指南7 ストーリーの作り方 後編
「よし、今日も私が小説の書き方を指南してやる!」
僕の目の前でテーブルの上に乗ったロリがなにか言っている。
彼女のニックネームは『指南先輩』だ。
彼女は……
いや、もういいか。
キャッチフレーズを考えるというのも、大変なのだ。
今までもさんざん『彼女を形容する』という仕事を僕はやってきた。働きづめなのだ。だからそろそろ、休んだところでバチは当たるまい。
「じゃ、先輩、サクッとお願いします」
「なんか今日の後輩はやる気ないな……」
不満そうな顔をされた。
いや、でも、正直、本文に移る前に休日挟んで九日もかけさせられたら、ダレてくるのは当たり前だと思うのだ。
僕もそうだが、読者だって『いい加減本文書かせろよ!』とキレているだろう。
まあ、僕らの会話に『読者』たる存在がいるかどうかは、一切不明なのだけれど……
なにせこの文章を書いている時、まだ予約投稿すらしてないからね(2016/06/26)。
「えっと、今日やるのは『主人公とヒロインのストーリーの作り方』だな」
いつもより幾分か低いテンションで、先輩は言った。
僕もいつもより低いテンションで質問する。
「あ、じゃあ昨日までに決まったことの添付しときますね」
「うん」
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★タイトル
・
★コンセプト
・先輩を飼いたい。
・メインコンセプト
なんか偉そうで不器用な先輩系女子と仲良くなりたい。ただしこっちが優位。
・ストーリーコンセプト
こちらを見下していた女の子に見上げられるようになる。
・キャラコンセプト
本心か偽装かは置いておいて、こちらを見下している女の子。
★あらすじ
・自分用あらすじ
奴隷という文化がある、剣と魔法とモンスターが存在する異世界で、女の子を奴隷にするのが仕事の男性は、女の子を見下したいので、『奴隷にする魔法』を用いて女の子を飼う。
・掲載用あらすじ
★キャラクター
・主人公
男性。
奴隷商人。
偉そうな人をひざまずかせることに快楽を覚えるサディスト。
『こちらを見下していた女の子に見上げられるようになる』という目標を持っているが『奴隷商人自体が見下されていて、サディストでドン引きされてる。なおかつヒロインの身分が高いから、主人公は見下されている』という『状況』にあり、その『状況』をどうにもできないのは『やる気がない』から。
・ヒロイン
偉そうで人を見下している少女。
話の流れで、あらゆる権利を剥奪され主人公以外に頼る人がいない状況に陥り、主人公にひざまずくことになる。
『主人公とかかわる理由』……『逃げていたら主人公に捕まった』
『状況』……『逃亡中』
『話の着地点』……『主人公の奴隷になる』
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「改めて見るとヒロインが完全に事故に遭ってますね……運が悪すぎる……」
「まあ、主人公もヒロインも、ある程度不幸じゃないと話を作りにくいし」
「そういうものですか」
「うん。で、これから決めていくのは、『二人のストーリー』だな」
「と、言いますと?」
「『こちらを見下していた女の子に見上げられるようになる』という目標を持っているが『奴隷商人自体が見下されていて、サディストでドン引きされてる。なおかつヒロインの身分が高いから、主人公は見下されている』という『状況』にあり、その『状況』をどうにもできないのは『やる気がない』から――っていう主人公がいるな」
「はい」
「そいつと『逃げていたら主人公に捕まった』『逃亡中』の『主人公の奴隷になる』ヒロインが出会ったところから、物語を考えるんだ」
「これは『捕まったヒロインが主人公の奴隷になるまで』のことを考えるのですか? それとも『捕まった奴隷にされたヒロインと主人公のその後』を考えるのですか?」
「『奴隷にされるまで』が一区切りなのは絶対だと思うから、まずは『奴隷にされるまで』の話を考えよう。その後展開できそうだったら、『その後』を考えたらいい」
