌てふためいた声まで聞こえて来るが、遅れたら遅れたでこいつは置いていくことにしよう。


 続いて、ミルクの向かい側のピノの部屋(物置部屋その一)。


 ドアを目前に部屋に入る気すら失せるが、声を掛けないわけにもいくまい。


 一応ノックをしてから返事を待つ――が、反応が無いので勝手にドアを開けて中に入った。


「ふ〜む……迷うな……」


 部屋に入った矢先に見えたのは、床一色に散りばめられた女性物のパンツ一色。


 そして、それらを眼前に胡座をかいて顎に手を当てて悩んでいる変態の姿だった。


「何枚持ってこうかなぁ……。でも一枚一枚が思い出の詰まったパンティだからなぁ……。優先順位とか決められないしなぁ……。マジどーしよっかなぁ……」


「どうにかした方がいいのは煩悩に塗れたお前の頭の中身だろ」


「ねぇビャクト、なんかそれなりに大きい鞄とか持ってない? 自分の子供を置き去りにしていくことなんてできないよ。だって私は親だもの……」


「いっそ子供(パンツ)ごと(おまえ)を置き去りにしていきたいわ。怪盗稼業から足を洗ったと思いきやこの様かよ」


「んや、これは盗んだパンティじゃないよ。全部私が作り上げたお手製の我が子達でさ。ほら、その証拠に私のサインが入ってるっしょ?」


 よくよくパンツを見てみると、一つ一つにピノの名前が刻み込んであった。売り込むわけじゃあるまいし、無駄な手際だ。


「これとか私のお気に入りでさぁ。是非ともエロエロボディのルティーナとかに穿いてもらいたいね」


「俺の目にはパンツじゃなくてただの紐にしか見えないんだが……」


「何を言うか、立派なパンティじゃないか。ただし、何も隠せないパンティだけど」


「だから紐じゃねぇか! せめてパンツとしての役割を果たしてるやつをピックアップしろよ!」


「しょうがないなぁ……。じゃあこれとかは?」


 求めていないのにわざわざチョイスしたパンツを手渡ししてくる。何の時間なんだこれは。


 両端を摘んで広げてみると、可愛いフリルのついた普通の黄色いパンツだった。


「そうそう、こういうまともなやつならまだマシ……」


 しかし目を凝らして観察してみると、パンツの中心に縦に裂けた割れ目があった。間違いなく意図的に開けられている。


「あっ、気付いちゃったそのカラクリに? お洒落なパンツに見せ掛けて、その実体は男を興奮させる性行為用の勝負パがぁ!?」


 セクハラパンツをピノの喉の奥に思い切り突っ込んでやり、呼吸困難になった変態を見捨てて部屋を出た。


 ピノでこの有様だと、他の連中も時間を無駄にしたアクションを起こしている可能性が高い。


 出発の用意すらままならないともなると、これから本当に冒険者稼業で出稼ぎできるのか不安になってくる。一刻も早く変態共の対処をせねば。


 残る部屋は俺の部屋の向かい側にいるルティーナの部屋(物置部屋その二)のみ。


 こいつの場合は何をして来るか全く予想が付かないため、一切油断できない。


 一応警棒を右手に携えて、左手の甲でコンコンとノックする。


 しかし案の定返事は無し。やはりこっちから開けなくてはならないようだ。


 ドアのすぐ先に奴の気配が無いことを確認しつつ、静かにゆっくりとドアを開いた。


「Zzzzz……」


 普通にベッドで爆睡していた。しかも全裸で。


「神経質になり過ぎていた自分が恥ずかしい……」


 いつもと雰囲気が変わっており、実に穏やかな寝顔でスースーと眠っている。身体付きは大人の女性そのものだが、顔はまるで純粋無垢な幼子のようだ。


「ったく、しょうがねぇな……」


 普段のこいつなら容赦無く叩き起こしているところだが、こうも穏やかに眠られているとそれも憚られる。どうやら俺も鬼じゃないなかったようだ。


「おい、起きろルティーナ。今日は引越しする日だぞ。とっとと起きて支度しろ」


「Zzzzz……」


 眠りが深いのか、どれだけ揺さぶっても起きる様子が無い。一体どうしたものか……。


「…………ん?」


 乱暴な手段を使わずに起こす方法を考え込んでいると、ふと全身にピリッと静電気のようなものが流れたような感覚がした。


 その直後に平衡感覚が乱れて立っていられなくなり、全身から力が抜けてその場に尻餅を突いてしまった。


「野郎やりやがったな……」


「…………あら、引っ掛かったみたいね」


 その寝顔は女優顔負けの小芝居だったのか、ずっと眠りこけていたはずのルティーナがパチリと目を開いて目を覚まし、ニヤニヤとお得意の笑みを浮かべた。


「最近めっきり大人しくなっていたと思った矢先にこれか。まだ諦めてなかったのかお前」


「当たり前じゃない。ダーリンと出会って間も無い頃はずっと警戒されていたから、気が緩むのを見計らっていたのよ。お楽しみはじっくり楽しんだ方がお得でしょう?」


 正直油断していた。こいつの目的が自然消滅しつつあると何処かで期待していたからなのか、こうもあっさり罠に嵌められるとは……。


 鎧騎士のクレアと戦っていた時といい、今回の俺の有り様といい、目に見えない状態異常魔法ってのは厄介なことこの上ない。しかもその中で本人は動けるというのだから、チート級の魔法と言っても過言じゃない。


 動けなくなっている俺を担ぎ上げて来ると、仰向けになるようにベッドの上に倒された。


 まずいぞ、前回と同じで今回も何の対策もできてない。前の時のようにミルクが助けに来てくれればどうにかなるものの、生憎あいつは自分の部屋を掃除中だ。救済の望みは限りなく薄い。


