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俺の枷共(パーティー)は煩わしい  作者: 湯気狐
四章 〜生真面目眼鏡と冒険者認定試験〜
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冒険者認定試験 後編

「眼鏡ちゃん一旦タイム。ちょいと作戦立てる時間頂戴な」


「いくら足掻いても無駄だと思いますが……。いいでしょう、お好きにどうぞ」


 このままでは詰むと悟ったのか、ピノは一度戦闘を中断させると、ルティーナとシフォンを集めてひそひそ話を始めた。


「作戦を立てるのは一向に構わないけど、何か良案でもあるの?」


「案? はははっ、何を言ってるんだいルティーナ。私は見切り発車な人間だぜ? 作戦なんて考えられるわけないじゃん。そういうわけなんで、二人共なんか良い案出して」


「清々しいとすら思わせてしまうくらいに他人任せですね。ですが私に良い考えがあります。まず私が囮になって一方的にボコられるので、その隙に私諸共お二人で――」


「ルティーナって参謀役的なイメージあるじゃん? だからここは一つ、ルティーナの高貴なる知恵をお借りしたいところなんだけど」


「無視! 圧倒的無視! そんな扱いも堪らない!」


 俺だけでなくピノ達からすらも無言の拒否をされるドMメイド。


 勝手に暴走するような奴だし、あいつにチームワークは無理そうだ。


「正直なことを言うと、私は戦いというものを好ましく思っていないの。参謀役だなんて言っているけど、私も作為的な“人間”というわけではないわ」


「え〜、だったらどうすんのさ。このまま有象無象のまま攻め込んだところで、全員串刺しにされるのがオチだよ」


「……そんなことはないと思うわよ」


「え?」


 ルティーナはくすりと笑みを浮かべると、リティアさんを見据えてゆっくりと歩み出した。


「ちょいちょいルティーナ? 何するつもり? 手ぶらで突っ込んだら私みたくなっちゃうってば」


「…………」


 ピノに返事を返すことはなく、ルティーナはただゆっくりとリティアさんに近付いていく。


 ルティーナが接近して来たことで、リティアさんの目付きがより一層鋭くなる。


 実力者としての勘が疼いたのか、さっきまでと様子が一変した。


 余裕が無くなり、集中し過ぎてるが故にこめかみから汗を流しているのが見える。


「作戦はいいんですか? まだ何も思い付いていないように見えますが」


「お気遣いは結構よ。元々作戦なんて必要ないもの。何故ならこの試験は、個々の力を示せば良いだけの話なんだから」


「そうですね。一斉に掛かって来てくださいとは言いましたが、それはチームワークを見るためではありません。今回見定めるのはあくまで個人の実力。団結を強制してはいません」


「そうよね。だったら……」


 ルティーナの笑みが微かに歪み、恐怖という感情が表情に写り込んだ。


「私だけさっさと合格させてもらうわ」


 ルティーナは意を決した発言をすると否や、急に動きを加速させてリティアさんとの距離を急速に詰めに掛かった。


 急な動きと雰囲気の変化に一瞬戸惑いを見せるリティアさんだが、すぐに集中力を取り戻してレイピアを突き放った。


 しかしルティーナは、神速と謳われているであろう突きを、左手で呆気なく掴み取ってしまった。


「なっ!?」


 レイピアの刀身を引っ張ってリティアさんを自分側に引き寄せ、右手で首を鷲掴んで地面に叩き伏せた。


 ルティーナにしては珍しい荒技だ。リティアさんも何が起こったか分からないといった様子が伺える。


「動かない方がいいわよ。貴女の細い首程度なら、容易くへし折れるだろうから」


「っ……!」


「で、どうなの? こうして貴女を瞬く間も無く再起不能にしてみせたのだけど、これで合格は貰えるのかしら?」


「……そう、ですね。文句の付け所もなく合格と言えるでしょう」


「そう、それは良かったわ」


 ルティーナは首から手を離して起き上がると、踵を返してピノ達を見据え、いつものニヤついた笑みを浮かべて言った。


「じゃ、後は頑張ってね二人共」


「「…………」」


 後は勝手にやってくれと言わんばかりに、ルティーナは俺の隣へと戻って来た。


 ピノもシフォンも微動だにせず固まっていたが、やがてピノがそっと口を開いて、


「裏切り者ぉぉぉ!!」


 と、涙ぐみながら悲痛の叫び声を上げていた。


「抜け駆け式!? これ抜け駆け式の試験だったわけ!? 言えよ事前に!」


「落ち着いてくださいピノさん。残るは私達二人になってしまいましたが、二人だけでもやれることはあるはずです。というわけで、やはりここは私を囮にする作戦でいきましょう」


