主人公はレベルが0.1上がった
俺の目には、目と鼻の先に見えていたはずの最終地点。
しかしその道のりは果てしなき航路のように遠く、辛く、険しいものであった。
それでも俺は『努力はいつか必ず実る』という言葉の信者となり、曲がりくねった道をひたすら真っ直ぐに突き進んだ。
翼を生やした巨大なトカゲを背中に率いて、下心と殺意を向けてくる狂信者を右に背負い、暴力と罵詈雑言を求めて来る変質者を左に背負い、それでも尚、俺は前だけを見据えて走り抜けた。
そうして、ついに俺は辿り着いたのだ。
街という名の桃源郷に。
目的地という名の楽園に。
「つ……つい……た……」
馬車は例のドラゴンによって破壊された。レンタル物だったから、それなりの罰金を強いられることだろう。
しかし今は、この場所に辿り着くことができたという達成感の余韻に浸っていたい。
「ようやく着いたわね。長旅ご苦労様、ダーリン」
「厳しい道のりでしたが、無事に到着しましたね。ナイスファイトです、ビャクトさん」
街の門の前で倒れている俺を見て、労いの言葉を掛けてくる障害人間共。
ニ名共に八つ裂きにしてやりたいのは山々だが、とにかく今は休みたい。
まずは宿だ。宿さえ探せば、今日のところはもう休めるというもの。
メイ活の日時は明後日のはずだし、観光する時間も含めてゆっくりできるはずだ。
……こいつらがいる時点で、のんびりなんてできると思えないけど。
とは言え、サーヴァントに辿り着いたということは、ようやくこの変質メイドとおさらばできるということ。少しでも負担が減るのはありがたい。
「短い付き合いだったなクソメイド。お前はもう用済みだ。明後日になるまで勝手に有意義な時間を過ごすこったな。行くぞルティーナ」
疲労困憊な身体にムチ打って立ち上がり、ルティーナと共に街の中へと入って行く。
街全体の印象としては、ウンターガングに似たような中世的な街並みだ。
ただ大きな違いを述べるとすれば、街の中央に超巨大な城がそびえ立っていることくらいだろうか。
しかもよくよく周りを見渡せば、甲冑を着た騎士のような人達がそこら中を徘徊している。
これだけ見回りがいれば、犯罪が起きる確率も低そうだ。
「ウンターガングと同じで平和な街だな。いずれはこの街に引っ越すのもありかもしれん……」
「住み良い街ランキング三位に入る街だもの。ダーリンが気に入るのも無理ないかもしれないわね」
「そんなランキングがあんのか……」
しかもここで三位か。冒険者になった暁には、是非とも二位と一位の街にも訪れたいものだ。
「どっか良い宿はないのかルティーナ。できれば格安の」
「人口率が高い街だから、宿の種類はピンからキリまであるはずよ。でも私は富豪の奴隷になっていたから、基本的に高い宿しか知らないわ」
「そこは知っとけよガイド役」
何の為にこいつをここまで連れて来たのか分からなくなってしまう。
今のところ邪魔でしかない枷にしかなってないし、足を引っ張るどころか、身体ごと引っ張られているんだが。
「フッフッフッ……。どうやらお困りのようですねビャクトさん」
今度は宿探しに労力削らにゃいかんのかと憂鬱になっていると、未だに付いて来ていたシフォンが不敵に笑っていた。
「まだ引っ付いて来てたのか金魚の糞。失せろっつっただろうが」
「言い得て妙な例え方ですね。そんな扱いされるとムラムラして――と、今は快楽に溺れている場合でもありませんね。格安物件の宿に関してですが、私が良い場所を知っていますよ。宜しければご案内致しますが、どうしますか?」
「…………」
「あぁっ、刃物で突き刺して来るかのような刺々しい視線! 私の心が激しく躍動しています!」
あてもなく街中を彷徨うよりかは、良い宿に覚えがあるというシフォンに付いて行くのが最善。客観的な意見を述べれば、誰もがそう考えることだろう。
しかしその捉え方は、シフォンという人間の性質を視野に入れていない場合の話である。