「なるほど」
「じゃあ『奴隷にされるまで』の話だけど、どうする?」
「どうもこうも……逃げた、捕まった、奴隷、じゃ駄目なんですか?」
「今からやるのは冒頭部のストーリーになる。ここではキャラ設定とか世界設定をある程度読者にわかってもらう必要があるから、簡素なストーリーに、様々な『キャラの個性』と『世界設定』を盛り込んでふくらませていくんだ」
「なるほど」
「どのぐらい『設定』を盛るかは、もう個性だな。冒頭全部設定書みたいにするやり方もあるし、逆にキャラの言動から世界設定をにおわせる程度っていうのもある。あと、箇条書き方式も存在はするな」
「個性ということは、優劣ではないんですね?」
「そうだな。でも、私はあんまり設定だけを並べるのは好きじゃないんだ。だから後輩には『キャラ性を盛り込むスタイル』でやってもらう」
「なるほど。この物語はあくまでも『個人の意見』であって世界の真理ではありませんから、好みの通りに話を作ってしまうのも致し方ないですよね」
「うん。ということは『逃げた捕まった奴隷になった』というシンプルなストーリーにキャラの個性を盛り込んでふくらませていくやりかただな」
「はい。でも、一口に『ふくらませる』と言われても、どうしたらいいか……」
「キャラに聞け。以上」
「またですか。物語のキャラクターは勝手にしゃべりませんよ。ファンタジーやメルヘンじゃないんですから……」
「まずはヒロインサイドのストーリー決めただろ?」
「まあかなりざっくりですけど……『逃げた捕まった奴隷になった』ですね」
「そうだな。そのストーリーの『状況』つまり『逃亡中』というシチュエーションを具体的にしていくんだ。5W1Hは憶えているか?」
「はい。『Who』『When』『Where』『What』『Why』『How』ですね」
「うん。今までもそうだったけど、これからも、話の着想をどうしたらいいか困ったら、5W1Hで考えたり、コンセプトと照らし合わせたりする。これが基本の解決法になるぞ」
「『指南7』にしてようやく基本の解決法を明言しましたね」
「つまりこれから先も使っていくことが予想されるんだ」
「でも次は本文ですよね? 僕らの楽しい部活動ももうすぐ終わりでは?」
「そうだといいな」
「……まあ、今は『主人公とヒロインのストーリー』をやっていきますか。ええと……『誰が』は『ヒロインが』ですね。『いつ』は時代背景?」
「今回は『冒頭シーンの時系列』だと思ってくれ。『朝』『昼』『夜』ぐらいかな」
「まあ逃亡中だし『夜』でいいかな。『どこで』は『裏路地で』ですかね。『なにを』『逃亡を』『なぜ』……なぜ、がまた難しいですね」
「そうだな。必要なのは、ひらめきか努力だ!」
「うーん。偉そうな女の子が逃亡する理由? 王族でお忍びで外に出たとか?」
「いいんじゃないか?」
「じゃあ『なぜ』は『お忍びで外出中の王族で衛兵に追われていたから』?」
「お忍びで~のあたりは『誰が』に入れちゃった方がいいな」
「なるほど。まとめるのはあとでやるとして、次は『どのように』ですか。この『どのように』はどこにかかるんですか?」
「逃亡スタイルだな。走る、飛ぶ、街の人に協力してもらう、戦いながら、とか」
「まあ普通に走るでもいいんですけど、せっかくファンタジーですし、飛んでた方がいいかもしれませんね」
「お、いいな! じゃあ今のを文章にまとめてみてくれ!」
「ええと……『お忍びで外出中の王族のヒロインが』『夜』『裏路地で』『逃亡を』『衛兵に追われていたから』『飛んで』……『王族のヒロインが夜の路地裏を飛んで逃亡していた。彼女は衛兵に追われている』ですね」
「で、その状況にあったヒロインが『主人公に捕まり』『奴隷になる』ためには?」
「うーん、通り魔的にヒロインを奴隷にする主人公に出会う?」
「なにそれ怖い……すごい新しい気がするけど、主人公っていうかただの災害だな……」
「さすがに災害視点で話は書けませんね……あ、じゃあ、ヒロインは飛んでたけど、なんらかの事情で落ちてしまって、そこを助けた主人公に協力してもらう代わりに奴隷になるとか?」