「うぐぐっ……。こんな予定じゃなかったのに、これじゃシフォンの作戦に頼るしかなくなっちゃったじゃないかぁ……」


 ピノは涙目になりながら短刀を構え直して、シフォンと少し距離を取ったところに移動する。


「じゃあそのやる気に甘えるから、囮役は頼んだよ。私は隙見てガンガン攻めていくから」


「お任せ下さい! さぁさぁ待ち望んでいましたよこの時を! 存分に痛感なる刺激を感じられるこの瞬間を!」


 高らかに笑い上げるシフォンは両腕を広げて、何処もかしこも隙だらけの体勢のままリティアさんに近付いて行く。


 分かっていたことではあるが、避けるという選択肢は既に捨てているらしい。


「けほっ……。予期していない醜態を晒してしまいましたが、これは私の未熟さが招いた結果。今度は油断致しません」


 ルティーナに圧倒されたことで逆に気を引き締め直し、より一層気合いが入るリティアさん。アップが済んで本格的に戦闘のスイッチが入ったと見受けられる。


 しかしルティーナ同様、シフォンも足を止めることはなく、一歩一歩着実に歩みを進めてリティアさんの元へ近付いていく。


 やがて歩幅三歩程度の距離まで近付いた瞬間、リティアさんの動きが一瞬ブレた。


「“シックスクロス”!」


 残像が見える速度でレイピアを三度十字に振るい、重ね掛けされた緑色のカマイタチがシフォンを襲う。


「あはぁぁぁん!」


 身体を差し出すように立ち尽くしていたことで、当然その斬撃はシフォンの真正面から炸裂。飛びっきりの笑顔を浮かべて仰向けに倒れた。


 血飛沫が舞うことは無かったが、純白のメイド服に大きな切れ込みが入ってボロボロになってしまっていた。


 しかしそんな姿になっても尚も、むしろシフォンは歓喜に身体を震わせていた。


「良いっ! 素晴らしい! 致死性のある攻撃に見せ掛けたやや強めの乱撃! 敢えて加減することで相手を焦らし、次なる一撃に備えさせるという思惑をわざと臭わせる! 真面目を絵に描いたような戦法ですね!」