常にカースト制度の奈落の底にいたいと思っているような奴がチョイスする宿となると、訝しむのは当然だ。
とは言え、事前に下調べしていたんだろうから、当たりの可能性も捨て切れなくはない。一応見るだけ見るのも悪くはないか……。
「まだ決めたわけじゃないが、一応案内してもらおうか」
「かしこまりました。では、私の後に付いて来てください」
俺とルティーナの間を抜けてズカズカと歩いて行き、周囲を見渡しながらシフォンの後に続いて歩く。
「……おかしいな」
「どうしたのダーリン?」
「いや、周りを見てもメイドが一人も見当たらないと思ってな」
「そういえばそうね。変態メイドちゃんなら前にいるのだけれど」
「そうだな。でもクソビッチのお前が他人を変態呼ばわりするのはどうかと思うぞ」
メイ活の開催日は明後日なんだ。故に、俺達のように参加者が見当たってもおかしくないと踏んでいたのだが、何処を見てもメイドらしき人物が見当たらない。
でも冷静に考えれば、メイド服を来て街を歩く人なんて滅多に見掛けることもないか。
異世界だからメイドの一人や二人歩いていてもおかしくないと思っていたのだが、どうやらそうでもないらしい。
「それよりもダーリン。雲行きが怪しくなって来たわよ」
「……だな」
シフォンの後を歩き続けて行くと、人の気配が段々と薄れていっている。
周りの建物も何処となく寂れていて、目の前に缶詰を置いて座っている人達が何人も見掛けられる。
「この街にもこんな場所があったのね。豊かなこの街の唯一の裏の部分ってところかしら」
つまらなそうにホームレスのおっさん達を見回すルティーナ。
逆にホームレスの連中は、見た目だけは美女と言えるであろうルティーナの姿に目を奪われていて、一人残らず口の端から涎を垂らしていた。
金に限らず、性にも飢えた連中であると主張しているかのようだ。
今はローブを着て身体を隠しているクソビッチだが、ここでローブを脱いだらどうなることやら……。
下着姿とほぼ変わらぬルティーナの露出度に、全員暴走するかもしれない。
早々に我が家へ帰りたくなって来た。仮にこんな場所に格安物件の宿があったとしても、泊まる気にはならないだろう。
宿でくらいは緊張の紐を解いて、警戒心を剥き出しにすることなくリラックスしたいのだから。
「着きましたよビャクトさん。ここが私のお勧めする宿です」
「…………うん」
案の定、シフォンがチョイスしていた宿は、この辺りで経営している宿であった。
俺は一目見て一度頷くと、踵を返して帰ろうとした。
「どうされましたビャクトさん? もしやお気に召しませんでしたか?」
シフォンが掌を向けるその宿は、一言で言えばダンボールハウスであった。
キャンピングカー程度の大きさの、手作り感満載の世にも奇妙なボロっちい宿だ。
確かに格安だし、そもそも無料だ。
でもそれ以前に、これは宿じゃない。
貧乏という身分であれど、ここまで落ちぶれたつもりはない。
「格安ですよ? 有料物件ですよ? 作成時間は一時間ですよ?」
「小学生の自由研究かっ! 一蹴り入れたら壊れそうなデザインだろうが!」
「ちなみに食事も無料です。ついでにシャワーを浴びるのも無料です」
「ゴミ箱漁りと雨を有効活用してるだけだろ! 節約って次元を超えてるわ!」
「そしてメインデッシュに、街を歩く人から蔑まれた視線を送られます。極上な至福の時を過ごせること、間違い無しです!」
「お前の主観で物を語るなクソメイド!」
回し蹴りを放ち、シフォンをダンボールハウスへと吹き飛ばす。
貧相な宿と共に、ようやく穀潰しの後処理が完了した。
「無駄な時間を過ごしたな……。ほら、行くぞルティーナ」
「弱者は去勢あるのみ。貴方は弱者? それとも強者?」
「お前はお前で騒ぎを起こそうとするな!」
ホームレスの男に喧嘩を売っているルティーナの後ろ首を掴み、二度とあのドMと顔を合わせないことを心に誓いながら街の中心部へと向かった。
〜※〜
無事に宿が見つかり、結局は宿から一歩も出ずに一日を過ごした。