「ま、待て、落ち着けルティーナ。こんな朝っぱらから盛る馬鹿がいるかよ。節度ってもんを弁えろよ」


「性行為に朝も夜も関係無いわよ。人によっては一日中してる人もいるんだから」


 ルティーナもベッドの上に上がって来ると、俺に覆い被さるようにうつ伏せになって密着して来た。無駄に大きな胸の感触が悍ましい。


「この前は前座だけで終わって不完全燃焼だったけど、今日はゆっくりできそうね。さて、何処から攻めてあげましょうか……」


 イヤらしい手付きで身体中を(まさぐ)って来て、俺の全身に鳥肌が立つ。これは洒落にならん。


「ル……ティーナ! 頼むから話聞いてくれって! 丁度良い機会だ! 改めてお前に一つだけ聞きたいことがあるんだよ!」


「時間稼ぎのつもりかしら? でも、良いわよ。敢えて聞いてあげるわ」


 俺の身体を触るのを止めてくれると、人の身体の上に乗ったまま頬杖を突いた。


「それで、聞きたいことっていうのは?」


「……お前の目的の話だよ。なんでお前はそこまで強者を追い求めてんだ?」


「そんなことをわざわざ聞きたかったの? 別に深い理由なんてないわよ。ただ純粋に腕の立つ男が好きってだけよ」


「それが本当だとしたら、俺以上に相応しい相手がいるだろうが。恐らく俺よりも強い強者ってのが」


「それは一体誰のことかしら?」


「現役の勇者だよ。初代魔王を討伐するという偉業を成し遂げてるくらいなんだ。お前に最も相応しい相手だと思うんだが?」


「勇者……ね」


 さっきまでご機嫌だった様子が『勇者』の一言で一変し、何を思ってか表情が曇った。ルティーナらしくもない暗い顔だ。


「最も相応しい相手だなんて、ダーリンも皮肉なことを言うわね。むしろ私と勇者は水と油よ。何せ私は魔族だもの」


「魔族だからなんだってんだ、人も魔族も対して変わらねぇだろ。勇者もそんな細かいことは気にしないと思うんだが?」


「いいえ、それもむしろ逆よ。何故なら魔族にとって勇者は“この世で最も恐れている存在”なのだから」


「それはどういう――」


 と、肝心な部分を聞こうとしたところで口元に人差し指を立てられた。


「この話はもう終わりよ。それより今はダーリンとの触れ合いを楽しむ時間なんだから」


 強引に話を打ち切られて、俺が着ている服を脱がせ始めた。


 上に着ている服を全て剥ぎ取られて上半身が露出すると、胸のところに頬擦りをして来る。もっとエグいことをして来ると思っていたから拍子抜けした。


「私、人肌の温もりって好きよ。こうしているだけで不思議と癒されるんだもの」


「……甘え好きってか」


「フフッ、そうね。最後に甘えたことなんて覚えてないくらいだし、拗らせていたのかもしれないわね」


「その口振りから察するに、元々甘えられる相手がいたのか。大方家族の誰かなんだろうが」


「……嫉妬?」


「なわけねぇだろうが!」


「フフッ、冗談よ。別にそんなことはどうでもいいじゃない。今の私はダーリンさえいてくれればそれで良いのよ」


「また話逸ら――ぐむぅ!?」


 またもや油断していたところを付け入られ、急接近して来るや否や口付けを交わして来た。


 口と口を合わせるだけのソフトなキス。一向に離してくれる気配が無く、徐々に息苦しくなっていく。


「ぷはぁ!?」


 ようやく解放されると、空気を求めて冷静に深呼吸をする。本気で窒息するかと思った。


「これでダーリンとキスするのは二回目ね。そろそろ何か感じるものが出て来たんじゃないかしら?」


「いつも通り不快感しか感じてねぇよ! 今すぐにでもうがいしたい気分だっつの!」


「……照れ隠し?」


「えぇ加減にせぇよお前!」


「くくっ、あははははっ!」


 珍しく大声で笑い上げる魔女。こっちは怒り心頭であることを気にもせず、実に楽しそうに笑いやがる。それこそまるで幼子のように。