「だいぶ経緯が整理されたな。それでいくか?」
「うーん、でも、王族が『協力してくれたら奴隷になる!』とかありえないですよね。それに偉そうっていうキャラクターコンセプトがありますから、そうそう簡単に奴隷化を承諾はしないと思いますし……あ」
「ん?」
「えっと、主人公があんまりにもゲスい気がするんですけど……」
「かまわないぞ! その歪みが『個性』だ!」
「じゃあ……逃亡中の少女をだまくらかして奴隷にしてしまう、みたいな」
「うわあ共感できないし好かれないやつだ……」
「やっぱり駄目ですか……」
「いや、それでいこう! 発想は大事だしな!」
「でも好かれない主人公は駄目じゃないですか?」
「いや、やりようはあるんだけど……まあ今回は生のままでいこう。好感度とか考え出すとそれはもう『好かれる話の書き方』であって『小説の書き方』とちょっと変わるからな」
「なるほど。とりあえずデビュー作を、どんなに炎上してもいいから書き切ってみせろっていうことですね」
「あえて炎上させる必要性はまったくないけどな……『共感をもたれる主人公の作り方』とかは作者の気が向けば応用編でやるぞ!(※応用編はありません)」
「ヒロインのセリフに容赦なく作者のメッセージが介入していく」
「だいたいこの作者の主人公、共感対象が一人もいないじゃん……『殺人修業の宿屋主人』とか『TAS』とか……そもそも主人公が視点人物の方が希じゃん……」
「まあ、もともとが『絶対の真理を書く』ではなく『自分なりのノウハウをメモしておく』という目的でこの話を書いていますし……」
「とにかく『ゲス主人公に騙されて奴隷になるヒロイン』だな」
「そうですね。好感度が心配です。主に僕の」
「で、ここに主人公とヒロインの歩むストーリーができあがったわけだ」
「はい。まあ、マジで冒頭数ページで終わりそうですけど……」
「初心者だし、いい加減本文行きたいだろうから、まずはそのぐらいでいいな。冒頭が書ければ自然と話が湧いてくることも多いし……というわけで、まとめてみてくれ」
「はい。ええっと……」
「あ、今回はプロットの清書を行なう」
「清書ですか?」
「うん。前回まで書いてたものと、今回までで書けそうなものを、混ぜて一文にするんだ。今考えた『主人公とヒロインの話』は『自分用あらすじ』に書いて、キャラクターの欄の文章もわかりやすく整えてみてくれ。今まで書いたのはバージョン1として残しつつ、新たに読みやすいバージョン2を作成するんだ」
「難易度いきなり跳ね上がりましたね……まあ、やってみます。時間をください」
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★タイトル
・
★コンセプト
・先輩を飼いたい。
・メインコンセプト
なんか偉そうで不器用な先輩系女子と仲良くなりたい。ただしこっちが優位。
・ストーリーコンセプト
こちらを見下していた女の子に見上げられるようになる。
・キャラコンセプト
本心か偽装かは置いておいて、こちらを見下している女の子。
★あらすじ
・自分用あらすじ
奴隷という文化がある、剣と魔法とモンスターが存在する異世界で、女の子を奴隷にするのが仕事の男性は、女の子を見下したいので、『奴隷にする魔法』を用いて女の子を飼う。
『王族のヒロインが夜の路地裏を飛んで逃亡していた。彼女は衛兵に追われている』
逃亡中の少女をだまくらかして奴隷にしてしまう
・掲載用あらすじ
★キャラクター
・主人公
男性。
奴隷商人。
偉そうな人をひざまずかせることに快楽を覚えるサディスト。
『こちらを見下していた女の子に見上げられるようになる』という目標を持っているが『奴隷商人自体が見下されていて、サディストでドン引きされてる。なおかつヒロインの身分が高いから、主人公は見下されている』という『状況』にあり、その『状況』をどうにもできないのは『やる気がない』から。
・ヒロイン
偉そうで人を見下している少女。