部屋はルティーナと同室という悪夢な展開ではあったが、不幸中の幸いなことに一切手を出して来なかったので、十分身体を休めることができた。
その翌日、のんびり観光しようと思っていた俺だったのだが、ルティーナからとある提案を持ち掛けられたことで、急遽少しだけ予定を変更した。
この街に来るまでの道のりで、俺は数多のトラブルの被害にあった。
千軍万馬なる鳥の魔物の群れや、ボクシンググローブを武具とするドラゴンファイターとのように、それはそれは個性豊かな魔物達と相対した。
ともすれば、だ。可能性は限りなく低くはあるが、もしかすれば俺の肉体は冒険者としてレベルアップしているのではないだろうか。
趣旨を述べれば、何らかの固有魔法を会得しているのではないか。そう思い至ったわけだ。
前にルティーナが話していた通り、新たな固有魔法に目覚める可能性は限りなく低い。
しかし、俺は今回のことに限らず、他にも数多の厄災を逃れてきた男だ。
可能性はゼロではないのだし、確かめるだけの価値はある……と信じたい。
“アナライズ”も“メタルハンズ”も実際に使ってみれば、意外と利便性の高い魔法ではあった。
とは言え、この二つの魔法だけでは冒険者として心許ない。
異世界クオリティを理解したからこそ、チート級の超強力魔法を会得したいなどと高望みはしない。
炎の玉だとか氷の礫といった基礎的な魔法でもいいから、とにかく応用の効く魔法を一つでも会得したいところだ。
「着いたわ。あそこよ」
ルティーナに連れられて街中を歩いて行くと、正面に冒険者ギルドが見えてきた。ウンターガングに負けず劣らずの大きな建物だ。
門の前までやって来ると、屋根のところに大きな板のパネルが設置されていて、『Advance one step towards the way to despair』という英文字が書かれてあった。
「“絶望への道のりに一歩前進”……」
この世のギルドの偏見ってどう捉えられてんの……?
何も見なかったことにして素通りすると、まだ午前中であるにも関わらず、ギルド内は酒の席で満たされていた。ギルドってのは何処もかしこもこうなのか。
「おう兄ちゃん! どうだい一杯?」
受付場に行こうとしたところで、ジョッキを片手に持った酔いどれのおっさんが肩を組んで来た。あまりもの酒臭さに鼻を摘みたくなる。
「朝っぱらから飲むなよおっさん……。見た目から俺が未成年だって分かんだろ。それと、絡み酒は程々にしとけよ」
「んだぁ、ノリ悪い坊主だなぁ。じゃあそっちのべっぴんねーちゃんにお酌係を――」
「よーし、まずは落ち着こうかルティーナ。一旦その人差し指を引っ込めようか」
しつこく粘っこい絡み酒。これだから酒は嫌いなんだ。酒の魔力と言えるこのウザさは、一生慣れることはないだろう。
何らかの魔法を放とうとするルティーナを抑止して、おっさんだらけの酒場から離れる。あんな魔窟にゃもう二度と足を踏み入れたくないものだ。
「カタギの前で魔法を使うことは控えろルティーナ。お前の正体がバレる危険性があるんだからよ。そうなったら色々と面倒だろうが」
「あら、心配してくれるの? ダーリンはツンデレだから、そういうことは口に出さないタイプだと思っていたのだけれど」
「誰がツンデレだ! クソビッチに掛けてやる情なんて一欠片もないわ! 俺はただ、万が一にも今お前が欠けたら、冒険者になる道がまた遠のくことになると思っただけだ」
「フフッ、やっぱりツンデレじゃない」
「だから違――あぁもういいわ面倒臭い……」
茶化されるだけの会話に時間を割くのは不毛だ。ここで必死こいて抵抗するのも馬鹿馬鹿しい。
やけに長く感じた道のりを超えて、受付場へとやって来た。
「こんにちは。本日はどのようなご用件で参られたのか、伺っても宜しいでしょうか?」
営業スマイルを浮かべた若い女の子が出迎えてくれる。既視感を覚えるなこの感じ。
……というか、あれ? 既視感を覚えるどころか、まんま同じじゃね?