「……貴女は何を言っているのですか?」


「良いでしょう! 乗ってあげようじゃないですかその企みに! さぁ次のステップに参りましょう! 私は幾度と無く立ち上がりますよ!」


 全身を火照らせながら立ち上がると、ペッと身体に唾を吐いて全身に満遍なく塗りたくり、あっという間に傷を完治させた。


「気を付けた方がいいネ、リティア。あいつ変態な上に無敵ヨ。何度ボコっても立ち上がってくるネ」


「あんなに速い自然回復力は見たことがないですね。品性の欠片も感じられない手段ではありますが」


「……それとリティア。油断は禁物ネ」


「失敬ですね。油断などしていま――っ゛!?」


 突如リティアさんの身体が傾き、咄嗟にステップ移動して体勢を立て直そうとする。


 しかし不意を突いた一撃は思っていた以上に重かったのか、動きが若干鈍くなっている。


 頭を蹴られてしまったことで脳が揺れているんだろう。きっと視界が悪くなっているに違いない。


「ガンガン攻めるって言ったばっかだったんだけどねぇ」


 リティアさんがシフォンに気を取られている内に、ピノは“ハイド”を使った後にリティアさんの背後に回っていた。シフォンの圧倒的存在感があったからこそ成せた技である。


 未だ回復し切れていないところを付け狙い、ピノはアクロバティックな体術を駆使して追撃を仕掛ける。


 変態だからこそ成せる鮮やかな動きなのか、俺でもイマイチ軌道が読み辛い。


 あれは相当厄介だ。何処から攻撃が飛んで来るのか読み取り難い。


「…………あの、ピノさん?」


 珍しく真面目に集中しているのか、シフォンの声に聞き耳を立てることなく、ただひたすらに攻め続けるピノ。


 だがリティアさんも徐々に回復してきたのか、少しずつ機敏な動きが戻って来た。


 それでもダメージは蓄積しているようで、やはりさっきの動きと比べると若干鈍い。


 攻防一体のガチ勝負。そこにシフォンが入る隙はない。


 ――と思っていた。


「………………ピノさん」


 シフォンは下に俯いて目線が前髪で見えなくなると、よたよたと不気味な足取りで二人の元に近付いていく。


「くっ、挟み撃ちですか!」


 リティアさんの背後から迫るシフォンを見て、ピノはニヤリと不敵に笑った。


「よっしゃやったれシフォン! 眼鏡ちゃんの背中は絶賛ガラ空きよ!」


「…………」


 ずっと受け身体勢だったシフォンが両手で持つブラシを握り締め、尾の部分を前に突き出すように構えを取る。


 そして、リティアさんに引けを取らない弾丸のような突きを解き放った。


 ――ピノの腹部に。


「へぼぉっ!?」と間抜けな声を漏らして、ピノは野次馬達が立っている元まで吹き飛んで行った。


「な……なんで……?」


 ぷるぷると肩を震わせて腹を摩りながら立ち上がるピノ。


 見据える先には、瞳孔を開いて悍ましい表情を浮かべるシフォンがいた。


「人が折角高ぶって来ていたというのに、私が思い描いていたシチュエーションが現実の元になろうとしていたところに水を差さないで頂きたいですね」


「いや……これ一応試験なんだけど……」


「そうですね、これは大事な試験ですね。ですがご安心ください。相手が人である以上、私が敗北することはありません。故に、私が不合格になるような失態を晒すことはありえないんです。ですから……」


 さっきのルティーナとはまた違った方向性の闇深き笑みを浮かべ、錆びたカラクリのような動きで首を傾けて、ギョロリとした目でリティアさんを見つめた。


「楽しめる時に楽しんでおいた方が良いじゃありませんかぁ……。そういうわけなので、ピノさんは黙って見ていてください。私がイッてしまうその時まで!」


「既に頭の方が逝ってるでしょうが!」


「それで何か問題が!?」


「むしろ問題しかないことに気付こうか!」


「ハハッ、知ったことじゃありませんね」


「なんかキャラ変わってるんですけどあの人!?」


 生粋のドMという気質はこうも人を狂わせるのか。いつもボケてばかりのピノがツッコミ役に転じてしまうくらいに、あいつのキチガイさは常軌を逸しているのかもしれない。


「余計な時間を取らせてしまいましたが、これで邪魔者はいなくなりました。さぁリティアさん、ここからは存分に楽しみましょう! 三日三晩試験が続くことになろうとも、私は最後までお付き合いさせて頂きますよ!」


「な、何なんですかあの方は!? 変態ですか!?」


「だから変態って言ってるネ。面倒なことになる前に、さっさと合格させた方が良いと思うヨ」


 そんな馬鹿げた理由で合格させるのもどうかしていると思う。ある意味恐喝されて合格させてやるようなものなのだから。


「冗談じゃありません。変態が二人も紛れている冒険者パーティーだなんて、世に悪影響を及ぼす危険性があります。僅かな世の乱れの火種を消し去るのも、私の仕事なんです!」


「お〜、暑っ苦しい熱意ネ。なら好きにするヨ」


「当然です!」


 変態だけは何が何でも合格させるわけにはいかないと、リティアさんは瞳の奥に闘志を燃やし、狂気なる変態へと立ち向かって言った。


「はぁぁぁ!!」


「はぁぁぁぁん……」


 リティアさんの怒号とシフォンの喘ぎ声が混ざり合う中、レイピアの猛攻が唸りを上げる。


 回復させる隙を与えないつもりか、リティアさんの連続突きが一向に止まる気配がない。


 その策でしかシフォンを圧倒できないのは事実なんだろうが、そのまま続けていれば……。


「…………弱い」


 一方的な猛攻を持続させるにはかなりの体力を消耗する。


 その影響が出始めたようで、突きの勢いが次第に弱まり始めた。


「ぐっ……ハァッ!」


 最後の力を振り絞り、気合いが入った渾身の突きが繰り出される。


 シフォンはその一撃を真正面から受け止めた。


「……ハァ」


 そしてシフォンは、その一撃をくらって尚も、何事も無かったかのようにその場に踏み止まってみせた。ため息を零す余裕まで見せ付けて。


「そ、そんなことって……」


 シフォンの身体はボロボロで、立ってられるはずかない傷が目立っている。


 それでも立ち続けている眼前の変態を前に、リティアさんは初めて怯えた表情を見せた。


「残念ですね……。貴女には期待していたのですが、全力を出してこの程度の力しか振り絞れないだなんて。ビャクトさんであれば、この十倍の威力は余裕で出すことができますよ」