話の流れで、あらゆる権利を剥奪され主人公以外に頼る人がいない状況に陥り、主人公にひざまずくことになる。
『主人公とかかわる理由』……『逃げていたら主人公に捕まった』
『状況』……『逃亡中』
『話の着地点』……『主人公の奴隷になる』
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★タイトル
・
★コンセプト
・先輩を飼いたい。
・メインコンセプト
なんか偉そうで不器用な先輩系女子と仲良くなりたい。ただしこっちが優位。
・ストーリーコンセプト
こちらを見下していた女の子に見上げられるようになる。
・キャラコンセプト
本心か偽装かは置いておいて、こちらを見下している女の子。
★あらすじ
・自分用あらすじ
奴隷という文化がある、剣と魔法とモンスターが存在する異世界。
女の子を奴隷にするのが仕事の主人公は、夜、お忍びで城から出たため逃亡中のお姫様と出会う。偉そうな人をひざまずかせることが趣味の主人公は、お姫様が偉そうだったので、言葉巧みに騙してお姫様を奴隷にしてしまった。
・掲載用あらすじ
★キャラクター
・主人公
男性。奴隷商人。
偉そうな人をひざまずかせることに快楽を覚えるサディスト。奴隷商人自体が人から見下される職業であり、彼の性格もあって、出会った人にはだいたい見下されたり拒絶されたりすることが多い。
普段はやる気がないが、やる気を出すとすごい。
・ヒロイン
王族の少女で、お城を抜け出して街の上を飛んでいた。
しかし途中でなんらかのトラブルに遭い、飛べなくなる。そこで出会った主人公に協力してもらい衛兵から逃げ切ることに成功するのだが、騙されて奴隷になってしまう。
主人公に『こいつ偉そう』と思われるぐらいには態度が偉そう。
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「……先輩、どうでしょうか……なんかすごく疲れましたけど……」
「上出来だ! できるじゃないか!」
「ありがとうございます……何度も何度も、プロット中を見回して、キャラクター欄とあらすじを消したり書いたりしながら、どうにかこうにか完成できました……ちなみにスマホで書いてる設定です……」
「うん、いいと思うぞ!」
「本当ですか? 主人公の紹介で『普段はやる気がないが、やる気を出すとすごい』とか小学生並みの感想って感じですけど……」
「いやあ、こんなもんだって。前に言ったろ? 『本文を書き終わるまでは叩き台を動かさないようにする』って。つまり本文を書いてみて肉付けとか、『もっとこうした方が面白い』っていうのがわかったあとなら、もっと具体的に書けるんだ!」
「そういうものですか。でも、本文を書き終わるのはいつになるやら……」
「この内容なら一万文字~二万文字ぐらいでおさまるはずだぞ! 二、三日かければいける!」
「ああ、そうか。『ヒロインが奴隷になるまで』書けばいいんですよね」
「うん! そこ以降のプロットはまだないからな!」
「……っていうことは、このあとの展開を考えるのに、また今の作業をするんですか?」
「そうなるな」
「正直キツい」
「まあプロットなしでもキャラが動けばどんどん書いていける。初心者講座だから丁寧にやったけど、慣れたりひらめいたりしていけば、飛躍的に作業工程は縮まっていくからな!」
「なるほど」
「それに、あくまでも『一例』だ! 現段階でもっと詳しくやる人もいるだろうし、そもそもプロットなんかいらない人もいると思う! これは『私なら本文に入れる』っていう程度まで詰めたプロットにすぎない!」
「つまりここまでのやり方に従ったのに『おい話にならねーぞ!』となっても当方は一切の責任を負いませんということですね」
「そうだな! 今回はそういうわけで解散! もう七千文字いきそうだから!」
「ああ、素直に『後編 前』と『後編 後』に分けるべきだったかもしれませんね……せっかくテンションの低い入りで文字数減らしたのに……」
「後輩もいつものモノローグいいからな! じゃあ解散! お疲れ様でした!」
「はい、お疲れ様でした」