「リ、リィアさん?」
「え?」
受付役として現れたのは、ウンターガングで受付業務を営んでいるはずのリィアさんだった。
腰の辺りで一つに束ねた黒髪ストレートに、人懐っこい印象を覚えるパッチリとした目。俺の見間違いでなければ本物のはずだが……。
「もしかしてお兄さん、妹とお知り合いでしたか?」
「妹ぉ!?」
てっきり一人っ子だと思っていたが、まさかリィアさんに姉がいたなんて。しかも写し鏡かってくらいにそっくりだ。
「姉のラィアと申します。妹のリィアがいつもお世話になっているようで、ありがとうございますビャクトさん」
「いえいえそんな……って、なんで俺の名前を?」
「やっぱりそうだったんですね。実は以前にリィアから手紙で連絡が届きまして。おしどり夫婦のビャクトさんとミルクさんという方々と一緒に暮らしていると。そちらの方がミルクさんなんですよね?」
大きな語弊がそこにはあった。一緒に暮らしていること以外全部違う。
「夫婦じゃなくて主従関係ですし、こいつはミルクとは別の奴ですよ」
「そうね。今はまだ主従関係よ。いずれは夫婦、と言ったところかしら」
「お前は黙ってろ! 話ややこしくなるだろうが!」
「えっと……つまりビャクトさんは、甲斐性の無い女たらしということですか?」
「どうしてそういう解釈になるんですか!? こいつはただの連れです! ほぼ虚言しか吐かない奴だから聞き耳立てないでください!」
今度家に帰った時にリィアさんに言い聞かせておかねば。
このままではミルクとの間に既成事実が生まれてしまい兼ねない。
あいつと夫婦になるくらいなら、財産を捨ててホームレス生活をする方がまだマシだ。
「と、とにかくこの話は置いといてですね。俺の魔法適性を確認するために来たんですけど、手続きお願いできますかね?」
「あっ、はい、かしこまりました。今準備致しますので、少々お待ちくださいたら――ビャクトさん」
たらしって言おうとしたよねこの人。彼女歴皆無の俺にそんな素質があるわけないのに、言葉の尾ヒレ背ビレって怖い。
ラィアさんは一度席を外すと、前にも一度使ったことのある例の水晶玉を持って戻って来た。
「では、両手を翳してください」
カウンターのテーブルに水晶玉が置かれて、言われた通りに水晶玉を覆うように両手を翳す。
透明だった水晶玉が紫色に光り輝くと、大きな液晶画面が映し出される。
「えっと……大変申し上げ難いのですが、どうやらビャクトさんに魔法適性は一つもないようでして……」
「でしょうね。それは元から分かってます」
分かってはいたことだけど、反復すればするほど傷付いてしまうな……。
「魔法適性の方はスルーしていいんで、固有魔法の方を確認して欲しいです」
「固有魔法ですか? 魔法適性が一つも無いとなると、固有魔法の方は絶望的だと思――えっ!?」
リィアさんの姉なだけあって、驚き方までクリソツだ。
「凄いですよビャクトさん! 一つでも適性があれば珍しいのに、ビャクトさんには“三つ”の固有魔法を使える素質があります!」
「おぉっ!?」
俺が使役していた固有魔法は“アナライズ”と“メタルハンズ”の二つのみ。だがラィアさんは今、固有魔法の数を三つと言った。
それ即ち、目覚めていたわけだ。俺の体内に眠っていたのであろう、第三の固有魔法の核が。
「おい聞いたかルティーナ。極小の可能性を掴み取ってやったぞ」
「冗談半分のつもりだったのだけれど、まさか本当に固有魔法を覚醒させるとは思わなかったわ。これでまたダーリンが強者の一歩を……フフフッ……」