 シフォンは口の中に手を突っ込んで、でろでろの唾液が染み付いた手で全身を撫で回した。


 数十秒後、瀕死直前の状態から無傷の身体に元通り。世にも汚らしい最低のイリュージョンである。


「もうお気付きかと思われますが、私は根っからのドMです。ですが、相手により強い刺激を求めるべく、攻めをレクチャーするためにドSの素質も持ち合わせているんです。私が何を言いたいのか、分かりますか?」


「…………いえ」


「ならば教えましょう。もしこのままそのか弱い力で私を攻め立てるつもりであれば、この私が直々に真なる痛みを味合わせてあげても良いですよ、と言いたいわけなんです。で、どうしますか? 私のレクチャーを受けてみますか?」


 勝てる気がしない。そもそも彼女の試験を受け持ったこと自体が間違いであった。今のリティアさんの表情からはそんな意思が感じられる。


 圧倒的変態力を前に顔色が真っ青になり、リティアさんはゆっくりと土下座の姿勢を示した。


「ご、合格です。ですのでこれ以上はどうかご勘弁を……」


「チッ、根性の無い人ですね。まぁ良いでしょう」


 舌打ちしながらも渋々納得して、シフォンも合格の証を得た。


 なんて不憫な試験だろうか。奴らの相手をさせられているリティアさんが可哀想になって来た。


「なんで私がこんな目に遭わなければいけないのですか……。このままでは試験官として名折れではありませんか!」


 理不尽な仕打ちに苛立ちを見せ始めたリティアさんは、残る一人の変態をキッと睨み付けた。


「貴女だけは……貴女だけは何が何でも合格させません! 徹底的に攻略するつもりなので覚悟してください!」


「うわぁ……。これ完全に損な役受け持ってんじゃん私……」


 積もり積もった怒りの矛先を向けられて、苦しそうに眉間を摘むピノ。


 イレギュラーな二人はさておき、問題はここからだ。


 実力の差は歴然であるが故に、ピノに勝ち目があるのかどうか。現段階じゃ勝機は限りなく薄い。


 気張れクソパンツ。シフォンの真似事をしろとは言わないが、変態の底力ってやつを振り絞ってみせろ。


「くっそ〜、このまままともにやり合っても勝てないよなぁ……。極力この手は控えておきたかったんだけど、不合格になったらビャクトに半殺しにされそうだし、なりふり構ってもいられないか」


