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役に立つ娘をやめて、愛されるために生まれてきました!~前世で私を使い捨てた公爵様、ご機嫌いかが?  作者: 扇風機と思ったらサーキュレーター


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ダモンの失態Ⅰ

第36話ダモンの失態Ⅰ

「ダモンの奴がまだ来ぬそうだ」


レオニス王子は、つまらなそうに言った。

ロベリア王国の使節団はラディアート王国に到着したが、筆頭公爵たるダモン・タッカーが不在なのでなかなか交渉が進まない。


「そ、それに関しては筆頭公爵が戻ってから……」


そう言われる度に外交使節としては有利になるのだが、レオニス王子やミラはつまらなかった。

二人は、早く帰りたいと思っていたのだ。


外交使節として訪れた王子や侯爵令嬢に何かあったら、ダモンの遅延とは比べ物にならないほどの失点になる。

だから、監視の目がとても厳しい。

ちょっと庭で遊びたい、と思っても許可されないのだ。

11歳のミラとレオニス王子は、退屈で仕方がない。


だからと言って、道中のように使用人を手伝うこともできない。

王子が下働きをしていることが知れたら、こちらの品位を見下されかねないのだ。

ラディアートの首都に入った以上、その一挙手一投足も相手に知られてしまうと思わないといけない。


だから、レオニス王子は連日ミラを呼び出した。

ミラもアンナを手伝うわけにはいかなかったので、その呼び出しに喜んで応じた。


前世で自分を虐げた父は、現世でも迷惑をかけてくる。

早く帰って来て外交を整え、自分を国に帰らせて欲しいとミラは思った。


「ダモンの評価が落ちることについては溜飲が下がるのだが、それだけあいつがいないと決められないことが多いということだ」


「あんな男が中枢を担っているとは、ラディアートには人材がいないのでは?」


ミラにはもう、前世の父への遠慮などない。


「確かにそうだな。あの男の顔色を窺って何も決められないということは、少なくとも外交と軍事はあの男が権力を掌握しているということだ」


「軍事に関してはさほどの能力も発揮できていない様子。現状に不満を持っている人もおられるかもしれませんね」


「おお、確かに!ミラは意地の悪い所に気が付くものだな」


……あなたがダモンの悪口ばかり言うからそういう思考になったんでしょうに、という言葉をミラは飲みこんだ。

ただ、二人とも賢くはあるが経験が足りない分、考えが及ばないことも多い。

それを二人で言葉を交わすことで、及ばなかったところに手が届くようになるのだ。


簡単に言うと、二人は刺激を与え合って成長していた。


***


「こちらも暇ではないのだ!これ以上引き延ばされては国政に支障が出る!ダモン・タッカー筆頭公爵が戻られたらこちらにお越し願いたい」


ロベリア王国の代表であり筆頭公爵のルシアン・ベルモントは、そう言って帰国を匂わせる。

もちろんそこには、今後はそっちがロベリア王国に来いという意志が込められていた。

ラディアート王国の筆頭公爵がロベリア王国を訪れる、これは、力関係の逆転を意味している。


***


もちろんダモン・タッカー公爵もそれをわかっているから、大急ぎで首都に向かっていた。

ロジャー・ウェストン公爵の助力によってようやく反乱軍を鎮圧した後、夜を徹して軍を進めた。


もちろん、みすぼらしい姿で戻ったのではロベリアに侮られる。

余裕をもって戻ってきたように見せるため、首都に戻る前にダモンは速度を緩めた。


自分の身だしなみを整えるだけでなく、部下も皆風呂に入れたり衣服を洗濯したりして威容を整えた。


***


「ダモン・タッカー公爵がお戻りになられました!」


伝令からの言葉を聞いて、ロベリア王国筆頭公爵ルシアン・ベルモント以下の者が出迎えた時、威風堂々たる軍隊が現れた。


反乱軍の鎮圧に手を焼き、外交使節を待たせたダモン・タッカー。

外交使節がダモンのせいで足止めを食らうことで、どれだけロベリア王国に迷惑をかけたことか。


外交使節を待たせている以上、、どれだけみすぼらしい姿を見せても出来るだけ早く戻ってくるべきだった。

だが、ダモンはその真反対のことをやってのけた。

外交使節を待たせてまでも、虚栄心をひけらかしたのだ。


身だしなみの整ったダモン・タッカー公爵の軍勢を見たロベリア王国の面々は、怒髪天を衝く思いだった。

刻限に遅れておきながら、一切急ぐ様子が見えなかったのだから当然だろう。


しかも、ダモン・タッカーは自分の帰還を英雄のそれと見紛うように花火や爆竹で迎えさせた。

それもロベリア王国使節団の不興を買ったが、ダモンは得意げだった。

その時点で、外交は失敗に終わったと言っていいだろう。

ロベリア王国の面々は、この筆頭公爵を許せないと思った。


その矢先、爆竹が思ったよりもダモンの近くで鳴ったためにダモンが落馬してしまった。

つい先日まで素養もないのに指揮官として戦っていて、近くに矢が落ちただけで慄いていたような人物なのだ。

想定外の大きな音にダモンは醜態を晒した。


ロベリア王国の面々は、貴族らしくそれをあざ笑ったりはしなかった。

だが、外交の場に出てきたダモンに対して、「落馬した時の傷は大丈夫ですか?」と口々に言う。

また、ダモンがいないことで決められずにいたことに口を挟むたびに「落馬するような方にはわからないでしょうが……」という接頭語がつけられるため、ダモンはロベリア王国に反論できなくなっていった。


さらには、レオニス王子の名前で遅延に対する抗議文も送られた。


その結果、今回の外交においてロベリア王国の主張がほぼ通ってしまった。

今まで敗戦国と戦勝国の間にあった不均衡はほぼ是正され、さらに外交使節は2年に一度、交互に派遣することになった。


ラディアート王国にとって、この外交は戦後十一年間守ってきた優位を大きく失う結果となった。

そしてダモン・タッカー公爵にとっては、先の大戦で積み上げた勲功を帳消しにするほどの失態となった。


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