強者中毒のことはさておき、肝心なのはその中身だ。新たな固有魔法を会得したとはいえ、それがまともに扱える魔法だとは限らないのだから。
「“アナライズ”と“メタルハンズ”は元々扱えていた魔法なんですけど、残り一つの魔法ってなんですかね?」
「えっと……“ポイズンガン”と出ていますね。毒属性の銃弾を放つことができる魔法のようです」
きたでこれ。
「ついに俺の時代が到来か。短いようで長かったぜ」
「早速試してみたらどう? 私が的になってあげるわよ」
本来ならば人を的にするなんて言語道断だが、こいつの場合は魔防壁持ちだから例外か。
「なら頼むわ。でもお前の身に何が起ころうと自己責任だからな」
「えぇ、それで良いわ」
「あ、あの〜、周りに被害が及ばないようにしてくださいね?」
魔法の詳細からして、恐らくこれは遠距離型の魔法だ。
ルティーナもそれを察してか、俺から何歩か距離を取った場所まで移動して立ち止まった。
「こっちはいつでもいいわよ」
「んじゃ、いくぞ」
右手をピストルの型にして、人差し指の先に魔力を注ぎ込むイメージを想像する。
毒々しく禍々しい紫色と、魔法の色合いのイメージも加える。
指先に紫色の小さな魔法陣が発現し、ここで溜め込んだ魔力を一気に――放つ!
どぴゅっ
「…………」
毒属性の銃弾を放つ魔法。この魔法の名前を聞いた瞬間から、誰もがそのように想像することだろう。
どぴゅっ
きっと失敗したのだと思ってもう一度放つが、結果は初発と同じ。白みが混じった紫色の液体が安物の水鉄砲のように発射されるだけだった。
どぴゅっ、どぴゅっ、どぴゅっ
三度、四度と懲りずに試してみるも、やはり結果は変わらない。
ちらりと横目でラィアさんの方を見ると、俺に背を向けて微かに肩を震わせていた。口に手も当てずに笑いを堪えているのだろう。
「なるほどね……。分かったわよダーリン、その魔法の有効性が」
「……なんでしょうか」
「その魔法は恐らく、性行為する時に使うのよ。どぴゅどぴゅと相手の身体に掛けることで、その姿をより艶かしくする……みたいな。白みのある紫色のお汁ってエロくみえないかしら?
「それ今即興で考えたやつだろうがぁぁぁ!!」
何が“ポイズンガン”だ! 名前負けした小学生の玩具か! 応用できる魔法どころか、需要が一切感じられないわ!
「結局のところ、あの時の電撃実験は無意味だったわけね。まぁそんなことだろうとは思っていたのだけれど」
「だったら最初から教えとけや! くそぉ、ぬか喜びして馬鹿みたいじゃねぇか……」
「別にいいじゃない。魔法に頼り切らなくとも、ダーリンには別の強さがあるんだから」
「それじゃ楽できないんだよ! 俺だって優れた魔法の一つや二つ使いたいんだよ! 魔法に関して全知全能のお前にはこの気持ちが分からないだろうがな!」
「フフッ、駄目よダーリン。ダーリンが少しでも楽をしてしまったら、強者としての品格が下がってしまうじゃない。仮にそうなってしまったら、ダーリンを見限ることになってしまうわ」
「その前に俺がお前を見限ってやるから大丈夫だ……」
つくづく俺は三界無安なこの世界に踊らされているようだ。
もう二度と魔法というものに期待してたまるか。固有魔法も基礎魔法も、俺からしたら全部一緒だ。
「今回は残念な結果だったけど、次の覚醒に期待して頑張りましょ。……どうせ同じ結果でしょうけど」
「喧しいわ!」
魔法への期待と共に街の観光をする気も消え失せて、今日は一日中ふて寝することとなった俺であった。