 ピノは腰の鞘に短刀を戻すと、いつも左目を隠すように巻いている包帯を解いた。


 閉じられていた瞳がゆっくりと開かれる。


 その左目は、鮮やかな黄金色の瞳を輝かせていた。


「私の奥の手、とくとご覧あれ。“アンリミテッド”」


 魔法名の詠唱が唱えられた刹那、左目の光がより強く輝きを増して、ピノの全身に行き渡った。


 黄金色のオーラのようなものが全身に纏わりつき、ピノは獣のように四つん這いの構えを取った。


「魔力の質が桁違いに上がった!?」


「驚いてる暇ないよ。私にゃ時間が無いから……ねっ!」


 飛び出したかと思えば、ピノの姿が皆の前から消えた。


「…………え?」


 これにはリティアさんも疑問を浮かべることしかできない。


 何故なら、気付く間も無くピノが自分の横を通り過ぎて立っていたのだから。


 まるで光のような速度。この俺でさえも見切れない動きだった。まさかあんな隠し玉を持っていたとは。


 ……いや、そんなことよりもだ。今は別にもっとやばい問題がある。


「……フッ」


 不敵に笑うピノの身体からは、既にオーラが消え去っていた。


 しかしその代わりに、ピノの手元に見覚えのある物がしかと握られていた。


 それは、リティアさんの下半身を守っていた鎧の一部。乱暴に抉り取られたかのように破損している鉄の破片。


 それ即ち、リティアさんの股間部分を隠していた鎧の部分であった。


「イヤァァァ!?」


 開放されてはいけない部分が露わとなり、リティアさんは女の子らしい悲鳴を上げて涙目になり、咄嗟に股の部分を両手で隠して座り込んだ。


 野次馬勢の男達が猛々しい雄叫びを上げて、周りが一気に騒がしくなる。


 ある者は鼻血を吹き上げて貧血でぶっ倒れ、またある者は彼女らしき女性にぶっ飛ばされ、それはもうてんやわんやのどんちゃん騒ぎになっていた。


「やった! やったぞ! 私はやり遂げたんだ! あの生真面目ちゃんの◯◯◯を拝んでやったぜ! ワーハッハッハッハッ!!」


 破損した鎧の部分を皆に見せびらかしながら笑い上げる最低の変態。


 余裕が無くなっても尚、最後の最後までその目的だけは諦めていなかったらしい。


「……やっぱり最低ですねあの人」


 ピノを見るミルクの目が更に冷たいものになる。こうして奴は今後も周りの好感度を下げ続けていくのだろう。


「か、返して下さい! そんな鎧の壊し方がありますか!?」


「あるんだなぁこれが! 私が手に持つこの破片こそがその証明! 返して欲しいか? 返して欲しいんか? だったらその場に跪いて宣言したまえよ! 私は露出プレイに興奮する変態だとなぁ!」


「なっ!? だ、誰がそんなことを言うとでも!」


「言えないんか? だったらこれは没収だなぁ!?それともこの破片を更に砕いちゃうのもアリだったりして〜?」


 舌をべろんべろんに出しながらゲスの笑みを浮かべて、腰の短刀を引き抜いて鎧の破片に刃を添え当てる。


「ほれほれ、このままじゃ壊れちゃうよ〜? ヒビ入っちゃってるし、ちょっと強めに当てただけで砕けちゃうよ〜? あらら〜、こりゃ大変だねぇ〜?」


「くっ、卑怯な! そんな策を用いてまで合格を貰って、貴女は満足できると言うのですか!?」


「満足だねぇ〜! 言うこと無いねぇ〜! むしろ感無量に尽きるねぇ〜!」


「こ、この変態ぃぃ……」


 どうしよう。一人残らず合格させなければいけないことは分かっているのに、あいつだけは合格させたくないと思ってしまう俺がいる。


 相手を辱めることで戦意を喪失させる。それも戦略の一つなのかもしれないが、決して見習いたくはない。


「ほれ、さっさと認めんしゃい。私は露出狂の隠れ変態であると暴露しんしゃい。さすればこの破片を返そうじゃないか」


「くっ……合格です……」


「ん〜? なんて〜? もっと大きな声ではっきりと言いたまえよ」


「合格です! ですので、これにて貴女方三人の試験は終了です!」


「そっか〜、合格か〜。それはそれは安心したよ〜」


 褒められるべき結果ではないが、無事にピノも合格を貰うことができた。これでノルマは達成――


「でも私が求めているのはそれじゃないんだなぁ〜! 合格はありがたく頂戴するよ? でも肝心の宣言が為されてない以上、やはりこれを返すわけにはいかないんだなぁこれが!」


 ……言葉も無い。それ程までに俺は今、呆れてしまっている。


「お、鬼ですか貴女は!? 目的は果たせたのですから、もう試験を続ける必要はないんですよ!」


「そんな御託は受け付けてないんで〜。えぇから早よ言えや。なぁ? サラッと一言言うだけでえぇんやで?」


「だ……だからそんな台詞言えるわけがないと……」


「そっかぁ、言えるわけないのかぁ……。だったら後十秒後にこれを地面に思いっ切り叩き付けちゃいま〜す! 股間だけ晒す痴女という噂を流されたくないのなら、潔く変態宣言するんだなぁ!」


「くそっ……救いようの無い変態め……」


「褒め言葉あざま〜す!ではでは、カウント始めちゃいま〜す! い〜ち! にぃ〜い! さぁ〜んがぁ!?」


 調子に乗り過ぎている変態目掛けて、右足を振り払って靴を飛ばした。


 狙い通り顎の辺りに炸裂して、暴走する変態は仰向けに倒れて動かなくなった。


「……俺のパーティーって」


 試験の時点でこれだけの騒動を引き起こす変態共。前途多難な未来に俺は頭を抱えることしかできなかった。

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