「やっぱり私、貴方のことが好きだわ」


「俺は嫌いだけどな! つーかいい加減どけや!」


 いつの間にか身体に力が入るようになっていて、強引にルティーナの身体を突き放して立ち上がった。


「あら、効果時間が切れちゃったのね。残念だけど今日はここまでみたいね」


 それ以上何かをしてくることも無く、ルティーナはクローゼットを開けていつもの下着を身に付けて、その上にローブを着込んだ。


「ルティーナさーん、こちらにビャクト様は来てませんかー?」


 コンコンとノックの音が聞こえて来ると、掃除を終えたらしいミルクの声が聞こえて来た。どちらにせよ時間切れだったようだ。


「ダーリンならここにいるわよ。入って来ても良いわ」


 ルティーナが返事を返すとドアが開かれて、ミルクに続いてピノもやって来た。既にどっちも支度を終えていたようだ。


「「あっ……」」


 二人は俺とルティーナを交互に見つめて来ると、気まずそうに眉をひそめて苦笑した。


「すいませんビャクト様、また空気読めてませんでしたね私」


「ごゆっくり続きを楽しんで下さいませよ。私は天井裏から覗くんで」


「いらん気遣いだ!」




〜※〜




 実家住まいのシフォンとも合流を済ませた俺達は、リティアさんが手引きしてくれている馬車を借りに行くべく、苦い思い出のあるレンタル馬車小屋を訪れた。


 既に手配は済んでいたようで、前に借りた馬車より一回り大きい馬車を用意してくれていた。道中の魔物の襲撃のことを考慮した上で、頑丈さを強化してあるらしい。


 荷物を全て馬車の中に積み込んだところで旅立つ準備を終わらせて、後に俺達が馬車の中に入り込む。スペースは十分に広いので、ぎゅうぎゅう詰めでイラつく心配は幸い無かった。


「何だかあっという間の期間でした。ついに行ってしまうんですね皆さん」


 俺達が引っ越すことを何処かで嗅ぎ付けたのか、リィアさんと町長を筆頭とした何人かの住民達が見送りに来てくれていた。


 この人達ともしばらくの間お別れか。基本的にディスられた記憶しかないが、今となっては良き思い出――とは思えないなぁ……。


「私としては皆さんとずっと一緒に暮らしていたかったんですが、ビャクトさんの都合のことを思うと我儘を言うわけにはいきませんよね」


「リィアさん……すいません」


 俺の天使的存在のリィアさんが涙ぐみながらも俺達を気遣って手を引いてくれる。こっちまで貰い泣きしてしまいそうだ。


「うっ、ぐすっ、リ、リィアざん……。今まで本当にお世話になりまじだ……」


 俺が貰い泣きをするまでもなく、代わりにミルクが顔の穴という穴から液体を垂れ流して号泣していた。こんな顔を見せられると嫌でも泣く気力が消え失せる。


「リィア、思い出の品として下着を一着貰っちゃったけど許してね。この下着をリィアだと思って御守りにするからさ……」


「ピノさんは最後までピノさんなんですね……。今回は別に構いませんけど、今後は控えるようにしてくださいね?」


「…………」


「そこは空気を読んで頷けよ!」


 最後の最後まで迷惑掛けてすいませんリィアさん……。


「今生の別れでもないんだし、寂しくなったらまたここに来ればいい話よ。また会いましょうリィア」


「えぇ勿論! 今度また色々教えて下さいねルティーナさん。次回は男を手玉に取る方法その三をご教授願いたいです」


 俺の天使になんつー教育してんだこのビッチ。


「お前は本当に悪影響しか及さねぇな……」


「私なりの強い印象の残し方よ。ダーリンも見習ってみる?」


「間に合っとるわ!」


「強い印象を残す……ハッ!? つまりここで今私が物理的に一肌脱げば、ここにいる皆さんに露出狂の変態という印象を残すことができるわけですね!? そうなれば私を見る目が一生差別的なものに――」


「脱ごうとした瞬間に馬車から叩き出すからなお前」


「それは困ります……が、それもまた一興と思えてしまう! あぁ、このジレンマは一体どうすれば解消されるのでしょうか!? どなたかに一発ぶん殴って貰えば思い付くかもしれないのですが……」


「……そんな見つめても殴らないからな」


「焦らしプレイ! あぁっ、辛抱堪りません!」


 まともな別れの言葉すら口にできないのかこいつは。最近はよりドMの傾向が悪い方向に傾いてきている気がしてならない。


「こいつらに構ってたらキリが見えないんで、そろそろ行きますね。それじゃ改めて、お世話になりましたリィアさん」


「おい待て小童。儂には何も言うことはないのか」


「長生きしろよクソジジィ」


「誰がジジィじゃあ!!」


「はい出発〜」


 達者に暮らせよ爺さん。あんたならまだ三十年くらいは余裕で生きていけるだろ。


 逃げるように馬車を発車させて、次なる新天地を目指して広大な大地へと旅立つ。ここからしばらくは長旅だ。


「で、次の目的地まではどんくらい掛かるの?」


「リティアさんの話だと一週間くらい掛かるらしいぞ。それまではしばらく野宿だな」


「道中でトラブルに巻き込まれなければ……の話でしょう?」


「その時は是非私にお任せ下さい! 進んで皆さんの盾となり、土台となり、犠牲となりましょう!」


「シフォンさん、犠牲になるのはNGですからね?」


「…………」


「ん? そんな微妙な顔して、どうしたんですかビャクト様?」


 冷静になってようやく気付く。一週間も馬車暮らしということは即ち、一週間も常にこいつらと顔を合わせていなくてはならないということに。


「察してあげなってミルク。男が神妙な顔付きで寡黙になる時ってのは、大抵エッチな妄想に浸ってるんだよ」


「ピノさんが言えた台詞じゃないと思うんですけど」


「じゃあ溜まってるんじゃない? 四人の美少女に囲まれてもどかしい気分になってんでしょ」


「あら、そうなの? だったらダーリン、今からでもさっきの続きをしてあげても私は構わないわよ」


「欲求不満になったなら言って下さいビャクトさん。私は如何様なプレイであろうとも喜んで受け入れますから」


 ……持ってくれよ俺のストレス。せめて目的地に辿り着くまでは。




〜※〜




「ねぇねぇクロマ。ちょっと耳寄りな話があるんだけど聞かない?」


「……なんだ藪から棒に」


「何でも近々新参者の冒険者がこの街に来るんだって。しかもアタシらの家の近所らしいのよ」


「だからどうした」


「相変わらず釣れない反応ね。で、その新参者の冒険者の話なんだけど、重要なのはここからよ。その人達の認定試験を受け持ったのがリティアさんらしくてさ。全員と実際に手合わせしたんだって」


「話が見えないな。何が言いたい」


「クロマも知ってるでしょ? リティアさんの認定試験は一対一の実技だって。“神速突き”の異名を持つリティアさんとタイマンで戦って、勝てた人は手の指で数えられる人数しかいない。そんな彼女を相手にその新参者達は一人残らず勝ったらしいのよ」


「腕が立つ新参者、という話か。俺にはどうでもいい話だ」


「バッカ、最後まで話を聞きなさいよ。リティアさん本人から直接聞いた話なんだけど、四人中“二人”がそんじゃそこらの冒険者とは比較できないくらい強かったみたいなのよ。で、その二人の似顔絵を貰って来たんだけど……見る?」


「興味無い」


「あら、そんなこと言っちゃっていいのかしら〜? 悩みの一つが解決するかもしれないのに〜?」


「……何の話だ」


「とにかく見なさいよ、ほら」


「……っ!」


「ほ〜ら、そういう顔すると思った。つまり、ようやく決定的な手掛かりを掴めたのよ。皆に隠れてこっそり探していたみたいだけど、アンタ不器用だからバレバレなのよ」


「その新参者達がやって来る日時は判明しているのか」


「ん〜、多分三日か四日後くらいだった気がするわ。で、どうするの?」


「決まっている。この目で見つけ次第……殺す」

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